東京も地方も起業には関係ない−やるかやらないか、それだけだ【全国StartupDay in 関西レポート】

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7月11日、トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートによる地方スタートアップ支援プログラム「全国StartupDay in 関西」がグランフロント大阪で開催された。

同イベントは、2012年12月から2014年4月までの間まで全国47都道府県で開催した「全国47都道府県ベンチャーサミット」の発展版としての位置づけとし、起業のみならずその後の成長や事業提携などを視野にいれたスタートアップのエコシステムを作るのが目的だ。関西を皮切りに全国各地をエリアに分け、ファイナンス講座とピッチイベントを開催していく。関西で行わた様子をレポートする。

VCと起業家は、互いの関係性を築くことが大切

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まず始めに、「VCの実態」「東京と地方のギャップとその解消法」と題したパネルディスカッションが行われ、Draper Venture partners, LLC マネージングパートナーの中垣徹二郎氏、ジャフコ 関西支社プリンシパルの山口康典氏、オプト インキュベーション本部の菅原康之氏、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏らが登壇した。

登壇した三社のVCは、グローバル志向として世界一のサービスを目指す事業への投資を考えていたり、日本中に拠点をもち総合的な産学連携を進める投資、ネット広告代理店として純投資として事業連携を見据えた投資など、VC一つとってもそれぞれの視点があることが話された。特にシード期においては、事業そのものよりも経営者の資質などを投資家として重視しているという。

「小さいステージほど、経営者の人間性を見ている。投資家にとってその起業家と関係性を築けるか、自分と能力の違うメンバーをチームとして組める人なのか、ということは大きな投資の要因」(山口氏)

さらに、見据えている視点の高さ、嘘をつかない、締め切りを守るといった人としての誠実さなど、事業だけに限らず日々のコミュニケーションの一つ一つから、人となりを投資家は読み取っていると菅原氏は語る。

中垣氏は、業務の改善点の洗い出しだけでなく、時には世界を視野に入れた目線を持つために年に1回シリコンバレーの企業が集まる場に連れて行き、世界の起業家たちの空気を感じてもらう場を提供することが、投資家にとって必要な役割だという。山口氏は、投資家は起業家に対してよき理解者であることが重要だと語る。

「企業のVCは、担当者レベルで持っている能力やネットワークも変わってくる。もちろん企業VCとしてのサポートもあるが、担当者との相性なども重視したほうがいい。最終的には個と個。人と人とがどう関係性を作れるかが大切」(菅原氏)

東京も地方も起業には関係ない−やるかやらないか、それだけだ

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「東京と地方のギャップとその解消法」というテーマでは、京都で起業したさくらインターネットの田中氏の話からスタートした。先の投資家が起業家の人間性を重視するという話題から、関西の人口規模感だからこその濃厚な付き合いにこそ、大きな価値があるという。東京はあまりに人が多いため、イベントなどをしても互いに素性や本音をぶつける関係を築くための手間がかかることがある。投資家も起業家も、互いに知る関係性を築くためには、関西はちょうどよい規模感では、と田中氏は指摘する。

「家賃が安いなどは、企業の成長ストーリーにはほとんど関係ない。東京との距離をデメリットと感じる人もいるが、今は交通網が発達しているから、東京にすぐ行ける。情報もある程度ネットで収集することができる。関西にいるからといって、デメリットを感じる必要もない」(田中氏)

山口氏は、東京で起業して東京だけで付き合いを終わらせるのではなく、日本全国の企業との関係づくり、さらにシリコンバレーや上海、東南アジアなどの世界の都市を行き来することで、グローバルな視野や経験も持つことができると語る。

「東京に行かない優秀な人も地方にはたくさんいる。地元ネットワークや大学関係というネットワークが活きやすいという意味では、地方都市から世界を視野にいれたスタートアップを輩出できる可能性も高い」(菅原氏)

中垣氏は、ベトナムに小会社を設立し開発規模をアジアにいち早く目を向けて動き出しているロックオン岩田氏のように、グローバルの視座を持てれば大阪も東京も関係なく、ビジネスチャンスをどう掴みとり、行動するかこそが起業家すべてに言えることだと語る。

「起業のエコシステムは、成功しているところに次の成功者が出てくること。地方からでも、多くの成功した起業家を輩出していくことで、新しい価値や経済圏、エコシステムができてくる可能性は高い。そのチャンスをどう掴むかが重要だ」(中垣氏)

最後に、起業家を目指す人たちにメッセージが語られた。

「日本は世界の田舎だと言われている。世界で見れば大阪も東京も変わらない。最終的には人、モノ、カネが大事。優秀なエンジニアやクリエーターは関西にもたくさんいる。東京ではなく始めから世界を目指してやろうとする気概を持つことが大事。いまやクラウドを活用すればいつでもどこでも仕事ができる。あとは、やるかやらないか。それだけだ」(田中氏)

研究開発を活かした事業やニッチな分野を攻める、多様な関西発スタートアップ

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全国StartupDayでは、各地域のスタートアップたちによる5分間のピッチも行われる。ここでは、登壇したスタートアップピッチ10社のうち、会場から評価の高かったスタートアップを中心に紹介する。

アロマジョイン:アロマシューター
大学院で嗅覚ディスプレイの研究をしていた金氏。組み合わせたカートリッジをコントロールし、気体噴射方式で指向性のある香りを0.1秒で切り替えて届けることができるサービスを開発した。これにより、映像に合わせた香りを提供することができ、これまでの視覚や聴覚だけでなく、嗅覚による情報提供を行うことができるという。実際に、匂いをコントロールすることで売上に大きな影響を及ぼすともされており、まずはコンビニやデジタルサイネージを通じた実証実験を行っていくという。

ハート・オーガナイゼーション:e-casebook.com
医師同士が、症例を学んだり医療技術を共有したりするためのプラットフォームサービス。オンラインで可視化や共有化がされてこなかった症例情報をすぐさま共有することで、医師の情報収集コストを下げることができるという。まずは循環器や心臓血管外科などからスタートし、外科や放射線科、脳神経外科、歯科などさまざまな分野の医療現場に提供していきたいと語る。

XS:みちグル
道の駅の口コミサイトとECコマース。全国1300箇所ある道の駅は、2013年には3500億円という市場規模にまで広がっているが、道の駅の情報がネットに共有されていないという。これらの課題を解決し、ユーザは気に入った道の駅の野菜などを定期購入したりするサポートなど、道の駅の新しい可能性を見出すという。

だんきち:スポとも
スポーツのオンラインレッスンサービス。フォームチェックを動画を通じてプロのコーチによる指導や専属コーチとしてのコミュニケーションもとれる。都市と地方におけるスポーツの環境格差や指導者不足をなくし、引退したスポーツ選手の収入源にしていきたいという。今後は、映像や始動データを集約、分析し、体系的な指導方法を提供していく。

ギャラクシーエージェンシー:あきっぱ!
全国の開いている月極駐車場や家の駐車場を貸し出すことができるシェアリングサービス。スペースオーナーは遊休スペース活用ができ、借り手は現在地から近くの場所をスムーズに借りれるCtoCサービス。現在、4万台の場所の確保しており、まずは10万台を目指す。UberやAirbnbのように、シェア文化を根付かせるサービスにしていきたいと語る。

ニューワールド:Guider
芸能人などのドラマで使われた衣装検索ができるファッションEコマース。プレス情報から配信し、ユーザに対して効果的な情報を提供する。100万人ユーザを目指す。

REAL SAMURAI:MAKE5
Flashで作成されたSWFファイルをHTML5形式のファイルに変換。Flashをサポートしていないスマートフォンでも既存コンテンツを再生できる。教育コンテンツ政策を行ない、EdTechの浸透を目指す。

ボーダレス:DOLK STATION
ドール専用の通販サイト。他言語化対応で、日本のクリエイティブを世界に発信する。

職人さんドットコム:職人さん.com
建設現場の情報やプロショップ情報を届けるメディア事業。全国各地のプロショップ情報をマッピングし、が全国を網羅を目指す。建設現場の見える化を図りたいと語る。

Tean OZ:manaboz
家庭と家庭コーチのマッチング 動機付け教育という教育市場の創出を目指す。個人コーチによる目標設定とマイルストーンを設定し、達成感や自己肯定感を高め教育の底上げを目指す。

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