モバイルペイメントのSquareが公式にIPOを申請、2015年上半期の売上は約5億6000万ドル

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Image Credit: Square

今日、ジャック・ドーシーの育てたペイメントカンパニーがその翼を開く。つい最近提出された申請書によると、Squareが公式に株式公開を申請していることが明らかになった。

2015年上半期にSquareは5億6050万ドルの売上に対して、7750万ドルの赤字を計上している。2014年の同社のグロスの決済流通額ボリュームは2307億8000万ドルだ。今回の申請で明らかになったこととして、(これは驚くべきことではないのだが)小売業が最も決済流通額が大きく、全体の21%を占めていることがわかった。小売業の決済流通額は、サービス業や飲食業、美容業、業務委託、輸送などを凌いでいる。

スターバックス単体の売上も明らかになっているのだが、今年の上半期で6200万ドルを貢献している。スターバックスとの提携は重要なものだが、すぐに終焉を迎えることになる可能性は高い。申請書には、「2016年第三四半期に向かえる契約終了を持って、スターバックスは他の決済処理サービスに移行し、私たちのサービスの利用を停止する見込みです」とある。

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ここ数カ月、SquareがIPOするんじゃないかという噂が駆け巡っていた。今回の発表を行ったCEOのジャック・ドーシーは、この夏の間に役割を終えて辞任したディック・コストロ氏から暫定のCEOを受け継いだ後、最近になって恒久的なCEOの役割を追加したばかりだった。

ここにSquareの株式公開が追加されるわけなので、ドーシーは手一杯の状態だ。彼がSquareの成功にコミットしているように見えるが、二つの会社を同時に手掛けることに過去手こずってきた。これに対してドーシーは、自分の株式持分の20%を同社やStart Small Foundationに寄付すると言及しており、また残り10%にあたる持分をSquareに投資する計画なのだ。それでも尚、Squareの幹部たちは申請書に、ドーシーが二足のわらじを履いた状態であることに言及している。

当社の将来的な成功は、当社の役員および、その他主要従業員による継続的な貢献に大きく依存しています。もし、我々が経営陣や主要人物を失うことになった場合、適切かつ有資格の交代要員を配備することができない可能性があります。こういった場合、その交代要員を採用し育成するための追加予算を必要とするため、この事業の成長を深刻に妨げる可能性があります。共同創業者で社長、最高経営責任者のジャック・ドーシー氏は同時にTwitterのCEOでもあります。このことは彼の専念する時間や注意力、そしてSquareへの貢献に影響する可能性があります。

Squareはその創業した2009年から多くのアップダウンを経験してきた。まず、同社はその最初のプロダクト公開で幸先の良いデビューを果たすことになる。つまり、Squareクレジットカードリーダーのことだ。これはスマートフォンのイヤホンジャックに挿すことで利用できるものだった。この最初のプロダクトは、当時、デジタル課金技術に取り組んでいたPayPalやGoogleのような著名な決済イノベーターたちを驚かせることになった。

初期プロダクトのデビュー以降、同社はiPad向けのPOSシステムを公開し(これがタブレットベースの競合出現に拍車をかけることになるのだが)、在庫管理や解析、予約管理、給与支払い、スタッフ管理、前借りなどのバックオフィスツールを開発することとなる。また、Square Cashという個人間決済アプリも開発し、レストランデリバリーのCaviarとFastbiteという二社を買収した。

成功を味わう一方で、その道のりには失敗もあった。例えば、一般消費者向けのウォレットアプリは2つともその試みを失敗に終わっている。Square Walletは、ユーザーにアプリでチェックインさせ、それからキャッシャーに自分の名前を告げるという方法で店舗におけるモバイル支払いを試したものだった。このアプリは期待はずれに終わり、公開から3年後に類似アプリとなるSquare Orderに置き換えられた。後者は、カフェで消費者に食べ物や飲み物を事前にオーダーし、アプリを通じて事前決済できるものだった。1年後、こちらもシャットダウンしている。

これらの失策に加え、Squareを否定的な報道が1年以上に渡って襲うことになる。Square WalletからSquare Orderに移行をする直前頃、ウォールストリートジャーナルの報道だ。Squareが、巨額の投資資金のかなりの量を使いこみ、2013年に1億ドルもの赤字を垂れ流したと報じたのだ。

この報道がSquareの信頼を傷つけたのは間違いないが、同社はプロダクト公開と買収を続けた。また、同社の評価額を巨額の60億ドルに引き上げた資金調達ラウンドで、1億5000万ドルを含む資金調達に成功している。調達に加え、Kosla VenturesやSequoia Capital、Rizvi Traverse、Lawrence Summers、Mary Meeker、Ruth Simmonsといった強力な投資家たちの支援を受けることになったのだ。

しかし、Squareには未だ戦うべき多くの競合がおり、この申請書にはそれに関連する計画があることが記載されている。「我々は、主に自分たちが基礎とするコマースの生態系を競合たちとの差別化要因とし、使いやすさ、スピード、透明性、そして信頼に集中して参ります」とある。また、「Apple PayやAndroid PayなどのNFCや、その他の通貨を含む新しい決済テクノロジーを受け入れ、素早く改革していく力こそ、我々の決済プラットフォームを競合から引き離す要因になります」とも記している。

Squareは、これまで決済テクノロジーのディスラプターとして進化してきた訳だが、初期の競合たちもそれぞれ独自のソリューションでこのイノベーションに追いついてきている。Apple Pay、Android Pay、Samsung Pay、チップやピンカード、その他の新たな決済手段は、やすやすSquareを独走させてはくれないだろう。

さらに、他の支払い手段と比較したSquareの支払いボリュームは比較的低い。以前、Vantivが2012年に株式公開した際、その加盟店サービス事業は年間で4260億ドルの流通額を処理していた。PayPalは、Squareの申請により似ているものになるが、こちらには年間で2350億ドルの流通ボリュームがある。

それでも、Squareは成長の兆しを見せている。2013年〜2014年の間に、同社の年間売上は5億5200万ドルから8億5000万ドルに伸びている。今回の申請で、まだ黒字化できていないことを明らかにしたが、赤字額は減少している。

Squareはニューヨーク証券取引所にてティッカーシンボル「SQ」で取引を開始する予定だ。

原文はこちら

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