初のユニコーンを手にした日本、次に必要なのはユニコープス?【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.6.23

mark-bivens_portrait本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The original English article is available here on The Bridge English edition.


Image credit: Bakhtiar Zein / 123RF

日本は今週、メルカリの IPO で同国初となる成功したユニコーンが羽ばたくのを目撃した。2013年にローンチしたメルカリは、日本を先導するオンラインフリーマーケットプラットフォームとなり、素晴らしい UX により人々がスマホアプリで中古アイテムを売買するのを可能にした。ローンチからわずか5年の間に、メルカリの時価総額は60億米ドルに達し、これはテック企業としては、2016年7月に公開した LINE 以来の大型 IPO となる。メルカリを支援した投資家、なかでも、シードラウンドの時点で同社のビジョンに出資した East Ventures に頭が下がる思いだ。そして、山田進太郎氏の不断のリーダーシップと、メルカリのチームの結集した努力に対して、深く敬意を評したい。

私の願いは、メルカリが日本におけるテックイノベーションの、流れを変えるモーメントの代表的な存在となることだ。私は今週、ここ東京でその予兆をいくつか目にした。メルカリをゲームチェンジャーだと見る人がいる一方で、メルカリのことを懐疑的に見ていて、同社は失敗を非難するする文化の例外的存在だと主張する人もいる。

しかし、その意見の両陣営にいる実に多くの人が私に対し、日本にユニコーンが少ないことは、世界第3位の経済大国であり、西側諸国から脅威の目で見られた元技術大国としては、恥ずかしい状況だと語った。

確かに、アメリカ、ヨーロッパ、中国はテックユニコーンを多く輩出している。今日でさえ、ヨーロッパはそのユニコーンの分布で、実力ではかなわないと言える。最近の ITmedia  へのインタビューで説明したように、ヨーロッパには約30社のテクノロジーユニコーンがいて、これはアメリカのそれの25%以上の数字であり、アメリカに比べ、ヨーロッパの VC 調達が10分の1で、実際の調達ラウンドも金額が低いことを考えると、これは実に驚かされる事実だ。ヨーロッパの技術セクターが盛り上がろうとする時期に生きる VC として、この魔法のような段階を目撃し投資できることは幸運だと感じている。

そう、それは魔法なのだ。ヨーロッパでのユニコーンの誕生は、国際的な投資家たちに旧大陸の可能性を気づかせた。アメリカや中国からの資本は、ヨーロッパへの道を切り開いた。今や日本にも、その可能性を発見した投資家が何人か存在する。おそらく、メルカリも同様の群衆を解き放つことができるだろう。

確かにユニコーンという言葉は過度に使われ、その定義は正確でなくなりつつある。しかし、インベストメントバンカー、リサーチアナリスト、投資家たちはその言葉を愛してやまない(言うまでもなく、テックジャーナリストたちもそうだ)。世界中の政府関係者は、ユニコーンマントラ(お経のように、ユニコーン、ユニコーンと言ってやまないこと)をほぼ普遍的に採用している。自国のテックエコシステムこそ最良だと自信を持って語るときに、小規模な競争の中で点数をつけるための基準として用いる国もある。ユニコーンの普及は、資本市場における非効率性の兆候であると主張する人もいる。

私は日本がテックユニコーンを短期間で生産することを期待しているが、実際のリトマス試験は、もっと恐るべきマイルストーンの形で来ると述べたい。それは、日本初のユニコープス(unicorpse:unicorn(ユニコーン)と corpse(死体)を合わせた造語で、死に体のユニコーンを指す)だ。

誤解しないでほしいのだが、私はすべてのユニコーンベンチャーに拍手を送っていて、彼らに加害しようとは考えていない。また、逃げ切るスピードに到達すべく、現在はスポットライトから逃れようとしている起業家など、今はまだ表だって評価されていないヒーローたちにも賛美を送りたい。皆さんの中にはユニコーンクラブに入ることを望む人もいるだろうが、一方で10億ドルの壁を超えないまでも永続的価値を持つ素晴らしい会社を築いている人も多くいる。私はシービスケット(1947年に死んだアメリカの競走馬)の終焉に涙したように、ユニコーンの死体の山を見たいとは思っていない。

しかしながら、(ユニコーンの名付け親である)Aileen Lee 氏の言葉は任意の評価基準を示しているが(10億ドルには他の意味がある)、10億ドルを超えることについては、成層圏に達したとさえ言えるような派手さや感慨深い印象さえある。今日の考え方では、10億ドルを超えることは、ビッグリーグを超える何かを築いたとか、もはや神話に近い生き物になったことを意味する。

同様に、10億ドルの失敗は大きなものになる。足元のぐらついたユニコーンの話題は依然としてタブーであり、「死に体のユニコーンのリスト」は公表されていない(最近、ローカルインサイダーたちの驚きで、日本の VC 調達を魅了している人物がいるようだ)。しかし、間違いなく、これまでにも多くの血を見てきただろうし、これからもより多くの血を見ることになるだろう。おそらく、世界中には多くのユニコープスがいる。これは、ベンチャー構築の本質であるから仕方がない。そして、いいことでもある。ゲームチェンジングなディスラプションをもたらすような、世界を巻き込むようなサクセスストーリーは、大きな失敗が無い環境には存在し得ないからだ。

いつになるかはともかく、日本に初めてユニコープスが生まれた時には、それが新しい曲がり角になるだろう。そして、そのときのコミュニティの反応が、日本のイノベーションエコシステムの真の可能性を明らかにすることになるだろう。

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