トーマツベンチャーサポートは5月1日、地方のスタートアップ支援プログラムである「スタートアップファイナンス講座」とサムライインキュベートと協力して「全国Startup Day」を全国で開催し、地方の起業促進や事業提携の機会の創出を目指すことを発表した。
トーマツベンチャーサポート(TVS)とサムライインキュベートは、2012年12月から2014年4月までの間、起業を促し、ベンチャー企業が成長できる環境づくりを支援することを目的に、日本全国47都道府県でスタートアップイベントを開催する「全国47都道府県ベンチャーサミット」を開催してきた。
「起業コストが下がっているなか、いまだ起業環境は東京に集まっており、地方における起業の機会が限られています。TVSはベンチャー企業支援、大企業とベンチャーの協業などをサポートしており、そのための場として、全国のベンチャー起業の支援を行うために47都道府県でのイベント開催を行ってきました」(トーマツベンチャーサポートの佐藤史章氏)
トーマツグループは全国約40都市に拠点を持っており、その強みを活かして地方にいるスタッフがメインとなって全国のイベントを作り上げてきた。これまでのイベント参加者は、累計5000人を超えており、地方の起業によるネットワーク、地方で起業することの課題も見えてきたという。
47都道府県ベンチャーサミットでは、VCであるサムライインキュベートも一緒に作り上げてきた。
「これまで80社以上に投資をしてきましたが、そのうち10社くらいは首都圏以外の企業に投資を行なっています。地方はなかなか情報が少なく、起業自体が少ない。スキルを持っていてもそれを活かす環境になっていません。だからこそ、知識を共有したり切磋琢磨する人たちがいることで、スタートアップ全体が盛り上がっていく可能性は高いと考えています」(サムライインキュベート玉木諒氏)
事業のアイデアも含めて、地方だからということのマイナス要素は少ない。福岡のヌーラボや京都のゆめみやはてなといった企業だけでなく、最近では3月に行われたドコモ・イノベーションビレッジ二期生のプレゼンで優勝した、一週間の献立が作れるレシピサービスのme:newは岡山発のスタートアップだったり、先日ベータ版をリリースした駐車場の空きスペースのシェアリングサービスのあきっぱ!も大阪発だったりする。
地方からも1社でも多くのスタートアップが生まれることで、よりスタートアップのエコシステムが生まれてくるといえるだろう。
起業家の卵を支援し、地方のスタートアップコミュニティを醸成する
佐藤氏や玉木氏は、約1年半で47都道府県すべてを回り終えた中で感じた課題として
1.資金調達をするということに対する起業家の意識不足
2.ベンチャー企業の事業に対するフォーカスの高さやサービス改善の必要性
3.ベンチャー企業を支援する環境と接点の不足
があると考えたという。
「資金調達という行為自体が、まだ良いイメージを持っておらず、銀行から融資を受けたり自前で稼いでからやろうとする考えが多い。もちろんそうした考えもあっていいが、短期間で急成長するという起業への意識を変えたり、目標を世界へと向けたりするマインドシフトがもっと起きてほしいと考えています」(佐藤氏)
全国47都道府県ベンチャーサミットは、場合によって一過性のイベントになるという課題もあった。そうした課題を解決するために、中長期的な視点をもって継続的にスタートアップを支援していくことを目的にしたのが、ピッチイベントである「全国Startup Day」を含めた一連のプログラムだ。
プログラムに募集し、審査を踏まえて選ばれた起業家の卵たちは、メンターなどのサポートをもとにして約一ヶ月間のビジネスモデルのブラッシュアップや本番のピッチに向けたプレゼンの落とし込みを行う。プログラム最終日にVCや事業家、オーディエンスの前でピッチをし、優秀者には賞が贈られる。
「ビジネスモデルも含めたアイデアのブラッシュアップを通じて、投資に耐えうる形づくりを支援していきます。起業のきっかけを生み出し、そこから見込みがあるチームはシードラウンドの投資や、シードアクセラレータープログラムの参加への道も作っていきます。
こうしたプログラムを通じてサムライインキュベートとしては、47都道府県すべての地域のスタートアップに投資ができると嬉しいです」(玉木氏)
Startup Dayへの参加を促すために、Startup Dayの約二ヶ月前頃にTVSによる「スタートアップファイナンス講座」を実施し、起業と投資の関係やビジネスモデルの構築などに関しての知識を共有する。この講座を呼び水に、Startup Dayへの参加へとつなげることが目的だ。
「TVSが持っているネットワークや知見を活かし、投資などの知識を積極的に提供して、融資ではなく出資を受けるというマインドシフトが起きてきます。その先にチーム集め、起業、そこから出資による事業展開、IPOやM&Aへと少しでもつながってくると考えています。
このプログラムを一緒に作って入れるパートナーもいつでも募集しています。地方の起業を一緒に盛り上げていく企業や団体とのコラボを通じて、みんなでスタートアップを応援していければ」(佐藤氏)
VCや大企業の新規事業担当者とのマッチングや地方のスタートアップコミュニティを作っていき、地方の起業に対するマインドを変え、目線をより高く見据える若い次の世代の誕生を期待しているという。
まず始めに、5月24日に大阪と京都、31日に神戸と奈良で「スタートアップファイナンス講座」をスタートし、その後7月からStartup Dayはスタート。7月12日に関西、9月に北海道、10月に中部地方の開催が予定している。
地方の起業環境含めて、さまざまな取り組みが生まれ始めている。今回のプログラムは、ある程度アイデアを持っている、もしくはアイデアを形にして起業したいと考えている人たちが対象になるかもしれない。次は、アイデアを一から考える場があるといいかもしれない、とも2人は語った。
筆者も、全国Startup Dayの様子などを、引き続き取材していきたいと思う。
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