〈中国の大物投資家に聞く〉Uber、Unity、クラウドソーシング大手「猪八戒」などに投資するLi Feng(李豊)氏、金脈を掘り当てるコツを語る

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本稿は「Meet China’s Midas〈中国の大物投資家に聞く〉」の連載第2弾である。本連載では、成長著しい中国のテック業界への投資で成功を収めているさまざまな投資家にインタビューを行う予定だ。これから1ヶ月の間、北京から上海にわたる投資家に対して、中国で大富豪になるには何が必要かをインタビューしていくのでチェックしていただきたい。本シリーズの新作情報を見逃さないためには@technodechina をフォローしてほしい。

以前は IDG-accel で最も若いパートナーだった Li Feng(李豊)氏が昨年8月に IDG を去り、自らの会社を立ち上げた時は大いに話題になった。当時、うんざりするような「投資の冬」は出口が見えてすらいないと悲観されていた。彼は現在、FreeS Fund(峰瑞資本)の設立パートナーとして20億人民元(2億7,900万米ドル)を管理し、e コマース、教育、フィンテック、ライフスタイルビジネスなどのアーリーステージスタートアップへの投資を重点的に行っている。

Li Feng 氏は、今起こっている変化を「冬」と呼ぶのは不適切で、むしろ転換期と呼ぶべきだと考えている。それは見る立場によってさまざまな理由から不快だったりいまいましかったりすることもあるが、キャッシュが実際に底をついているわけではないからだ。1年経過して、Li Feng 氏はいくつかのビッグネームを手に入れて輝かしいポートフォリオに加えている。例えば以下の企業だ。

  • Uber Global – 説明は不要だろう。
  • Three squirrels(三只松鼠) – ナッツや紅茶を扱う e コマースから成長した最も著名なブランドの一つ。
  • Unity – 550万以上の登録ユーザを擁するサードパーティゲーム開発ソフトウェア。世界中で最も人気のあるゲームの3分の1の開発に使われたとしている。
  • Zhubajie(猪八戒) – ウェブデザイナー、法律相談から個人向けの仕立て屋まで、広範囲のフリーランスを扱うプラットフォーム。同社は現在10億米ドル以上の企業価値を持つ。
  • Creditease(宜信)- ウェルス・マネジメント(プライベートバンキングがさらに発展した個人向けサービス)の会社であり、コンスーマ向けレンタルのプラットフォームでもある。同社の子会社 Yirendai は昨年12月ニューヨーク証券取引所に上場した。

幸運なことに、いくつかの質問について彼の考えを聞くことができた。

Q:あなたは1年前に、FreeS Fund(峰瑞資本)を設立すべく IDG を去りました。投資環境における、この1年で最も重要な変化は何でしたか?

A:人々は「投資の冬」への恨み言を言い続けていますが、その時期と比べるのであれば、今はまだ十分なキャッシュが実際に存在します。皆冬だといいますが、彼らが実感しているのは転換期における少々低調な流れに過ぎません。私たちはこれまでと異なる期待値でうまくやっていけるようにならないといけません。

投資環境にはいくつか変化が起きています。一つの例は、人民元での投資への嗜好が急速に高まっています。ここから言えるのは、イグジットしようとする時に企業や VC はその後の中国市場での期待値に合わせる必要があるということです。中国市場では収益性と健全な財務状況に重きを置いており、米ドル中心の基準でキャッシュフローと成長性を価値と考えるのとは反対です。

米ドルの投資の流入があった際には、スタートアップは企業の規模増大とシェア増加のために、収益性を一時的に棚上げしてキャッシュバーン(資金を消費すること)が奨励されました。人民元ベースでは、上場の条件のため企業は透明で収益性の高いビジネスモデルを初期段階から編み出しておく必要があります。したがって、人民元での出資を受ける時は、それに妥協して成長計画を修正する必要があります。

Q:そのような背景を念頭に、起業家にできるアドバイスは何でしょうか?

A:投資家は、同じステージでも同じ会社にいたとしても皆それぞれ異なっており、個人個人の経営スタイルがあります。自分の会社について同じ未来を描いてくれる人を探すことです。選択の余地があまりない場合は、可能な時にキャッシュを獲得することだけを考えましょう。

収益性の高いビジネスモデルを初期から追求しましょう。伝統的なビジネスモデルはより早く利益を生み出し、軌道に乗るのも簡単です。ユーザベースを見つけて、そのユーザベースから利益を刈り取る方法を見つける前にシェアを失ってしまうこともありません。

Q:中国での資金調達と、そうですね、例えばシリコンバレーでのそれとの大きな差は何ですか?

A:中国とアメリカでの資金調達における一つの明らかな違いは、海外においては VC とスタートアップは編隊を組んでいることです。そして、ルールとして、トップクラスの起業家はティア1(トップクラス)の VC から出資を受けるべく動きます。レベルが劣る起業家はそれに見合った VC から出資を受ける、という感じです。これは、VC も起業家も成熟しているからです。彼らはすでに2世代以上の経験を持っていて、それを生かせます。しかし中国ではスタートアップと VC はおよそ10年のギブアンドテイクの歴史しかなく、両者の間にアメリカであるような関係性はありません。

そのような相関関係が中国で形成されるのがいつになるか正確にはわかりませんが、最低でも VC のライフサイクル1世代はかかるでしょう。何種類かの異なる VC からサポートを受けた成熟した世代の起業家が現れる頃になれば、口コミで情報は広まり、神の見えざる手のようにスタートアップは自社の成長フェーズに最も見合ったお似合いの会社を探すようになるでしょう。しかしこれは、中国のスタートアップが出資者を選ぶのに鈍感だといっているわけではありません。中国ではまだ資金が潤沢にあり、出資者を選ぶ余裕がある企業もあるということです。

大局的な見地から見れば、経済の成長は大きく減速しています。中国ではほとんどの経済成長はマクロ的なもので、いくつもの分野にわたります。それに対してアメリカでは、成長といえば既存の2つの業界の影響力の再配分になっています。アメリカでは VC はおよそ40~50年にわたり存在しており、巣立ったばかりの中国のそれに比べると、数十年の経験により明確に定義されたルールと役割が確立されています。企業価値の変動は経済のサイクルと革命的テクノロジーによって起こります。モバイルインターネット、IoT、コンピューティングパワーのブレイクスルーなどです。これらはシリコンバレーでも起こりますが、スケールは小さいです。

Q:ビジネスモデルのイノベーションという点では、中国企業は多くの面でシリコンバレーの同業者より進んでいます。長期的に見て、中国は技術的なイノベーションにおいてアドバンテージを持ち続けられるでしょうか?

A:一言でいえばイエスです。中国は何年にもわたり強力な製造業を育成してきました。これが次世代の技術イノベーションにおいて中国の武器になります。結局のところ、新技術が導入されるのは製造現場だからです。

コーナーでの追い越しのようなものです。自動車エンジン製造のように、過去には中国の強力な軸になりえなかったことがあります。しかし電気自動車の時代になれば、従来の自動車製造業の時は二流だった中国のステータスは跳ね上がるかもしれません。中国はリーダーではありませんが、リチウムイオン電池や制御システムのような、電気自動車でコアとなる技術において技術的なギャップははるかに小さくなっており、だからこそ私たちはリチウムイオン電池の企業に投資しているのです。中国は今や世界最大の自動車の市場であり、また世界最大の自動車生産国です。これを組み合わせれば、将来は多くのコア技術が中国発となるでしょう。結局のところ、中国こそ製造業の国なのです。

Q:海外のスタートアップは中国で勝負できるでしょうか?

A:ライフスタイルや文化に関係することを直接やりさえしなければ、勝負できるでしょう。彼らが文化に関係するところから遠く離れて、テクノロジーに近いところを手がければ勝負できます。同じことは、中国企業が海外でビジネスを行うことにも言えます。海外のマーケットで消費者に根ざしたアイデアを生み出すのは大変困難です。なぜなら、現地の消費者のニーズをつかむには敏感な感覚が必要であり、現地のパートナーの助けも限られているからです。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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