博報堂アイ・スタジオは18日、省電力広域通信技術 LPWA(LowPowerWideArea)を使った、登山者向けの位置情報取得・共有デバイス「TREK TRACK」のレンタル受付を開始した。TREK TRACK を使うことで、ゲートウェイ LPWA 基地局が配置された山であれば、ケータイの電波が届かない山の中であっても、登山者はリアルタイムで位置情報を取得することができ、万一、遭難や道迷いが発生した場合にも、デバイスから HELP 信号を送信することで位置情報を知らせ、早期の救助に役立てることができる。
TREK TRACK は、今年初めにソラコムが SORACOM Air for LoRaWAN を使ったアプリケーションとして紹介していた事例の一つだ。山の中に設置されたゲートウェイ LPWA 基地局経由で、登山者が持つデバイスから1分間に一度、デバイスID、緯度経度、送信時間のデータをクラウド上のサーバーに送信。クラウド側に用意された Web インタフェース上では、家族や山岳管理者が登山者の移動情報を3Dインターフェースでオンタイムで表示することができる。
2年前に東京で営業を開始した Reaktor Japan では、プロジェクト着手から MVP(必要最低限の機能を備えたプロダクト)を出すまでを90日間で完遂する「Innovation in 90 Days」という手法を確立しており、Innovation Generator には、このような手法が積極的に取り入れられると考えられる。博報堂の野田氏によれば、クライアント名は明かせないとのことだったが、すでにある大企業がこのプログラムのもと、ワークショップでのアイディエーション、ユーザインタビュー、モバイルアプリのペーパープロトタイピングなどを始めており、確かな手応えを感じているとのことだった。
同じく記者会見に登壇した「恋する芸術と科学」のラボリーダーを務める市耒健太郎氏は、同ラボのこれまでに手がけているプロジェクトの事例として、発酵醸造文化と地方創成を組み合わせた「食のシリコンバレー」プロジェクトや、河川流域文化圏プロジェクト「Tokyo River Story」を紹介。同ラボでは、社会にインパクトを与えられる事業へのサポートを「社会彫刻(social sculpture)」と呼んでおり、今回の産業革新機構との提携におけるスタートアップへの役務提供についても、この「社会彫刻」のコンセプトに則って行われると話した。
イギリスのブリストルと東京に拠点を置き、AR(拡張現実)エンジンの開発・販売を行うスタートアップ Kudan は18日、博報堂および博報堂プロダクツと業務提携すると発表した。これを受けて、博報堂および博報堂プロダクツ(以下、博報堂と略す)は、VR(仮想現実)と AR に特化した専門ファクトリ「hakuhodo-VRAR」を設立、両社のクライアントに対して、VR/AR を活用した広告を提案していく。…
イギリスのブリストルと東京に拠点を置き、AR(拡張現実)エンジンの開発・販売を行うスタートアップ Kudan は18日、博報堂および博報堂プロダクツと業務提携すると発表した。これを受けて、博報堂および博報堂プロダクツ(以下、博報堂と略す)は、VR(仮想現実)と AR に特化した専門ファクトリ「hakuhodo-VRAR」を設立、両社のクライアントに対して、VR/AR を活用した広告を提案していく。
Kudan は2011年の設立。「SLAM(simultaneous localization and mapping)」という、独自の位置測距技術を開発している。一般的な AR では、AR アプリがカメラから取り込んだ映像の中で位置関係を認識するために、マーカーが使われることが多い。マーカーを使わない場合であっても、被写体との距離や位置関係を測るためには、人間の眼の構造や 3D カメラがそうであるように複数の視点が必要になる。しかし、Kudan の開発した SLAM のエンジンは、映像内の複数の特定点をマッピングすることにより、単眼カメラで空間の位置関係を把握するため、カメラが一方向に一つした備わっていないスマートフォンやタブレットでも、さまざまな AR アプリケーションの実装が可能になる。
今回の博報堂との業務提携においても一切の資本関係は発生せず、Kudan が技術を提供し、それを使った広告における応用例の企画や営業を博報堂が担う、というスキームのようだ。Kudan では、同社の AR 技術や SLAM エンジンを活用してもらえる主要な業界としてゲーム・教育産業などを挙げているが、広告分野で博報堂と組むことにより、日本の内外でのパブリック・アウェアネスを一気に高めたいと考えている。
とはいえ、いったい、Kudan の SLAM エンジンを使って何ができるのか、ということなのだが、百聞は一見にしかずということで、東京のオフィスで飯塚氏らに、SLAM エンジンを採用した、いくつかのアプリをデモしてもらったので、その模様のビデオを以下に貼っておく。
今年8月に東京の上智大学で開催された AdTech International では、創業者で CEO の大野智弘氏がスタートアップのグローバル化をテーマにしたパネルディスカッションに登壇。スタートアップをする上で必ずしも日本が最適の場所ということはなく、Kudan の場合は、研究開発を推進する場所としてイギリスのブリストルを選んだ経緯を語っていた。
同社は、バックオフィスと営業機能を担う拠点として東京にオフィスを持っているが、ターゲットとする市場は、日本のみならず、北米・欧州・東南アジアなど多岐にわたる。マーカー不要、単眼カメラで使える AR という強みを武器に、特に需要が大きく競合技術との差別化がしやすい自動車業界での利用に期待を持っているようだ。
Kudan 創業者で CEO の大野智弘氏(2016年8月、上智大学で開催された AdTech International で撮影)