メタバースクリエイターズ、1.1億円をシード調達——アバター経済本格化見据え、協業やレベニューシェアに注力

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Image credit: Metaverse Creators

メタバースクリエイター専門のプロダクション事業を展開するメタバースクリエイターズは26日、シードラウンドで約1億1,111万円を調達したと発表した。このラウンドは NES ベンチャーキャピタルがリードし、アミューズ(東証:4301、アミューズと子会社 Kulture が運営する「KultureFUND」を通じて)、SG インキュベート(西部ガスグループのCVC)、UT 創業者の会、原田明典氏(Coalis ジェネラルパートナー)、奥田浩美氏(ウィズグループ 代表取締役)、坂本達夫氏が参加した。

金額には日本政策金融公庫などからのデットが含まれる。これはメタバースクリエイターズにとって、2023年6月に実施したプレシードラウンドに続くものだ。同社は今後、メタバースとエンターテインメントやリアル拠点との掛け合わせにより、日本から世界へ向けたコンテンツ創出を加速させる方針だ。今回の資金調達は、企業との協業やレベニューシェア型のコンテンツ開発にさらに注力し、メタバースの活用事例を創出していくことに重点を置いている。また、CXO 人材の採用による組織強化を行う予定だ。

急成長するメタバース市場

世界のメタバース人口は2023年時点で4億人と推定され、すでにアメリカの人口を超えている。2030年には7億人に達すると予測されており、市場の拡大が期待されている。メタバースクリエイターズ代表取締役の若宮和男氏は、メタバース市場における重要なキーワードとして「UGC(ユーザ生成コンテンツ)」と「アバター経済」を挙げる。

ユーザが自らコンテンツを作り、日々新しい遊び方を発明し続けている VRChat、Roblox、ZEPETO などのプラットフォームが急成長を遂げています。また、アバターはメタバース時代のアイデンティティで、アバターによるコミュニケーションは物理身体でのコミュニケーション以上に当たり前のものとなり、Z 世代や α 世代に急速に浸透しています。今後アバターソーシャルを前提にしたアバター経済がメタバース市場の成長を牽引すると考えています。(若宮氏)

若宮和男氏(アバター)

メタバースクリエイターズは2023年4月に設立された、日本初のメタバースクリエイター専門プロダクションだ。VRChat やRoblox、ZEPETO など、メタバースの第一線で活躍するトップクリエイターを厳選して迎え入れ、グローバルにヒットコンテンツを生み出している。同社の強みについて若宮氏は「所属クリエイター自身がメタバースの住民であることから、ユーザニーズを的確に捉えたコンテンツが作れること、またクリエイターを通じてメタバースユーザのコミュニティにアクセスできること」を挙げる。

メタバースは2024年度に入って、VRChat や Roblox、ZEPETO などの各 UGC メタバースにおいて、リリース後1ヶ月でグローバルに数万〜数十万の訪問数を記録する人気コンテンツを相次いで発表している。特に、アメリカ Avatown とのコラボレーションによる「The Avatar Studio」や2024年7月発表の「メタプリ」、2024年8月に提供開始した「AvatarNPC システム」など、アバター起点のコンテンツが非常に大きな反響を得ているという。

メタバース市場の可能性と日本の強み

若宮氏は、メタバースが日本の「オタクカルチャー」と高い親和性を持ち、グローバル市場を牽引する可能性があると確信している。そのもと、同社の経営戦略で特徴的なのは、タレントマネジメントを行う VTuber 事務所とは異なり、コンテンツ制作者に焦点を当てている点だ。制作者と専属契約を結び、IP のライツマネジメントを行うことで、将来的な IP 展開の可能性を広げている。

我々がお付き合いするクリエイターは、ある意味ではタレント側ですが、作り手側なんです。漫画で言えば漫画家さん、音楽で言えば歌って踊るアイドルではなく、曲を作る人たちのような、そんな原作者を集めています。(若宮氏)

同時に新たな挑戦も行っている。例えば、有名 VR クリエイターとのコラボレーションでは、未完成のキャラクターを公開し、ユーザ参加型でオーガニックな成長を促すアプローチを取った。この試みは予想外の反響を呼び、新たな IP 創出の可能性を示唆している。

メタバースには2000年頃のインターネットのカオス感があり、バズワード化から幻滅期も経て、いよいよ本質的な成長期に入りました。(若宮氏)

この見方は、多くの新技術が辿るガートナーのハイプサイクルに似ている。若宮氏の構想は、メタバース市場における日本の潜在的な優位性を活かし、グローバル市場でのリーダーシップを確立することを目指すものだ。この野心的な取り組みが、今後のアバター経済の発展にどのような影響を与えるか、注目される。

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