【ゲスト寄稿】スタートアップよ、自前主義にこだわるな——アウトソーシングとオフィスの海外移転がもたらす可能性と課題

by ゲストライター ゲストライター on 2013.4.29

以下は、シンガポールのスタートアップ DropMySite の創業者兼CEO John Fearon による寄稿だ。DropMySite は、メインのウェブサイト環境からデータがクラウドに自動バックアップされるサービスで、通常サイトがホスティングされているGoogle Apps がダウンしても、クラウド上でサイトが稼働し続けるしくみ(関連記事)。

なお、DropMySite は、4月23日、アメリカの有名投資家 Dave McClure 氏が率いる 500 Startups から投資を受けたことを発表した。


すべてのスタートアップにとって、最初のハードルはリソース不足の克服だ。資金の不足、人力の不足、そして、時間の不足。この問題を克服する最良の方法の一つは、アウトソーシングやオフィスの海外移転だ。しかし、これは完全かつ永続的な解決方法にはならない。

アウトソーシングやオフィスの海外移転は、しばしば、仕事を海外に出す(つまり、地域の人々の就業機会を奪う)というネガティヴな意味合いを持って語られ、営業の電話をかけまくったり、eメールの受付をするなど、面倒な業務というイメージがつきまとう。しかし、スタートアップの世界では、これがライブセイバーの役割を果たしうるのだ。

ヤフーやウォルマートで最近起こっていることを見ていると、社外での業務は縮小傾向にある。一見厳しい話ではあるが、社員全員に同じ場所で働いてもらうことには多くのメリットがある。同じ場所で働けば、よいアイデアを生み出し、仲間意識を持って仕事に取り組もうと、会話も増えるだろう。

しかし同時に、オフィス以外の場所で働くスタッフが居れば、有利な点もある。賃金は少なくて済み、備品コストを下げることもできるし、何よりも、出怠勤を記録しなくてもよい生産性の高い労働力を得ることができる。この方法によって、家族を持つ人々は福利厚生を享受することができる。

私は地元と海外3拠点のオフィスを切り盛りする経験から、オンショアとオフショアをうまく組み合わせて仕事することで、最高のバランスが生み出されるとの結論に至った。

CC BY-NC-SA 2.0: via Flickr by Alegrya
CC BY-NC-SA 2.0: via Flickr by Alegrya

約2年前、Dropmysite や Dropmyemail を立ち上げた頃、開発チームはすべてインドに居た。ブートストラップでビジネスを立ち上げた者として、これは私のやり方に合っていた。明らかに優位だったのは、程度はともかく、社員を安いコストで雇用できたことだ。

インドはシンガポールよりも2時間半遅く、この時差が都合よく働いて、私は一日の時間を人一倍長く仕事に充てることができた。朝はビジネス取引や会議をこなす。シンガポールで夕方の頃、インドの開発チームはランチから戻ってくるので、私は Skype を通じて、彼らにプロダクト開発に集中して指示が出せたわけだ。

6ヶ月の間、すべては順調だった。私はCTOと契約し、ウェブサイトをシンプルにバックアップできる MVP(実用最小限商品)を構築した。数万ドルの人的コストを節約できたわけだ。MVP を手にした私は、スケールアップのためにピッチや資金調達に奔走した。

いくらかの資金を得て、私はシンガポールにも開発者を雇い始めた。すぐに改修するようなニーズが生じるようになったからだ。2つの異なるロケーションに技術チームがいて、日常的な混乱、コミュニケーションの問題、人の管理が行き届かないことに悩まされた。ビジネスがこのステージになると、低賃金の労働者は必要なくなり、私はより優秀な人材を雇うことにして、インドのチームとの契約を終了した。シンガポール地元の開発チームは、ものすごいスピードで更新や改善を重ねてくれるので、先行きは明るかった。

その後、私の技術主幹を務めてくれた人物が、家族の事情でアルゼンチンに帰ることになった。アルゼンチンには優秀な開発者が多くいるので、アルゼンチンでも開発は進められると言った。これは私のやり方ではなかったが、彼はよい仕事を続けてくれたので、彼を信じて、遠隔で仕事し続けてもらうことにした。結局、以前インドのチームのときのように、2つの開発チームの労働時間が掛け合わされることになり、1日中仕事し続けることになった。アルゼンチンのチームにはエース級のエンジニアが加わり、順調な滑り出しだった。

しかし、理想はすぐに崩れ始めた。それからの数ヶ月間、(シンガポールとアルゼンチン間の)12時間の時差は、足かせとなった。ミーティングを設定することができず、両方のチームは困り果てた。事業は急速に拡大していたので、やるべきことがめくるめく変化していく。我々はアジアでのパートナーシップに重点を置いていたので、世界に居るチームの半分が、その仕事に従事することになった。仕事をアサインしてから、アルゼンチンのチームが仕事を始めるまでには12時間の時差があるため、作業遅延が日常化していた。

言うまでもなく、アルゼンチンと進めていた実験は、以前のインドのケースと同様、終わりにせざるを得なかった。アルゼンチン・オフィスをシャットダウンし、開発者の一人を連れて、シンガポールに戻った。

これらのアウトソーシングやオフィスの海外移転の経験から学んだのは、それぞれの開発拠点には、タスクの優先順位を調整できる人が必要だということだ。以下に経験から学んだことをまとめてみた。

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1. ある業務に従事するチームは、一つの同じ拠点に配置せよ

ある業務については、同じタイムゾーンにある同じオフィスで、グループで仕事できるようにすべきだ。そうすることで、緊急の業務が入っても、コミュニケーションミスやタイムラグが生じないだろう。よりよいプロダクトを作るための、ブレインストーミングもやりやすい。

逆に言えるのは、異なる業務に従事するチームであれば、必ずしも一緒に居る必要はないということだ。バックオフィス(IT やオペレーション)が別の場所にあっても、フロントオフィス(営業/マーケティングなど)がターゲットとする市場にあれば構わない。

2. それぞれのチームに対して、業務は何なのかを明確にせよ

言うまでもなく、それぞれのチームには、明確な定義とKPIを示すべきだ。自主的に仕事ができて、いちいち管理監督しないで済む人材が必要になるだろう。場所やタイムゾーンに関わらず、このことは、国内・海外両方のチームに当てはまり、ビジネスの前進につながるだろう。

3. 他チームと連携しない、独立した業務を与えよ

海外チームに対しては、業務をプロジェクト単位で与えること。そうすることで、他のチームの進行状況に依存しないで済む。オフショア業務は、オンショア業務と並行して進めることができるだろう。

もし、海外チームが応分の仕事しないのなら、彼らをもっと仕事に巻き込めばよい。他のプロジェクトが、その進行が遅い海外チームのプロジェクトに引きずられることもない。したがって、そこだけ(海外チーム)を変えるということもやりやすい。

4. 毎日のコミュニケーションと調整

チーム間では、常に双方向のコミュニケーションが必要だ。海外の技術開発チームは、本社に頻繁に報告を上げた方がよいだろう。技術主幹は、進めている業務が会社が目指す方向を向いているかどうか、確認する必要がある。

コミュニケーションは、互いの業務範囲を越えたチーム同士でも必要だ。技術チーム同士が話さなければならないのに加え、販売チームは顧客やパートナーに現状を報告するために、知っておくべきこともあるからだ。

5. アウトソーシング先の適時適所

現在、Dropmysite とDropmyemail の主業務や技術開発はシンガポールで行っている。インド、日本、アメリカには、ビジネス開発のスタッフが居る。GMOクラウド社には、日本でモバイルアプリのプロジェクトをアウトソースしており(関連記事)、新しいコミュニケーション・バックアップ・ツールは、全面的にベトナムで開発を行っている。

アウトソーシングは、テック・スタートアップにとってコストを節約するよい方法だが、長期的な戦略が必要になるだろう。最初のプロジェクトが終わったら、ローカル拠点を持つことに時間を費やした方がよい。それからでも、アウトソースできるプロジェクトは切り離して考えることはできるのだから。よいタイミングでエグゼキューションするために、よい戦略を見つけよう。

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