スマートフォンシフトが国内で発生したきっかけはやはりiPhoneの登場だろう。2008年7月に彗星のごとく登場したこのデバイスは、大方の予想を裏切り大きく拡大、その後の広告、ゲーム、メッセージングなど幅広い範囲で事業拡大したのはご存知の通りだ。
ではこのスマートフォンビジネスは次どこに向かうのだろうか?この興味ある分野についてまさに今、ニュース、フリマ、メッセージプラットフォームの第一線でサービスを提供するトップがその未来を議論した。
登壇したのはスマートニュース代表取締役会長の鈴木健氏、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏、LINE取締役の舛田淳氏、サイバーエージェント取締役でスタートアップ管轄の宮﨑聡氏の4人。インフィニティ・ベンチャーズLLP、共同代表パートナー小林雅氏のモデレートで進行した。
話題はやはり今日まさにリリースされたLINEの新サービス「LINE MUSIC」から盛り上がった。
「本日リリースしたのがLINE MUSICになります。オンデマンド定額で聞き放題。海外含め類似サービスは大体1000円以上するものを500円のライトプランと1000円のプレミアムプランに分けさせてもらいました。
フリーミアムというよりはライトミアム。若い子たちの音楽離れをなんとかしようということで学割も用意しています。ソニーやエイベックス、ワーナー、キングなど150万曲以上、新曲も入ってる。音質も320kbps出てるのでいい」(舛田氏)。
朝5時にリリースしたところ、プレスリリース前にメディアが取り上げてしまい、テレビに露出するタイミングでサーバーがダウン。「毎分10万人が追加されるような増え方をした」という初速だったらしい。舛田氏は「もっと若い人が使うかと思ったが年配の男性も多い」とリリース数時間の所感を話していた。
LINE MUSICに先行してストリーミング音楽サービスを開始したのがAWAだ。サイバーエージェントとエイベックスの共同事業で、5月27日に開始、6月10日には100万ダウンロードを達成した。2016年末に1000万曲の提供を目指しているという。
やはり興味の中心になった「動画」
で、このセッションはかなりの時間が動画の話題で占められた。ではこの動画元年と言われて久しい中、今年が本物だと言われる所以についてメルカリの山田氏はこんなことを言及していた。
「メディアって考えた際、新聞とか本とかがあって、ある日テレビが出てきた。これは市場としても大きく、同じようなことがやはりウェブでも起こるんじゃないかった思ってる人が多いんだと思います。ウェブもやっぱりテキストから画像が出てきて動画になった。爆発的な何かが起こるんじゃないかって。スマートフォンが出てきて例えば月商で100億円稼ぐようなゲームが出てきたり、桁がかわった」(山田氏)。
この「とんでもない変化」を感じとってるプレーヤーたちがビッグビジネスを狙って動画に動いているのだ、というのは納得感がある。本当に動いた時、一番手でありたいのは当然の話だ。今回登壇したサイバーエージェントの宮崎氏は「動画については総張り」と戦略を語る。
「テレビ朝日と合弁で動画プラットフォームをやろうということで準備してますし、動画は総ばり戦略でメディアからコミュニティ、広告、子会社を作って展開しています。ビジネスの強みは国内の芸能事務所やエンターテインメント領域のリレーションの資産が溜まっていますし、それをアメブロ単体にしか活かせていなかったのを動画や755などに展開していこうという考えですね」(宮崎氏)。
スマートフォンが多くの人の手に渡り、回線速度も改善、そもそもリッチな表現が可能な動画にユーザーが親しみを覚えるのは自然に思える。一方で、テレビで体験した動画とスマートフォンでの動画体験には一点大きな違いがある。通信料だ。
コンテンツであればまだしも、宣伝広告を通信料支払って閲覧するのは体験を損ねる可能性がある。この件について尋ねたところ、動画広告を提供しているスマートニュースの鈴木氏はスマートフォンならではの動画体験を説明したのち、このように回答してくれた。
「回線が遅かったりするので、そこをしっかりキャッシュして圧縮するとか、スマホだと特に最初は音をださないとか、止まったあとにタップするとランディングページに移動するなどのモバイルならではの体験にこだわっている。映像は人を引き込む力が強い。(通信料の問題については)確かに不満を持っている方も若干数はいますね」(鈴木氏)。
また、この通信料の問題は時間が解決するという意見もあった。
山田氏のコメントはそもそもインターネット創世記にグーグルは当時まだ高価だったハードディスクや回線の代金が将来的に下がることを見越してGmailなどのサービスを展開したという経緯があり、こういうリソースが限りなく無限大に使えるという状況を前提にサービスを設計するべきだ、というものだ。
舛田氏も音楽や動画など様々なストリーミングサービスが立ち上がれば、社会的に向き合わざるを得ない問題になる、そうなった時、例えばキャリアの設定しているパケットの上限設定なのか、Wifiのような方法なのかはわからないが、そこにチャンスが生まれると話していた。
通信料という問題以上にスマートフォン・動画ビジネスが隆盛を極めれば、少なくとも国内の通信料問題は小さなものになるのかもしれない。
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