昨日、東京で開催された Echelon のサテライトイベントで、審査員の前で9社のスタートアップがピッチをした。一連のスタートアップは極めてハイクォリティーで、日本のみならず、韓国、台湾、それ以外の国々からもスタートアップが集まった。どのアイデアが勝者の座を勝ち取ったか、以下にピッチの様子を書き留めたのでチェックしてほしい。
1. Belladati
Martin Trgina によるピッチ。Belladati は、あらゆる種類のデータを見える化し、企業活動を支援するビジネス分析サービスだ。Twitter、Google、Oracle、SAP など、顧客のために100種類以上のデータを集め、「企業のデータが日の目を見られる」ようにする。PowerPoint、PDFへのエクスポート、自社アプリへの埋め込みが可能。業種別に予めテンプレートが用意されており、ユーザは一から始める必要がない。RedBull、Korea Telecom など、多くの有名企業で既に利用されている。クラウド、または、社内環境にインストールしての利用が可能だ。
2. CloudDock
岡本繁太氏がこのクラウド・エンタープライズ・ソリューションを紹介した。ビジネス向けの DropBox だということだ。ユーザのデータ(書類、写真、音楽など)をPCから切り離し、Windows マシンで CloudDock にログインすると、ファイルはいつも通りに見えるが、小さなクラウドアイコンをクリックすると、DropBox のように同期されたファイルに緑色のチェックマークがつく。アプリ上で同期されたファイルにアクセスしようとすると、その瞬間にデータがダウンロードされる。CloudDock からログアウトすると、PC上からはデータが消える。モバイルでも利用可能。
CloudStock は、VDI(仮想デスクトップ環境)の導入を検討する企業をターゲットにしており、2月のローンチから2ヶ月で9,000ライセンス以上を販売したとのことだ。
3. Conyac for Business
これまでにも何度か Conyac のことを取り上げているので、我々のサイトをよく訪れている読者なら、このサービスがどのようなものかはご存知だろう。山田尚貴氏はビジネス向けのサービスについてピッチをし、彼らのクラウドソース翻訳ソリューションが、ビジネスにも安価でスピードの速い翻訳サービスを提供できると説明した。典型的なユースケースでは、PowerPoint 10枚のスライドの翻訳を依頼した場合、翻訳に要したのは5時間で、費用は36ドルだったと説明した。山田氏によれば、他のサービスに比べ、Conyac の翻訳者はより経験豊かな翻訳者によって教育され、自ら翻訳を改善する機会が提供されている。
4. Million Moments
このアプリは Sony Digital Network Applications (SDNA) のプロダクトで、プレゼンターを務めたクニノリ・マサト氏は、自らのチームのことを、親会社ソニーから独立してスタートアップをしている〝イントラプレナー〟だと語った。このフォトアプリは約1年前にリリースされた(以前、短いレビューを書いている)。美しいデザインと写真を整理しラベルが貼れる機能を備え、Flipboard を雑誌風にしたような形で写真を表示する。しかし、興味深かったのは、クニノリ氏がビジネスモデルをB2Bにしようとしていることで、多くの企業向けに、各社向けの Million Moments を提供することを目指している。クラウドサービスを構築すれば、ユーザが写真に貼れるラベルを使えるようにしたいとのことだが、この点についてはあまり詳細な説明はなく、情報開示できないようだった。
5. Quick Language Learning
この台湾のスタートアップは、就学前の子供向けにエンターテイメントアプリを開発しており、ゲームを通して学習の機会を提供する。現在、Quick Language Learning (QLL) は140種類以上のアプリをリリースしていて、300種類の提供を目指している。これまでに450万件のダウンロード、5万件のアクティブユーザ(日あたり)を集め、その多くは彼らの地元である台湾のユーザである。同社は1年半前に設立され、現在、海外展開を目指している。次のターゲットの一つが日本市場だ。審査員を務めた Serkan Toto 氏が日本市場への参入計画について尋ねたところ、プレゼンターを務めた Lulu Yeh は、彼らのアプリのいくつかは、しばしばアプリストアで上位にランクされるので、それ以外のアプリとのクロスプロモーションを考えていると答えた。なかなか堅実なアイデアであり、台湾国外での躍進を楽しみにしたい。
6. Roam & Wander
前出の QLL に加え、もう一つの子供向けゲーム・エンターテイメントのスタートアップだ。昨年暮れにローンチし、ゲームやおもちゃをメインにしている。彼らのゲームは特典として紙のステッカーを提供し、彼らによれば、このステッカーが子供をゲームへとかきたてるのだそうだ。このステッカーを受け取る子供達にとっては、たいてい郵便で何かを受け取る初めての経験なので、子供達はエキサイトするのだそうだ。Roam & Wander は1日に300枚のステッカーを発送しており、ピークには約700枚に上る。プレゼンターを務めた Jason は、このサービスがバイラル(口コミ)ゲートウェイで、サービスの成長と共に郵便のコストは少し下がるだろうと説明した。
同社は Tutu というゲームキャラクターを、スマートフォンに顔をあしらった人形で、リアルの世界に創り出す計画だ。静電タッチセンサーのついたこのおもちゃをアプリケーションが個体認識し、子供はこの人形に飲み物を与えたりすることができる。彼らはプロダクトへの関心を集めるべく、近日中に Kickstarter にプロジェクトを立ち上げる予定だ。
7. Zimly
今回出場した中で、唯一、韓国からのスタートアップ。数年前に立ち上がったスタートアップだが、ピッチでは、デバイス横断でビデオをシェアしたり、友人と共にビデオが見れるソリューションを披露した。このサービスは現在、PCからモバイルへビデオをシェアする機能を提供しており、近日中に、あらゆるデバイス間でシェアできるようにしたいと語った。Zimly は以前のバージョンで200万人のユーザを集めており、これらのユーザを新しいバージョンに移行し、ユーザ数を増やしたいとのことだ。
8. DecoAlbum
市場にカワイイ写真アプリが少ない中、このアプリは期待を裏切らないだろう。DecoAlbum のバリューは、典型的なカワイイアプリの2つの機能ーーデコレーションとコラージューーを1つのアプリで実現している点だ。最近、コラージュ作成アプリの Papelook が、2011年中頃のリリースからダウンロード数400万件を獲得したことを取り上げた。DecoAlbum は、昨年中頃、アプリストアに公開され、ダウンロード数100万件を達成した。創業者らによれば、有料プロモーションは行っていないとのことだ。彼らのビジネスモデルは写真のプリントであり、Tolot などのプリントサービスや、写真ストレージサービスとの提携を計画している。来月にはステッカー(スタンプ)もリリースする予定だ。
9. TopAdmit(優勝者)
今回出場した、もう一つの台湾のサービスだ。TopAdmit は45人以上の英語話者のチームが提供する、編集サービスだ。ピッチでは、留学の申請書を書いた日本人学生が、記述内容の質を上げるために TopAdmit を使ったケースが紹介された。TopAdmit は、研究報告書やビジネス文書の編集にまで領域を拡大したいと考えている。スポット依頼の場合は英語1ワードにつき30セントで、月極支払の場合は500ドルがチャージされる。このピッチでは優勝者に選出された。[1]
- 編集者の立場から言わせてもらうと、TopAdmit が内容のヒドい文章を受け付けたときに、どのように処理しているのかに大変興味がある。文章の意味がはっきりしないとき、どのようなやりとりが依頼者との間で繰り返されるのだろう。 ↩
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