
(20日、東京の JICA 本部で行われた調印式にて。撮影:JICA/久野真一氏)
東京に本社を置き、アフリカの発展途上国でキオスク店舗をネットワークすることにより、無電化地域に電力を届けるサービス「WASSHA」を展開する Digital Grid は20日、JICA(国際協力機構)からシリーズBラウンドシリーズ A のエクステンションラウンドで3億円を調達したことを発表した。Digital Grid はこれまでにシリーズAラウンドで、東京大学エッジキャピタル(UTEC)、日本政策投資銀行、イノベーティブベンチャーファンド(NECグループとSMBCグループによる共同運用)、電源開発から総額8億円を調達している。既存株主の追加出資と今回の JICA からの3億円をあわせ、シリーズBラウンドシリーズ A のエクステンションラウンドでの調達総額は4億円となり、創業当初からの累積調達総額は12億円となる。
(2016年10月20日15:30更新:ラウンド毎の調達金額の内訳に誤りがありましたので、記述を修正しました。)
(2019年11月8日正午更新:このラウンドをシリーズ B ラウンドではなく、シリーズ A のエクステンションラウンドに位置付けを変更するとの連絡を同社から受け、バックデイトで一部記述内容を変更しました。)
Digital Grid は2013年の設立で、東京大学大学院の阿部力也教授の「電力ネットワークイノベーション(デジタルグリッド)」の研究からスピンオフしたスタートアップだ。アフリカの無電化地域の村々のキオスクにソーラーパネルや充電バッテリを設置し、LED ランタン30基、ラジオ、タブレットなどを無償でレンタル供与。店舗はこれら生活家電を村の住人に貸し出し、日々充電に来てもらうことで課金する。店舗のオーナーがスマートフォンを操作してモバイル決済することで充電ボックスからランタン、ラジオ、タブレットなどに通電されるようになっており、Digital Grid の店舗からの売上回収もモバイルで実施する。
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日本の ODA(政府開発援助)や青年海外協力隊など国際協力支援を牽引する JICA にとっては、中東・北アフリカの開発ファンドに出資している事例はあるが、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)以南の事業案件への出資は初の試み。JICA が持つ BOP FS(Base of the Pyramid – Feasibility Study)というスキームからの投融資で、(調査だけにとどまらない)対事業向けの資金拠出としても初となる。
今回の出資を担当した、JICA 民間連携事業部主任調査役の佐野悠一郎氏は、出資金の原資は税金であり、またグラント(助成金)でもないため、最終的に資金を回収する必要はあるが、WASSHA の事業拡大によって「開発効果の発現」が期待できることや、円借款・無償資金提供・従来の ODA では手の届かない世界に支援を届けられる可能性があることから、グロースキャピタルとして Digital Grid に出資する判断に至ったと説明する。

(撮影:JICA/久野真一氏)
JICA はアフリカ54カ国のうち、ほとんどの国に現地事務所を開設し、青年海外協力隊員やシニア海外ボランティアを派遣している。彼らを通じて、JICA は現地住民から日常生活に関わる要望を把握しているのに加え、アフリカ諸国の政府や関係省庁と堅固なネットワークを築いているため、Digital Grid はこれらの JICA のリソースを活用して、よりスムーズなビジネスのスケールを実現できるようになる。
6月にインタビューした際には、タンザニア首都のダルエスサラームを中心に2都市にある加盟キオスク650店舗で提供していた WASSHA だが、10月末までに加盟店舗820軒にまで拡大。タンザニア国内10州(region)でサービスを展開しており、技術スタッフの派遣や修理を行うセンターも3都市にまで増やしている。Digital Grid では、構築中の加盟キオスクとのネットワークを活かし、自社の電力サービス以外にも、他のスタートアップの開発したサービスの販売やテストマーケティングにも協力していきたい、としている。
JICA では、インフラ・SDGs(Sustainable Development Goals;国連が定める「持続可能な開発目標」)・気候変動の3つの領域をテーマとした事業に対して出資を行うスキームを持っており、これらの領域でグロースステージにある社会起業系スタートアップなどに積極的に出資を検討していきたいとしている。

(撮影:JICA/久野真一氏)
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