スマートフォンから中古マンションを登録することで売買ができるサービス「カウル」を運営するHousmartは11月4日、オプトベンチャーズ、BEENEXT、大和企業投資を引受先とする第三者割当増資を11月1日付で実施したと発表した。調達した資金は総額約1億円で株式比率などの詳細は非公開。
同社は調達した資金でサービス強化およびマーケティング、人材採用を進めるとしている。
カウルを運営するHousmartは元々、マンションを個人で直接売買できるサービスとして2014年10月に設立され、社名と同じHousmartというサービス名で運営を開始していた。カウルも基本的なコンセプトは変わらず個人間売買に近い取引ながら、高額な不動産売買に関わる重要なポイント(売買契約・決済に関わる箇所)はカウル側が担当することで、専門性の高い不動産売買の障壁を下げることに成功している。
変わったのはビジネスモデルで、仲介手数料が売却時、購入時共に物件価格の1.5%(法定で定められる手数料は約3%でその半額)に変更(Housmartは売却時の手数料無料)となり、さらに月額費用モデルが導入された。現時点でベーシックプランは無料、購入手数料が一部条件で無料になるプレミアムプランは月額1万円となっている。
また、売却時に頭を悩ませる価格についても同社が集める約1000万件の価格情報を解析し、適正価格を推定、専門のスタッフによる提示を受けることができる。
同社代表取締役の針山昌幸氏は個人による不動産売買の挑戦についてこのようにコメントをくれた。
「カウルでは、顧客同士が直接やりとりをして、マンション売買をすることが可能です。「マンション」という、戸建やビルに比べて比較的シンプルな不動産であれば、個人間売買は可能ではないかと考えたのですが、ここはまさに想定通りでした。
一方不動産を探すプラットフォームとして顧客に使ってもらった時「物件数の多さ」は絶対に必要な要素なのですが、「マンションを売りたい人」に対するサービスの認知拡大は想定以上に時間がかかることが分かりました。
マンションを売る人というのは、新しくお子さんが出来たり、逆にお子さんが独立したタイミングなど、ライフイベントに紐付いて家を売却するので、そのライフイベントが起こるまで「家を売るサービス」にほとんど興味がないんですね」(針山氏)。
売る側・買う側のどちらを最初に増やすか、これはマーケットプレース全般において鶏と卵の論争になりがちなポイントだ。針山氏は情報の少なさに課題を感じて他の不動産会社に売却依頼があった情報もカウルに掲載するようにし、取り扱い物件のカバー率を97%に上げることに成功している。
また、こういった不動産売買では珍しい月額課金というチャレンジについてもこのように状況を教えてくれた。
「月額課金にすることで「早く買ってもらおう」というインセンティブがなくなるので、顧客により公正に情報提供をすることが可能になるのではないか、という狙いから始めました。実際にやってみて感じたのは、月額課金が馴染む顧客と馴染まない顧客がはっきりと分かれるということです。
「絶対にこの半年で買おう!」と決めている方には月額課金がニーズと合致するのですが「良いマンションがあったら検討してみようかな」というぐらいのモチベーションだと月額課金はハードルが高い。
今後はこの違いを踏まえて、顧客への訴求をしていきたいと思っています」(針山氏)。
不動産売買は人生における重要なマイルストーンのひとつだ。彼らの挑戦で選択肢が増えることを期待したい。
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