Googleの遠隔地無線インターネットプロジェクト「Project Loon」、インドネシアで試験準備が整う

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今日早く(原文掲載日:10月29日)、Googleの親会社 Alphabet は、野心的な事業計画である Project Loon に向けてインドネシアの三大通信会社と提携し、全国規模の実験を始めると発表した。これにより、来年初めには農村地域にインターネット接続が提供されることになる。

そもそもProject Loonとは何か? これは高度の気球を使って遠隔地や発展途上国、またウェブ接続が不可能である地域へインターネットを適用させる構想である。インドネシアは同プロジェクトの有望な候補地である。というのも、海により隔てられた1万7000以上もの島々から成り立つ地理的条件では、ブロードバンドや通信インフラを整備することはまったくの悪夢となっているからだ。

Telkomsel、XL Axiata、Indosat の幹部らは本日シリコンバレーで催された報道機関向けのイベントで、Project Loonの中心人物である Mike Cassidy 氏、Google 共同設立者の Sergey Brin 氏らと共に同計画を明らかにした。気球を空へ12マイル以上も打ち上げてスマートフォンにインターネット接続を届けるLoonの対象国は、現在ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドに続いてインドネシアが4ヶ国目となる。

今月、インドネシアの通信企業はこの構想提案に対して複雑な心境であった。Telkom のイノベーションおよび戦略的ポートフォリオディレクター Indra Utoyo氏 は、メディアに次のように語っていた

Telkomだけでなく、他の通信企業にも害が及ぶことが目に見えています。これは、Googleが私たちを無視することを意味します。

しかしながら、Telkomsel がこの取引に乗ったからには、双方にとってすべてがバラ色に進んでいるようだ。Telkom は Project Loon が営利プロジェクトとして稼働する前に、12ヶ月の試行期間を設けている。Project Loonは、スマトラ、カリマンタン、東パプア上空の5つのスカイポイントで 900 MHzの周波数を使用する予定である。

インドネシアの農村人口にオンラインをもたらすことは、複数の企業関係者が取り組んでいる課題だ。この5月に、インドネシアの衛星サービスプロバイダー BigNet はシンガポールを拠点とする Kacific Broadband Satellites と7800万米ドルの長期協定に署名した。目標は、2017年からインドネシアに高速ブロードバンドサービスの新しい形をもたらすことだ。Kacific は、インドネシア諸島全体を網羅するために自社の衛星から真っすぐ信号を送ることを目指している。同社は特に、東インドネシアの発展途上地域への良質で安価なインターネットの提供に力を入れている。

空でのインターネットをめぐる戦い

Project Loon はさかのぼること2011年に始まった。2013年、ニュージーランドでのLoonの初期の試験段階では30機の気球が使われた。オーストラリアとブラジルがそれに続いた。試験は、使われていない周波数帯域の一部を無料で使用することについて交渉を試みる代わりに、通信会社に周波数帯域の特定の帯域を所有することを許可しつつ、通信会社を利用して進めるという Loon の現行のアプローチを形作る助けとなった。Cassidy 氏は、インドネシアの上空に数百という気球を打ち上げると断言した。

インドネシアにおいて、インターネットの普及率を上げることが重要であるのは、人口の約30%しかウェブにアクセスできていないためである。アクセスできるところでは、お粗末なインフラのためにデータのスピードは遅い。Loon であれば、Google はインドネシアの三大通信会社から作られる信号を受け取ることができ、飛行機や自然天気事象より上の成層圏から信号を再分配することができる。そこから、信号は複数の気球とインドネシアの人里離れた電波受信困難地域との間を飛び回ることができる。インターネットに接続できる電話を持つ人は、信号を標準無線LANのネットワークとして利用できる。

同社によると、ダウンロードのスピードは最大 10Mbps になり、アメリカにおける平均ダウンロードスピードに匹敵するという。Alphabet にとって、Project Loon は、インターネット接続なしで生活している40億人以上の人々にインターネットの接続をもたらす取り組みの一環である。インドネシアでより多くの人がインターネットの接続ができるということは、必然的に Google 検索が増えるという意味であり、Alphabet にとってはプラスになる。

それはまた Android ユーザが多くなるという意味にもなるかもしれない。Androidはすでに世界で最も使われている携帯OSだ。とりわけ、Android は多くの人が安い電話を買い求めるインドネシアのような国では優勢だ。

Alphabet だけが発展途上国にインターネットの提供を試みているのはではない。Facebook は最近、インドネシアに Internet.org をローンチした。ドローン会社 Ascenta を買収後、Facebook はInternet.org をサポートするため、自己操縦で太陽電池式のインターネット飛行機を活用する計画でいる。Facebook が Aquila と呼ぶ飛行機はボーイング747と同じ翼長があり、青い昼間の空から無線LANを管理しながら約3ヶ月近く上空に留まるよう設計されている。アプローチの仕方は同じではないが、Facebook と Google は新興市場通信企業パートナーシップを手早く決め、以前は遠隔地であった場所にインターネット接続を提供することで真っ向から競争している。

インドネシアの空からインターネットを提供する戦いに勝つのはどの企業だろうか?FacebookかGoogleか、それとも地元の衛星サービスプロバイダーか? これはインドネシアのインターネットビジネスにとってどんな意味を持つのだろうか?

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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