しかし、これがいわゆる「トップスピード哲学」なのだろうか。これまでのLINEの成功は、タイミングと幸運に大きく依存しているように思う。大規模な広告展開も作用しているかもしれない。しかし、本サミットでは、海外・国内の多くの成功起業家が、なるべくスピーディーに仕事を進める考え方を、口々に話した。500 Startups のパートナー George Kellerman 氏は、技術進歩のスピードが加速しているからだ、と述べた。
もっとスピードアップすべきだ、さもなければ、負けるだけだ。
しかし、日本の企業文化はスピードが遅いことで悪評高く、カンファレンスで述べられたメッセージが、日本のビジネス界に何かしらのインパクトをもたらすかどうか、見守る必要があるだろう。Ruby Association の会長で、伝説のプログラマ まつもとゆきひろ氏は、スピードの遅い企業文化は、ビジョンを持っている人には邪魔になることがある、と指摘した。
午前中2つ目のセッションの中で、Pinterest の CEO Ben Silverman 氏は、こんな話を聴衆に提起し、何かをしようとしている起業家に出会ったら、全力で彼らをサポートすべきだと述べた。多くのスピーカーが言っていたのは、シリコンバレーの素晴らしい事の一つは、この種のサポートが提供されることだ。
おそらく、今回のカンファレンスで最も心を動かされたのは、500 Startups のパートナー George Kellerman 氏が、聴衆の中の起業家に起立を求め、周りからサポートの拍手を浴びせたことだろう。
この人たちこそ、日本の未来だ。我々は彼らを祝福しなくてはならない。
日本の起業家は、社会から飛び出た杭のような存在だ。この拍手は、日本人の聴衆にとって、きっとムダにはならなかっただろう。ビジネスの世界で、パッションやリスクが受け入れられない国では、起業家はただの〝パッションを持った、リスクテイカー〟になってしまう。カンファレンスの後、私は George と話す機会があり、彼がステージを降りたとき、イベントスタッフの一人が感動で涙していたと語った。クールな時間だった。
500 Startups のパートナー George Kellerman 氏は、起業家に起立させ、彼らへの祝福の拍手を求めた。
このアプリは Sony Digital Network Applications (SDNA) のプロダクトで、プレゼンターを務めたクニノリ・マサト氏は、自らのチームのことを、親会社ソニーから独立してスタートアップをしている〝イントラプレナー〟だと語った。このフォトアプリは約1年前にリリースされた(以前、短いレビューを書いている)。美しいデザインと写真を整理しラベルが貼れる機能を備え、Flipboard を雑誌風にしたような形で写真を表示する。しかし、興味深かったのは、クニノリ氏がビジネスモデルをB2Bにしようとしていることで、多くの企業向けに、各社向けの Million Moments を提供することを目指している。クラウドサービスを構築すれば、ユーザが写真に貼れるラベルを使えるようにしたいとのことだが、この点についてはあまり詳細な説明はなく、情報開示できないようだった。
5. Quick Language Learning
この台湾のスタートアップは、就学前の子供向けにエンターテイメントアプリを開発しており、ゲームを通して学習の機会を提供する。現在、Quick Language Learning (QLL) は140種類以上のアプリをリリースしていて、300種類の提供を目指している。これまでに450万件のダウンロード、5万件のアクティブユーザ(日あたり)を集め、その多くは彼らの地元である台湾のユーザである。同社は1年半前に設立され、現在、海外展開を目指している。次のターゲットの一つが日本市場だ。審査員を務めた Serkan Toto 氏が日本市場への参入計画について尋ねたところ、プレゼンターを務めた Lulu Yeh は、彼らのアプリのいくつかは、しばしばアプリストアで上位にランクされるので、それ以外のアプリとのクロスプロモーションを考えていると答えた。なかなか堅実なアイデアであり、台湾国外での躍進を楽しみにしたい。
6. Roam & Wander
前出の QLL に加え、もう一つの子供向けゲーム・エンターテイメントのスタートアップだ。昨年暮れにローンチし、ゲームやおもちゃをメインにしている。彼らのゲームは特典として紙のステッカーを提供し、彼らによれば、このステッカーが子供をゲームへとかきたてるのだそうだ。このステッカーを受け取る子供達にとっては、たいてい郵便で何かを受け取る初めての経験なので、子供達はエキサイトするのだそうだ。Roam & Wander は1日に300枚のステッカーを発送しており、ピークには約700枚に上る。プレゼンターを務めた Jason は、このサービスがバイラル(口コミ)ゲートウェイで、サービスの成長と共に郵便のコストは少し下がるだろうと説明した。