Alibaba(阿里巴巴)はゲームでTencent(騰訊)に張り合うことができるか?

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昨日(編集部注:原文掲載12月11日)、Alibaba(阿里巴巴)はゲーム業界への最新の動きを明らかにした。KTplayと呼ばれる携帯向けの新しいソーシャルゲームプラットフォームだ。北京に本社を置く新しい携帯ゲーム会社、Yodo1(遊道易)と共同で開発されたKTplayはAppleのGame Centerをさらに頑強にしたようなものだ。

だがAlibabaのゲーム業界における最近の動きはこれだけではない。8月にはAlibabaは1億2000万米ドルをアメリカのゲーム開発会社Kabamにつぎ込み、ゲーム配信のプラットフォームとして同社のeコマースサイトを活用する実験を行っている。

こういった動きから疑問が生じる。Alibabaはいったいどこまでゲーム分野に進出できるだろうか?結局のところ、ゲーム分野は全く分野の異なる市場なのだ。しかしAlibabaには非常に潤沢な資金があり、これまで成功してきた実績もある。一部には、Alibabaは中国におけるTencentのゲーム支配にようやく挑戦できるだけの企業になりえるのだろうかと問う者もいる。

最初にそう聞かれた際、私はてっきり冗談だと思い、一笑に付した。Alibabaはeコマースに関しては侮れない勢力であるが、Alibabaがゲーム分野でTencentを追い抜く?そんなことは不可能だ。

Tencent(騰訊)の完全支配

なぜAlibabaがTencentを追い抜くことができないかを理解するためには、Tencentが中国でのゲーム市場にがっちりと食い込んでいることを理解する必要がある。PCゲームにおいてはTencentは中国で最も人気のあるPCゲームを3つ発売している。League of Legends、Crossfire、Dungeon & Fighterである。

PCゲームにはほかにもたくさんのヒットがあるが、Tencentはもう何年にもわたってトップ3を占めている。つまり、PCゲームによる収益がゲーム市場全体の中でとてつもなく大きな部分を占める国においては、莫大な収益となることを意味する。

だが仮にPCゲームにおけるTencentの支配は別として、AlibabaはPCゲーム市場よりずっと小さな中国のモバイルゲーム市場にしか興味がないと考えるにしても、Tencentを打ち負かすにはまだ越えねばならない大きな山がある。Androidのゲームデータはさまざまなサードパーティーアプリストアが存在するために拾うのが難しい。

だが昨日、Appleは2014年の中国におけるiOSアプリの売り上げ上位リストを発表した。結果はどうだっただろうか?なんとトップ20のうち、13がTencentのゲームだったのだ。中国のiOSアプリの売り上げトップ20のほぼ75%がTencentのゲームだったのである。すごいことだ。

またTencentがゲーム市場をリードしていなかったとしてもソーシャル市場では相当なリードを保っており、これはゲームを宣伝するのがはるかに簡単になるということを意味する。

新しいゲームを売り込む場合は、(例えば)既にアプリ内でゲームにアクセスするつもりでいる同社の数億ものWeChat(微信)ユーザに売り込めば良いのだ。AlibabaはeコマースマーケットのTaobao(淘宝)やTmall(天猫)から成る大きなユーザベースを誇っているが、ユーザはそれらのプラットフォーム上ではゲームをしない。そしてAlibabaの過去のソーシャル市場での取り組みは、成功を収めたとは言い難い。

その上、Alibabaはコンソールゲームとも張り合わなければならない! というのは冗談で、中国でコンソールゲームをやっている者など誰一人いない。
その上、Alibabaはコンソールゲームとも張り合わなければならない! というのは冗談で、中国でコンソールゲームをやっている者など誰一人いない。

ツキは関係ない

もちろん、ちょっとしたツキがあればAlibabaもTencentを打ち負かすことができると言う者もいるだろう。たまたま大化けするゲームに投資すれば、事実上一夜にして小物から大物になることができる。モバイルゲームの世界では特にそうだ。だがTencentの実績が示すように、同社は基本的にツキを作る方法を見つけている。つまり買収や成功事例を真似ることだ。

同社の典型的なパターンは、ゲームの中国のパブリッシャーになるか開発スタジオを直接買うことで、既に成功しているゲームか期待度の高いゲームを探し出し、手に入れるという方法だ。それが駄目なら、同社はゲーム自体を複製するのだ。有能な開発者がいるのだから、ほぼなんでも複製することができる。

また、巨大ソーシャルプラットフォーム(WeChat、Tencent Weibo=騰訊微博、QQ)が、同社が宣伝したいゲームを数億人ものゲーマーに即座に広めることを確実にしている。実際のところ、あるゲームを取得したとしても、Tencentはよくそのゲームの模造版を開発してもいる。いくらか中国風の嗜好を加えることもあるが、土台となる部分は確実にカバーしている。

特にモバイルゲームの世界ではゲームで一発当てるのは運次第というところもあるかもしれないが、今年の中国でTencentがiOSゲームを支配していること(そしてPCゲームの世界ではほぼ毎年支配していること)は、何か別の事柄を示唆している。そう、これは運の問題ではない。システムの問題なのだ。

そしてTencentの過去10年にも及ぶゲームでの実績は、誰がどのように思うとしても(同社のマネタイズ手法やコピー志向に批判的な人も多い)、このシステムがうまく機能しているのは疑いようがないことを示している。

何が必要か

Tencentと張り合うには、Alibabaは非常に大量の資金をゲーム分野につぎ込む必要があるだろう。国内外を問わず、才能のある開発スタジオを大量に獲得する必要があるし、PCゲーム市場にも関心を持たなければならない。自社のゲームを宣伝し、組み入れるために、Tencentのものに匹敵するソーシャルプラットフォームを開発する必要がある。

それに、売り上げ上位を占めるTencentの人気ゲームの座を何とかして奪う方法を見つけねばならない。それがたとえほぼ10年にわたって中国で根強い人気を博してきたゲームであってもだ。

厳密に言えば不可能ではない。だがすぐに起こることはまずない。Alibabaは巨大企業であり、どんな市場であれ、自分が欲しいと思った市場につぎ込むことのできる資金を潤沢に持ち合わせている。だがTencentもまた、資金は豊富であり、中国ゲーム市場において強大な力を誇り、地位を確立している。この強敵を好むと好まざるにかかわらず、その存在に慣れなければならない。何しろこの強敵がどこにも行くことはないのだから。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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