ノマドワークに適したカフェを探せるアプリ「Café Wifi」がバージョンアップ、カフェで座れる席を事前確保できる予約機能を限定公開

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Café Wifi には、渋谷近辺でも多くのカフェが登録されている。

筆者の周りでもカフェで仕事をする人が増えている。以前なら、まだオフィスを構える余裕など無いスタートアップがコワーキングスペースを使い、さらに、コワーキングスペースを使うほど社員のいないスタートアップは、カフェのスペースを使って事業を始める、というのが一般的な構図だった。しかし最近では、オフィスがあるにもかかわらず、カフェをハシゴしながら仕事をする人は少なくないし、WeWork の日本進出などを機に、コワーキングスペースの位置付けも変化しつつあるようだ。

かくいう筆者もオフィスがありながら、カフェで仕事をすることが多い。モノを書いたり考えたりするのに煮詰まりたくないし、仕事柄、一次情報にアクセスするために動き回ることは多くなる。初めて出かけた先で、電源や WiFi の備わった仕事しやすいカフェを見つけることには努力を強いられている方かもしれないが、そんな中で、目か鱗が落ちるようなアプリ「Café Wifi」に出会ったのは、およそ半年前のことだ。

ユーザは訪問したカフェでアプリを立ち上げてチェックイン、電源の有無などの情報、店の雰囲気を示す写真のほか、WiFi が備わっている場合は、実測した通信スピードもあわせて公開することができる。他のユーザがアプリを使って自分の居場所に近いカフェを探すと、ノマドワークしやすいカフェがスコアの高い順に表示されるしくみだ。

人気のあるカフェは、常に混んでいるというジレンマ

Café Wifi のチェックイン画面(左)と、限定公開された席を譲り渡す機能(右)

お客で混んでいるからこそ、「人気がある」という表現が当てはまるのかもしれないが、使い勝手がよく、便利なローケーションにあるカフェというのは常に混雑している。ノマドワーカーが多いと席の回転率が落ちるので、待ってはみても席は空くまでには多少時間がかかるだろう。このジレンマを解消してくれるかもしれない新機能が今週21日にリリースされたバージョン 0.9.42 から一部ユーザの間で使えるようになった。

新機能は、自分が今使っているカフェの座席を誰かに譲ることができるというものだ。この機能をオンにすると、そのカフェを使いたい人から何分後に到着するかの連絡を受けとることができる。これからカフェを使いたい人にとっては座席の予約機能として使え、座席を譲り渡す人は Apple Pay などで少額の対価を受け取ることもできる仕様だ。この機能はカフェのオーナーが活用することで、お店から潜在顧客に対する予約機能として提供することもできる。

本来お店のものである座席について、その予約権利をお店が介在しないところでユーザ同士が譲受・売買できる機能には若干の抵抗も残る。しかし、時代とともにカフェが果たす役割も変化していくだろう。カフェにはそれぞれ経営上の戦略があるのだろうが、都心部のチェーン店などで電源や WiFi が備わっていない店を見ると、運営形態が時代のニーズに追いついていない気さえする。ノマドワーカーが増え、客の回転率が落ちて経営を圧迫するというのであれば、新しい料金プランなりビジネスモデルなりを見出すべきかもしれない。

座席を譲り合える機能「Host」は、現時点では東京のみで使える招待制の限定機能だ。Host になっている人から招待をもらうか、Café Wifi のウェブサイトで Host にしてもらえるよう招待を依頼する。今後、Café Wifi の機能改善やコミュニティビルディングが進むのにあわせて、本機能は一般開放される見込みだ。

東京はスタートアップしやすい場所

Café Wifi 運営元 Remote Work 共同創業者、Ben Guild 氏(左)と Philip Bergqvist 氏(右)
Image credit: Masaru Ikeda

Café Wifi を運営する Remote Work は、ボストン出身の Ben Guild 氏とスウェーデン出身の Philip Bergqvist 氏の2人の連続起業家が設立。昨年12月にローンチし、今年 Open Network Lab の Seed Accelerator Program 第14期に参加・卒業後も、東京のカフェをハシゴしノマドワークしながらサービスの開発を続けている。

当初、Open Network Lab のプログラムに参加するために来日したのかと思いきや、二人ともそれ以前から日本に滞在し、起業の準備を進めていたとのこと。東京を選んだ理由は、東京がスタートアップしやすい場所だからなのだそうだ。

何よりも食べ物がおいしい。街はコンパクトにまとまっていて、何でも揃っていて便利だ。発展した都市であるにもかかわらず、サンフランシスコやニューヨークやロンドンよりも生活費は安い。

確かに、バンコクとかほど安くはないけれど、便利さと生活費の安さが両立している。でも、やっぱりナンバーワンの理由は、食べ物が美味しいことかな(笑)。(Bergqvist 氏)

一方で、Guild 氏は外国人起業家の視点から、東京がイマイチな点についても指摘する。

Remote Work はノマドワークしましょう、と言っている会社なのに、登記のためのオフィスを持たなければならなかった点は残念。日本人なら登記住所を持てば済むのかもしれないが、外国人の場合、役人がオフィスにチェックにやってくる可能性があって、そこに仕事ができる環境を作っておかないといけない。馬鹿げているよね。

ただ、会社を作るまでのプロセスはすごく面倒で難しいけど、一度作ってしまえば、スタートアップをする上で東京は便利な街だ。一度会社を作って要領がわかったので、新たに外国人起業家が日本でスタートアップしたいという人が来たら、その人を手伝ってあげることさえできるだろう(笑)。(Guild 氏)

Remote Work のチームは Open Network Lab の Seed Accelerator Program に参加した際シードマネーの投資を受けているが、現在は地道に機能改善やコミュニティビルディングを進めている段階として、それ以上の積極的な資金調達には動いていない。マーケティングも決して積極的に展開しているわけではないが、これまでに世界2,000都市の10万軒以上のカフェの情報が集まっているとのこと。半年前に比べると、情報量は約30倍にまで増えたことになる。

今後は機能改善はもとより、カフェにとってのマーケティング手段となるような機能も追加し、現在の iOS 版に加え、Android 版のリリースも計画しているという。東京には Google Campus や Station F は無くても、街のカフェにノマドワークに勤しむ外国人起業家があふれるようなれば、それはシリコンバレーやテックシティなどにはない、スタートアップ・ハブとしての新たな姿になり得るのかもしれない。

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