福岡がスタートアップ都市となるために必要なことは。カフェに求められる場のあり方とスタートアップエコシステムの今後

by Eguchi Shintaro Eguchi Shintaro on 2014.10.14

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10月11日にオープンした福岡の「スタートアップカフェ」。高島市長によるオープニングトークのあとに「スタートアップのエコシステムとカフェ」と題し、福岡市の「スタートアップ都市宣言」に関わったメンバーなどが、都市宣言からこれまでを振り返りつつ、スタートアップカフェの今後のあり方について考えるオープニングトークセッションが行われた。

高島市長によるスタートアップカフェオープニングの挨拶こちら。
福岡市、創業特区としての次の一手へ。スタートアップを目指す人たちの創発を生み出す「スタートアップカフェ」をオープン – THE BRIDGE

トークゲストとして、高島福岡市長、ヌーラボ代表取締役橋本正徳氏、アマゾンデータサービスジャパン代表取締役長崎忠雄氏、ビデオメッセージでMOVIDA JAPAN代表取締役CEO孫泰蔵氏、モデレーターにnomad代表取締役小笠原治氏が登壇した。

福岡のスタートアップ都市としての可能性と足りないもの

小笠原:福岡をスタートアップの都市にしようと考えたのは、色々と経緯などあると思いますが、なにがきっかけだったのですか?

ビデオメッセージの孫泰蔵氏。「二年前にスタートアップ都市として日本の先駆けとなるものの構想したものが現実のものになっている。福岡がイノベーションの、日本の中心となるように、志をもった人たちがコミュニティをつくってほしい」と語った。
ビデオメッセージの孫泰蔵氏。「二年前にスタートアップ都市として日本の先駆けとなるものの構想したものが現実のものになっている。福岡がイノベーションの、日本の中心となるように、志をもった人たちがコミュニティをつくってほしい」と語った。

高島:都市づくりのモデルを共有するIRBC(国際地域ベンチマーク協議会)に福岡市は参加してて、会議のためにシアトルに出張に行ったことは一つ大きな出来事でした。シアトルは、人口70万程度で150万人の福岡市の半分。なのに、AmazonやStarbucks、Microsoftなど、さまざまな新しい価値がシアトルから生まれていてグローバルに展開してて、なぜだろうと思った。

俯瞰してみると、シアトルは港町でコンパクトシティで海も山も近い。かつ大学も多く、福岡と類似している点がかなりありました。福岡は、いわゆるリバブルシティ、住みやすいという地域としての自覚はあって、東京から移住する人もそこそこにいる。そこに、もともと日本でも開業率が高い福岡として経済活性をミックスさせ、それを強めていくだけの土壌があるのではと考えたのは大きいです。

小笠原:若い人の起業率高いのはなぜなのでしょう?

高島:やはり、ビジネスコスト安いことは大きいです。オフィス代が抑えられ、福岡市の中心地としてあらゆるモノがそろっている。さらに、移動コストもコンパクトだからかからないことも大きい。

長崎:私は、出身は福岡で高校の終わりのころからアメリカのシアトルに渡米して15年くらい滞在していました。シアトルは、初めて行った時は田舎な印象だったのですが、滞在してると福岡と似てるものが多いという実感がありました。海や山、食べ物が美味しいというだけでなく、シアトルは音楽の発祥でもあります。例えば、伝説のギタリストジミー・ヘンドリックスやニルヴァーナなどを輩出しています。また、優秀な教育環境が整っていて、かつアメリカならではな人材の流動性が高かったこともあります。Amazonができて10年弱ですが、たしかにグローバルに展開するだけの企業となりました。私が担当してるAWSも、もともとAmazonの中の社内スタートアップで8年前にスタートしたものですが、いまでは世界のスタートアップを支援するまでとなりました。さまざまな人が人を呼び、アメリカ中の優秀な人が集い生まれたという意味でも、福岡と共通点が多いと実感します。

小笠原:福岡が今後スタートアップ都市になっていくにあたり、逆に足りないものってなんでしょうか?

橋本:まだまだ、福岡は「おかしな人」が足りない気がします。何かに突出するような一芸に秀でている人。そうした人からブレイクスルーが起きるのではないでしょうか。テックカンパニーの人たちをみているとみんな意外とおとなしく、なにかに秀でている人は東京に行っている気がします。福岡を拠点として活動する人がもっと増える必要があります。

高島:ダボス会議のグローバルシェーパーズの福岡のメンバーをみていると、狩猟をしている人やお酒を作っている人などがいて、日本のコミュニティの中でも異色を発揮している人はいたりします。全国でみたときに、福岡は一芸や何かに突出している人はいるし、存在感はあるはず。しかし、そうした人たちがネットワーキングできていないのかもしれません。ずば抜けた人がもっとコラボできる場を作る必要を感じます。

福岡の強みを自覚し、福岡を拠点に活動するプレイヤーを増やすこと

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左から小笠原氏、高島福岡市長、長崎氏、橋本氏。

小笠原:たしかに、場所は大事です。このスタートアップカフェができ、来年くらいには起業する人も出てくるかもしれません。どんな起業が生まれることを期待しますか?

高島:福岡の今の強みやゲームやIT。メディアミックスさせてさまざまな商品やサービスを売り出せるポテンシャルがある。今ない何かを作ることも必要だが、まずは既存のものの組み合わせによって生まれるものがもっとたくさん出てくることを期待しています。

橋本:2012年からやっている明星和楽は、まさにそうしたクリエイティブな人たちが集まって、切磋琢磨し合いながら作品を発表したりコラボしたりしながら、遊びながらみんなを感動させられる楽しい場所を作りたいと思い始めました。きっかけは、SXSWのような音楽祭の中で最先端のテクノロジーやサービスの人たちが集まって盛り上がりをみせるように、ただのプレゼン大会ではなく観客とゲストが一体となって盛りあがるフェスティバルのようなものをやりたいと思って。そういうものは、まだまだ福岡には足りないと思います。

高島:昨日(10月10日)には、「The Creators」というイベントを企画しました。それは、音楽やパフォーマンスのコラボを行うフェスのようなもので、しかもそれを福岡市役所前の広場で開催しました。というのも、福岡には技術やデザイン力を持っている人がいるということを、福岡にいる人自体がまだまだ知らないという問題意識がありました。だからこそ、一般の人でも立ち寄れる場所で開催しました。福岡に技術があるということを知り、福岡の強みを知ることによってコラボできる土壌が生まれることの可能性を感じます。

橋本:先日は、明星和楽は台湾で開催したのですが、福岡と台湾が交わりかなりの盛り上がりをみせました。アイドルやアーティストなどのコラボや新しい人たちの盛り上がりを実感しました。

高島:もともと福岡は芸能人を多く輩出している地域。秀でているものを持っている人は多い。しかし、福岡にいてもそもそもマーケットがなかったから東京に行っていただけ。しかし、福岡にいて、かつ東京でも通用する人が次第にでてきた。

長崎:切磋琢磨し合える関係やライバルは重要ですね。ライバルがいると同時に、自信もついてくる。世界の人たちは色んな多種多様な人たちと出会うことで、ダイバーシティを体感すると同時に、みんな自分に対して自信をもっている。自分がもっている価値を認識することはすごく大切です。スタートアップカフェのような色んな人が集える場があって、それを行政がバックアップしながら活動できることで、飛躍するチャンスも多くでてきます。あわせて、やはりコミュニティというものの重要性を感じますね。

多種多様な人たちが集い、コラボし、ネットワークが生まれる場所に

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小笠原:福岡でスタートアップに関わっている人って、意外と変な人多いですよね。東京だと行政の人は遠い印象ですが、福岡は距離が近い。また、短期間で何かコトを起こすには、時に変なことや勢いって大事ですよね。

高島:一番は、起業したいと考えている人の熱意ややる気が重要です。「特区とったけど、それで起業が増えるの?」という意見や、「で、なにをしてくれるの?」という意見が時折きますが、やはり、何をしてくれるのかではなく、自分がどうしたいのか、どううまく利用するかということを考えることが必要です。制度がなくても、やる人はどこでもやります。必要なのは悔しいという思いや、こんなことをしたいと思う個人のやる気です。

小笠原:何かを始めると同時に、継続させていくことで進化していくこともあります。ふとした出会いが大きなつながりになったり、次のアイデアを発展させたりします。そうした出会いの場、マッチングの場としての重要性がこの場所にも求められてきますね。

高島:なので、スタートアップカフェはできるだけ敷居を下げているんです。「特区とったのに、こんなカフェなの?」というくらいの気軽さでいいんです。誰でも思いをもった人の出会いが生まれる、そんなものであってほしいです。同時に、サポートの形も既存のものから変化しなくてはいけません。県の創業支援や助成金などの制度ありますが、バラバラで申請に手間がかかります。それをコーディネートすることが、行政にも求められてきます。ちょっとした種がどんな大きなものになるかわかりません。そうした種を逃さないためのバックアップを行政も積極的にサポートしていかなくては。

小笠原:AWSも、スタートアップ向けにいろいろなサポートをやっていますが、地域ごとに今後はアプローチなど考えていますか?

長崎:AWSが日本にきて3年たち、これからは地方の起業家のサポートも重点的に行なっていけたら。AWSは、これまでにDropboxやPinterestなど、欧米のさまざまなスタートアップを支援してきています。福岡からも、そんなスタートアップが生まれてほしいですね。

橋本:福岡は、アジアの拠点や交流の場としても重要な場所です。ぜひ、今後は東京で開催されるようなイベントがもっと福岡で開催され、色んな人が集うきっかけを作れたらと思っています。「イベントをやるなら福岡で」となってほしいですね。

小笠原:最後に、それぞれ一言ずつお願いいたします。

橋本:大きなイベントがまだまだ東京で開催されている状況を変え、福岡で毎日さまざまなイベントが開催され、常に人が集まる場所になってもらいたいですね。同時に、必要なのは福岡からの情報発信です。東京からメディアの人が来るのではなく、福岡を拠点に、さまざまな福岡の出来事やアジアの出来事を発信するメディア含めたパートナーな人も起業と同じくらい増えてもらいたいと思います。

長崎:AWSは、テクノロジーの相談としてのコンシェルジュを目指していきたいです。そして、福岡発世界なサービスの誕生を支援していきたい。ここをきっかけに、2年後3年後には世界で活躍する企業がたくさんでてくるよう応援していきたいです。

高島:起業もそうですが、ただ会社を登記するだけではなく、新しい価値を創りだしてもらいたい。ここで出会ったことがきっかけになって色んなコラボが生まれてくることを期待しています。この場所が一つのコミュニティとなり、福岡にもっと強いネットワーキングが生まれ、スタートアップエコシステムができるよう、行政もバックアップしていきたいと思います。

まちをフィールドに、ITのみならず多様な分野を横断するコミュニティへ

スタートアップ都市としての一つの一つの形を見せつつある福岡。場の創発と同時に、ここからさまざまなものが生まれてくるための日々の取り組みが必要だ。そうしたときに、やはり当たり前だがこのスタートアップカフェだけですべてをまかなえるわけでもない。例えば、ここを一つの拠点に、福岡の街全体でスタートアップのイベントがあったり、近くの空きスペースなどを活用したりするなど、スタートアップカフェという点ではなく福岡市全体としての面としての盛り上がりをつくってもらいたい。

また、福岡はもともとファッションや美容といった分野にも強い。ウェブサービスのみならず、そうした既存分野とのコラボや、ITやデジタルを全体にこれまでの仕組みを変化させるような取り組みが生まれてくることを期待したい。そのためにも、建築、ファション、アート、デザイン、クリエイティブ、出版、メディアなどさまざまな分野の人たちを巻き込むためのコーディネーターやファシリテーターという存在も必要かもしれない。起業家のみならず、分野を横断しコラボを創発する仕掛け人といった存在も、今後増えることを期待したい。

今後も、福岡の取り組みや全国各地のスタートアップの取り組みを追いかけていきたい。

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