赤字転落のテント屋を救ったのは「父の思い出」と「インターネット」ーー新しい働き方で変わる小さなビジネス

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インターネットやスマートフォンの普及につれて、企業単位でなく何気ない個人でも経済にインパクトを与える人たちが登場してきた。2017年に入ってからはインフルエンサーがライブコマース1配信で何万円もの売り上げをあげたり、クラウドファンディングで100万円以上を調達する個人もでてきている。

上田防水布店の息子、上田和貴氏もそんな新しい働き方を見つけた一人かもしれない。

現在26歳の上田氏とその兄上田祐輝氏はほぼ廃業しかけていた事業を引き継ぎ、インターネットと新しい視点を加えることでほぼゼロだった売上を月間400万円にまで引き上げることに成功した。では彼らはどのようにして事業を再生させたのだろうか?

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シートは窓に吸盤で貼り付ける

同氏が販売しているのは実家のテント屋である上田防水布店の技術を活かした遮光断熱シート。業務用テントの365日雨や風に当たっても破れずに日光を遮断してくれる技術や素材を活かして同製品を提供している。商品はオーダーメイドで注文ごとに福井の職人が手作り。価格は1枚5600円〜23000円とホームセンターで販売している類似商品よりは若干高めになっている。

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上田氏の実家は福井にある創業98年のテントやシートを制作している老舗の防水布店。主な商品の販売先は商店街の店で、業務用テントを店のサイズにあわせてひとつずつ手作り、さらに鉄骨も作って現場に取り付けしている。

2014年頃から時代の流れとともに商店街がシャッター街になり、メインのお客さんが減ってきてしまったことで上田防水布店がテントを作っても売れなくなってしまった。家族も苦しい状況に追い込まれた中、「全国に売れる商品」を作らざるをえなくなった上田氏は遮光断熱シートを販売することを思いついた。

「市場も縮小傾向で家業を継ぐことを考えていたというわけではなく、緊急だったのでなんとかしなければという思いだった」と同氏は当時を振り返る。

現在販売されている遮光断熱シートは20年前に西日がきつい子供部屋をみかねた上田家の父がテントの技術と素材を駆使して作ったもので、上田氏が何か売れるものを、と考えている際に20年間窓貼りっぱなしにしても使い続けられていたこのシートを思い出したのだ。

そしてここで彼が活用したのがインターネットだった。

当時大学生だった上田氏は2015年8月からコンサルタントの知人に紹介を受けた「ペライチ」というウェブサービスを利用してページを作成し、同商品を売り始めた。大学卒業後は好きだったギターを弾いて仕事をしながら、遮光断熱シートの販売も続けていた。当初は1、2個しか商品が売れず、暑さのピークシーズンも過ぎてしまい、10カ月程度は売り上げもない状況が続いたが、根気よく続けることで次の夏には売れ始めたという。

チラシは200枚配って1アクセス、ヤフオクは1週間で200アクセス

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上田家と職人のみなさん

売れない間はとにかく金銭的にも厳しかったので、とにかくお金をかけずに告知をしたそうだ。お金のない中で家族でノウハウを編み出した。

「使ってくれそうな西日の入る家を狙ってペライチのページに誘導するような『◯◯と検索!』みたいな紙を配ったんですけど1アクセスだったんです(笑。でもそれをヤフオクで売ったら1週間に200アクセス程度あって、インターネットの可能性を感じました」(上田氏)。

「今月絶対成功しないと」という家族の苦労と覚悟もあって、2016年の夏には月間30〜40万程度、そして2017年の7月度には400万円を売り上げた。父が1人で作っていた体制も近所の人にパートを頼み、家族を入れて5人体制へと成長した。

彼はその後、この経験をさらに多くの人に広げたいとペライチに就職したそうだ。

今後は遮光断熱シートだけでなく、自らのギタリストの経験と家業の技術を活かして楽器演奏などに使用するアンプカバーを海外展開することを目指している。が、上田家の直近の目標は「家族旅行に行くこと」なのだそうだ。

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