
シンガポールを拠点とする個人金融ポータルMoneySmart.sgは、SPH Media Fund主導のシリーズAラウンドで280万シンガポールドル(200万米ドル)を調達したと発表した(編集部注:原文掲載10月6日)。
ベンチャー投資会社Convergence Ventures、OPT SEA、Golden Gate Venturesも同ラウンドに参加した。
Alfred Chia氏(SingCapitalのCEO)、Mohammad Ismail氏(PropnexのCEO)、Alan Lim氏(Propnex取締役)、Day Lynn氏(バケーションレンタルポータルサイトHomeawayのアジア太平洋統括)やZopim の創業者 Roystan Tay氏とKwok Yang Bin氏(シンガポールベースのライブチャットアプリ設立者)など数々の会社のトップや著名な起業家も参加している。
MoneySmartの計画としては、調達した資金をコンテンツ強化のためのチーム編成と共に、核となるデベロッパーのチームを設立していく方針である。
また、インドネシアやシンガポールへのマーケティング強化や新たなマーケットへの進出にもつながる。それ以上に、将来的にはアプリのローンチにもつながっていくだろう。
MoneySmart.sgの設立者兼CEOのVinod Nair氏は、次のように述べた。
私たちは、来年半ばまでにフィリピンやタイ、香港への進出を検討しています。
フィリピンにおけるインターネット普及率は香港と比べるとまだかなり未成熟で、タイは中間にあると同氏は強調した。
資金は12~18ヶ月にわたってもたらされる見通しである。その後、同社はシリーズBラウンドの資金調達を行う計画だ。
SmartLoans.sg は2009年9月に設立したサイトで、シンガポールのユーザは住宅ローンの比較や申し込みができる。Nair氏はその後、クレジットカードや保険パッケージ商品の比較ができる独立したニッチなサイトをいくつかローンチした。
彼は、2012年8月にMoneySmart.sgをパーソナルファイナンスブログとしてローンチし、2014年5月には、すべてのサイトを1つのポータルに統合した。
銀行や保険会社との連携を通じて、MoneySmart.sgもまた、全領域をカバーする個人金融サービスを提供している。つまりユーザが保険プランだけでなく異なるクレジットカードや個人ローン、住宅ローンを比較して申し込めるのだ。
Nair氏によれば、年間100万シンガポールドル(70万米ドル)を超える収益の70~80%は個人金融サービスから、そして20~30%はPR記事のような広告からもたらされているという。
公式発表によると、MoneySmartは月間150万ページビュー数および50万人のユニークビジター数を誇る。
そのコンテンツのシンジケーションパートナーは、AsiaOne.com(SPH Media所有)、MSN.comまたYahoo!などのデジタルニュースサイトが含まれる。昨年、同社はインドネシアの同業ポータルを買収した。現在DuitPintarとして知られ、毎月50万ページビュー数閲覧されている。
幾多の難局を乗り切る
かつてe27の共同設立者であったNair氏は、午後の記者会見で過去の失敗と挑戦から学んだことを詳細に話した。
「単一の垂直型製品にだけ頼ることはできません」と初めてのスタートアップとなった不動産検索エンジンの失敗談を詳しく解説しながら同氏は述べた。「持続可能な(ビジネスモデル)でありたければ、多角化を図り、1つの製品に頼るべきではありません」
最初のベンチャーの失敗に動じないNair氏は、5000シンガポールドル(3500米ドル)の貯金全てを6年前にSmartLoans.sgの設立のために注ぎ込んだ。約1年半の間に、サイトを介して住宅ローンを始めるユーザで順調な売り上げの伸びを見せていたが、その後、不動産の売上げを著しく落とすきっかけとなった不動産の冷却化措置という障害にぶつかった。
私たちはもはやプラスのキャッシュフローではなくなっており、拡張の資金に当てようと数ヶ月にわたり築き上げてきたわずかな蓄えは、どんどん絞り取られていきました。ありがたいことに、NUS Enterpriseの全面的に支援してくれる人たちが私たちに、5万5000シンガポールドル(3万5800米ドル)の融資を提供してくれました。そのおかげで私たちは非常に厳しい苦難を乗り切ることができたのです。(Nair氏)
Nair氏はそれからより多くの収益の流れを生み出すためにサービスのポートフォリオを多様化しようと努め、MoneySmart.sgを始める前に、個人ローン、クレジットカードや自動車保険市場をターゲットにしたSmartCredit.sg、SmartInsurance.sgをローンチした。
私たちがブログを始めたのは、読者に情報を伝え、もっと頻繁に関わってもらいたいと思ったからです。結局のところ、彼らが決心した後には、誰も私たちのサイトに戻ってくる必要はありません。ですから、サイトの内容は新たな読者に接触するための素晴らしい方法になるだろうと考えたのです(Nair氏)
すべてが順風満帆というわけではなく、彼らがシードファンディングを獲得するのは大変だったことを彼は認めた。
私たちは非常に強い波に向かって泳いでいました。私たちのブログへのアクセスはほとんどありませんでしたから、ローンチした新たな商品のための営利的なパートナーシップを確保することができませんでした。金融機関は完全にオンラインではありませんでしたし、彼らはそれを強力なルートだとも考えていませんでした。(Nair氏)
50の投資家たちに売り込んだ後、Nair氏はGolden Gate Venturesという金脈を掘り当てた。
Golden Gate VenturesのVinnie Lauria氏は金融の先を思い描いていました。彼らは私の過去の失敗、そして私が3年間でなんとか乗り切り、良い点として実際にはいくらか利益を出したという事実を認識した唯一のベンチャーキャピタルでした。(Nair氏)
シードファンディングとしてGold Gate VenturesおよびNational Research Foundation(NRF)から58万9000シンガポールドル(41万3000米ドル)を調達すると、Nair氏は全サイトを統合し、それを個人金融ポータルMoneySmart.sgとしてブランド再構築を行った。
2014年にはシンガポールで成立したPDPA(個人情報保護法)の法律を最大限に活用することもできた。シンガポールは当時、銀行が顧客獲得の主な供給源を失い、やむなくオンラインで紹介を得ることに切り替えたのを目の当たりにしていた。Nair氏は言う。
スタートアップを経営することはサーフィンをするようなもので、海に出て、流れや向かって来る波に逆らって狂ったようにこいで、乗るに最高の大波を待つようなものです。
Nair氏はまたしっかりしたチームを持つ大切さも強調した。
結局のところうまく波に乗るには、ちゃんとしたサーフボードが必要です。それが私のチームです。私自身の力でここまで来ることはできませんでした。
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