クラウド会計「第3のプレーヤー」が総額10億円の資金調達、A-SaaSは本丸の会計事務所を攻める

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クラウド会計「A-SaaS」を提供するアカウンティング・サース・ジャパンは11月25日、Fidelity Growth Partners Japan(以下、FGPJ)、Arbor Ventures、アイ・マーキュリーキャピタル、モバイル・インターネットキャピタルを対象とした第三者割当増資の実施を発表した

シリーズBとなるラウンドでの調達資金は総額で10億円、モバイル・インターネットキャピタル以外は新規の株主として参加する。また、これに伴い、FGPJのデービッド・ミルスタイン氏が社外取締役に就任する。同社は調達した資金を開発およびセールス・プロモーションなどの人材採用に投じるとしている。

アカウンティング・サース・ジャパンの創業は2009年6月。小規模事業者向けのクラウド会計サービスとしては最も立ち上げが早い部類(freee/2012年7月創業、マネーフォワードのクラウド会計サービス開始/2014年1月)になる。

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導入しているのは会計事務所

さて、このA-SaaSというクラウド会計サービス、私も全く認識をしていなかったのだがそれもそのはず、現在の経営陣が揃ったのは2014年8月とまだつい最近のことなのだそうだ。いわゆる「第二創業」といえばいいのだろうか、ちょっと変わった沿革を持っている。しかし、その流れを紐解くと、このサービスがいかに渋い戦略を取っているかがよく分かるので少しご紹介したい。

まず、会計士で元大手会計サービスJDLの創業者、森崎利直氏が「税理士向けのASPサービス」を立ち上げたのが始まり。ここからちょっと驚く話なのだが、約800人ほどの税理士の方々から資金を募り、現在のA-SaaSの原型となるサービスを約5年かけて構築したというのだ。クラウドファンディングの走りともいえるかもしれない。

その後、2013年6月にセールスフォース・ドットコムと資本業務提携、グリーベンチャーズ、モバイル・インターネットキャピタルなどへの第三者割当増資を実施し、総額6億2500万円の資金調達を実施する。これがシリーズAラウンドで、ここからいわゆる拡大方向に戦略が走り出す。取材した話によれば、グリーベンチャーズのけん引役としての役割が大きい印象だった。

2014年8月には前述の通り、現在代表取締役となる佐野徹朗氏が就任、今回の大型調達を迎えることになる。

注目したいのはやはり創業期に集めた800人超の会計事務所ネットワークだ。彼らは出資をする代わりにこのサービスを使う利用者にもなっているという。つまりこのシステム、一般の小規模事業者でも使えるように設計されたfreeeやマネーフォワードBusinessのようなインターフェースではなく、あくまで会計事務所が使い易い設計になっているのが大きな特徴なのだ。確かにこの画面は会計をやった人間でなければなかなかとっつきずらい。

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また、ビジネスモデル的にも、会計事務所とその顧問先企業を「セット」で見ているのが特徴だ。料金の徴収は会計事務所から実施しその顧問先からは取らない。「全国で3万5000件ほどある会計事務所がターゲット」(佐野氏)で、まずはそこを確実に刈り取るのが彼らの戦略だ。現在、1600件あまりの会計事務所が彼らのサービスを契約している。

「私たちはこれまで、会計事務所さんと一緒にこのサービスを開発してきました。中小企業の成長エンジンとなる会計指導など、税理士の持つ本来の価値を提供するためには、やはり効率化が必要です。A-SaaSではシステム的に顧問先の企業をまとめて管理ができるので、共通の課題などをあぶり出しやすいのです。そうやって、顧問先企業と税理士先生のコミュニケーションをより活性化させたいですね」(佐野氏)

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