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2020年までの月面着陸を計画するispace——宇宙スタートアップが展望する未来とは?【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


我々スタートアップ創業者は、ムーンショットについて話をしたがる。ムーンショットとは、大きな夢を持ってハードな問題を解決しようとするスタートアップ、そして、成功した暁には世界を変えるであろうスタートアップだ。

ムーンショットという言葉はたいてい比喩的な意味で使われるが、今日は文字通りのムーンショットを紹介したい。ispace の創業者兼 CEO 袴田武史氏は、今後2年のうちに商業ベースでの月への着陸を計画している。ispace は月面着陸機と月面ローバーを開発中で、 JAXA と提携し、これまでに9,000万米ドル以上を調達した

素晴らしい対話だったので、お楽しみいただけると思う。

ispace 創業者兼 CEO 袴田武史氏
Image credit: ispace

Tim:

ispace は日本で最も野心的なスタートアップだと思うのですが、何をしようとしているか説明してもらえますか?

袴田氏:

本当ですか? ありがとうございます。ispace は、商業ベースで月への交通サービスを提供します。人々が宇宙で暮らし、活動する時代を先導したいと考えており、2020年にローバーを月面に着陸させる予定です。

Tim:

そのあと8年間は年に2回のミッションを計画されていますね。政府のプログラムとしては、積極的な計画だと思います。一社のスタートアップが、どうやってそのようなことを実現できるのですか?

袴田氏:

政府の宇宙ミッションは5〜10年かかりますが、それだけかける必要はありません。技術は実現可能です。ハードな物理課題やエンジニアリングの問題は、ほとんど既に解決済です。我々の仕事のほとんどは、利用可能な最良の技術の周辺でシステムを設計し、それを組み立てることです。

Tim:

簡単なことにように話されますね(笑)。2020年に月にローバーを着陸させた後は、次は何をされるんですか?

袴田氏:

究極の目標は月に採掘プラントを建設することですが、最初の数セッションで運ぶのは30kg程度の荷物です。

ispaceランダー(月着陸船)のコンセプトモデルイメージ
Image credit: ispace
Tim:

地球で採掘するよりは費用の安くない月で、何を採掘するんですか?

袴田氏:

水です。水を水素と酸素に分解すれば、水素をロケット燃料に使えます。宇宙に燃料ステーションを作ることで、宇宙の交通手段を変えることができます。

Tim:

これは、近年抱いておられる夢ですね。実際、2010年には White Label Space という会社を設立されています。

袴田氏:

その通りです。White Label Space は、Google Lunar X Prize に挑むべく、ヨーロッパの宇宙エージェンシーに勤務する人々と始めました。残念ながら、2012年末までに資金が不足し、そのプロジェクトを日本に移して「HAKUTO」と改称しました。

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Tim:

HAKUTO は最終的に、Lunar X Prize に入賞したのですよね?

袴田氏:

大賞に入賞したスタートアップはありませんでしたが、HAKUTO は2014年に中間賞を受賞しました。我々は自分たちの技術を専門家集団に証明しました。たいていの人にとって、月面ローバー技術に特化したものの実用性を評価するのは難しいことですから、この検証を行うことは我々にとって非常に重要でした。

Tim:

HAKUTO は、日本の個人と企業の両方のスポンサーから、大変多くの支援を受けました。非常に長い間それに取り組んだわけですから、本当にやりがいを感じるものだったに違いないでしょう。

袴田氏:

我々ははじめからスポンサーシップで資金調達や注目を集めようとしていたわけですが、当初は大変困難を極めるものでした。我々は着実な進展を見せることができ、多くの人々がそのスピリットに関心や支援をもたらしてくれましたが、実際にスポンサーを募るのは中間賞を獲得するまで難しかったのです。

Tim:

それはよくあるケースだと思いますね。企業は、すでに成功しているものに対してスポンサーしたがるのが普通です。

袴田氏:

そうですね。しかし、我々の技術を理解してくれる人はほとんどいなかったので、我々にとっては特に難しいものでした。

新経済サミット2015に登壇した袴田武史氏(右から二人目)と月面ローバー
Image credit: Masaru Ikeda

Tim:

ビジネスモデルについて話しましょう。月に 30kg のものを届けるには、いくらかかるのでしょう?

袴田氏:

1kg あたり数百万ドルといったところですね。高額に聞こえるでしょうが、政府がミッションを立ち上げるのに比べれば、ずいぶんと安い金額です。

Tim:

それでも高額ですね。誰がそれだけの金額を払うのでしょう?

袴田氏:

当初いくつかのミッションはおそらく政府クライアント向けのものになり、科学探究や月関連の経済をどう発展させるられるか理解することに特化したものになります。

Tim:

鉄製造からコミュニケーションや交通まで、あらゆる月関連経済に対する袴田さんのビジョンには共鳴しますが、本当に実現できるのでしょうか? 政府の宇宙プログラムは何十億ドルもの費用を投じており ROI を気にする必要もありませんが、ispace は民間会社です。技術的に可能かというだけでなく、黒字化すると考えておられますか?

袴田氏:

そうなると信じています。長期的に見れば、民間会社は政府プログラムよりも、宇宙開発ではるかに力を持った存在になると考えています。将来を予測するのは難しいですが、我々の中長期目標は衛星インフラです。我々の衛星に対する依存度は増しており、地球にある資源より月にある資源を使って衛星を提供した方が、はるかに費用を安く抑えることができるでしょう。しかし、長期的な商業ベースでの可能性を語るには、まだ早すぎると思います。


向こう2年のうちに、月にローバーを着陸させる ispace の計画は現実的なのだろうか? いや、もちろん、そんなことはない。このスケールの野心的なプロジェクトが、現実的だなんてことはあり得ない。しかし、可能だろうか? 正直な話、私にもわからない。今のところ、我々にできることはそうなること、そして、ispace チームの幸運を祈ることだ。

しかし、ispace をスタートアップとして見れば、彼らの前には大きな困難が立ちはだかっている。最高のスタートアップ創業者ですら、解決できないような代物だ。ispace のスタートアップとしての最大の挑戦は、顧客が誰であるかわからない、あるいは、解決しようとしている問題が正確には見えていない、というものだ。彼らはこれまで自分たちが創造している価値を定義できずにやってきたし、民間であれ政府であれ、1kg あたり数百万ドルもの費用を払って月に何かを送り届けたいと考える潜在顧客もいない。

公平に見て、袴田氏と ispace はこの問題を理解していて、袴田氏は、最大の長期的課題が月関連経済をどうやって作り出していくか、ということだと語っていた。

物事が動くのは速い。この問題を解くのに ispace のチームに残された時間は数年ほどだ。彼らは現在の資金で次の2つのミッションをまかない、月にローバーを着陸させることになるだろう。今のところ、それが皆が見守っている ispace の取り組みだ。

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日本の教育システム変革で、AIがカギを握る理由とは?——atama plus創業者の稲田大輔氏に聞く(後編)【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


前回からの続き>

Tim:

日本の学校には、そのような決断をする上で、どの程度の自由があるのでしょうか? 学校で何を教えるかについては、文科省がかなり細かいレベルまで決めていますよね。日本の中学一年生は皆、今週日本中の他の生徒と同じ数学のレッスンを学んでいるといった具合に。

稲田氏:

公立学校には厳格な標準ルールがありますが、私立学校では自ら教えるのに良いと判断した教材を使うことができます。

Tim:

過去約100年間にわたって、教育のイノベーションやディスラプションが難しかった理由は何でしょうか?

稲田氏:

全ての親には教育の体験があります。彼らには、そのイメージを変える必要がないのです。例えば、スマートフォンについて言えば、親たちは(自分たちが子供の頃)スマートフォンは持っていなかった。今は親たちもスマートフォンを持っていますが、当時はそうではなかった。自分たちがそうだったから、そのイメージを変えようとはしないのです。

Tim:

つまり、世代ごとにそういうものはありますよね。自分たちが子供の頃のイメージを引きずっていて、「これぞ教育のあるべき姿」のような。

稲田氏:

そうです。その点、塾に関して言えば、そのビジネスモデルは常に変化してます。だから塾市場では、教育をイノベートするのが比較的容易なのです。

atama plus 創業者兼 CEO 稲田大輔氏

Tim:

塾業界に競争があることからも納得がいきます。生徒たちは成果ベースでどの塾に行くかを選びますが、小学校や高校はそうではない。つまり評判の良い私立学校は複数存在しても、それらの学校同士が(塾同士のように)直接的な競合になることはない。atama plus など、エドテックで成功した多くの企業は学習ツールを提供していますが、それは全員が同じものを学ぶ教育フォーマットに則っていて、生徒たちがそのような環境で学習するのを支援している。

その第一歩は、本を全て PDF 化して、講義をビデオ化するというものですね。これでは実のところ、何も変わっていません。教育のフォーマットが変わっただけで、生徒たちにツールを与えることに関して言えば、次世代のそれは「atama+」のようなテクノロジーを効果的な学習のために使いこなすべきでしょう。次の一歩は、ただ聴講しているだけの学習の構造を変えることになると思いますが、そのような変化は日本で起きているでしょうか?

稲田氏:

そのように努力しています。我々は学習の構造を変えたいのです。教育の質を向上させるために、我々は教育ツールだけでなく、教える能力、指導方法、そういったスタイルのコーチングなど、教育に関する全てを提供しています。

Tim:

しかし、atama plus のお客は塾である限り B2B2C をやっていることになり、その関係性から言って、atama plus のミッションは常に塾を支援するというものになりますね。生徒と直接オンラインで繋がるとか、何か変えようとしていることはありますか?

稲田氏:

新しい構造の塾を始めたいと考えています。あるクラスには15〜20人の生徒がいて、全員がそれぞれ我々の仕組みを使って学習していますが、コーチもいて、コーチはコーチングだけに特化しています。コーチは生徒たちを励ましますが、教えはしません。教えているのは我々の AI であり、つまりテクノロジーが教えることに、人間のコーチはコーチングに特化しているのです。これこそ我々が作りたいモデルであり、塾市場の最大の課題は教師の不足です。だから、我々は塾と共に新しいモデルを作りたいんです。

Tim:

なるほど。説明いただいたモデルは非常に面白い。物理的に誰かがいることは重要で、しかも、同じ部屋に存在していることが皆にとって大変重要、とおっしゃっているように思います。

稲田氏:

そうです。物理的な場所と人間のコーチは非常に重要です。

Tim:

どうしてなんでしょう?

稲田氏:

消費者にオンラインプログラムを提供すれば、簡単に学習はできますが、それはトップの生徒たちのためだけになると思うんです。トップの生徒たちは自分が理解していない部分や弱点をわかっている。でも、大多数の生徒は弱点がわかっていない。だから、コーチが彼らをサポートするんです。友人と学習した方がいいですしね。

Tim:

なるほど。稲田さんがおっしゃる理想的な状況とは、教えるのを担当し学習内容を決めるのが人工知能、そして、何を学習し集中すべきか、生徒たちが決められやすいようにするのが人間知能というわけですね。

稲田氏:

しかし、それに加えて、我々の AI は、コーチが正しいタイミング、正しいコメントで生徒たちを励ますようにサポートします。コーチングに関する全てをサポートするんです。

Tim:

いずれは、全てのことを AI で対応できるようになると思いますか? あるいは、人間のコーチや教師は常に必要でしょうか?

稲田氏:

コーチや人間の教師は常に重要でしょうね。

Tim:

私もそう思います。理由はわかりませんが、数千年前から教育は常に一対一であったし、Coursera や iTunes を使った講義など成功したプラットフォームや素晴らしいリソースはありますが、こういったツールを使って効果的に学習できているのは、全体の数%の人々にとどまっているようです。

稲田氏:

トップの生徒たちでしょうね。

Tim:

そうです。だから、常に人間との対話が必要になるでしょう。

稲田氏:

我々は日本の問題を変えたいのであって、トップの生徒たちだけを助けたいわけではないんです。

Tim:

そうですね。AI は世界中で今やホットな話題になっているので、日本の AI についても質問させてください。AI 領域でなされている、特にアメリカや中国で今日行われている全ての研究と比べて、日本の AI 研究は遅れているんでしょうか?

稲田氏:

それは、どんな AI かによると思います。AI には非常に多くの種類があります。

Tim:

確かにそうです。

稲田氏:

一般的には、AI のソフトウェアに関して言えば、アメリカが最も先を行っています。AI のハードウェアであれば、日本は優位なポジションを取りつつあります。

Tim:

ハードウェアというのは、GP のようなものを指していますか?

稲田氏:

ロボットです。

Tim:

なるほど、AI ロボットですか?

稲田氏:

そうです。

Tim:

確かにそうですね。非常に多くの企業が自社の AI ライブラリをオープンソース化しているので、Google Cloud や Amazon 上で人工知能コンピューティングが可能になっています。AI がオープンソース化されるとき、AI スタートアップが市場を作り、それを守る上で最良の方法は何でしょうか?

稲田氏:

我々は問題に注力しているのであって、AI には注力していません。テクノロジー、オープンソース化されたテクノロジーは使うこともあります。領域によっては、サードパーティーのテクノロジーを取り入れることもできますが、問題に注力したいのです。

Tim:

つまり、最良の方法は AI をデータベースのようなシンプルなツールとして捉えるということですか?

稲田氏:

はい、そう思います。

Tim:

なるほど。そうやって、専門知識や自らのイノベーションの周りでビジネスを築けばいいのですね。

稲田氏:

ええ、そう思います。

Image credit: atama plus

Tim:

長期的に見ると、日本では巨大な市場が築かれることになると思います。でも、グローバルなエドテック企業はほとんどいません。特定の学校のシステムや、特定領域のクライアントに特化していることが多いようです。atama+ は世界展開するのでしょうか、あるいは、教育やエドテックスタートアップは、ローカルや国内の市場でやるべき背景があると思われますか?

稲田氏:

我々は今のところ日本市場に特化していますが、追って国外にもトライしていきたいと考えています。

Tim:

エドテックスタートアップが新しい市場へ進出するのが難しいのは、なぜだとお考えですか?

稲田氏:

教育はローカルビジネスだからです。市場によって、コンテンツもカリキュラムも違ってきます。

Tim:

なるほど。つまり同じ方法で学習できるかもしれないが、学習すべき内容に必要なものが市場によって違うということですね。確かに市場によって顧客も違ってくると思います。わかりました。では、話をまとめに入る前に、私が「魔法の杖」と言っている質問をしたいと思います。私が稲田さんに魔法の杖を差し上げて、日本で何か一つ変えたいことを言ってほしいとお願いしたら、教育システム、法律システム、リスクについての考え方、何でもいいです。日本のスタートアップのために良くなることを変えるとしたら、何を変えたいと思いますか?

稲田氏:

日本のスタートアップは多くありませんね。スタートアップ市場に対する情報が不足しているからです。三井物産で働いていた頃は、日本のスタートアップの現状について知りませんでした。ほとんどの人たちはスタートアップエコシステム、会社の作り方、人をリクルートする方法を知リません。

Tim:

彼らはそれが可能だということを知らないんでしょうか、それとも、それを実現するための一つ一つの方法を知らないだけなのでしょうか?

稲田氏:

考え方が古いんでしょうね。ほとんどの人は「大企業を辞めて新ビジネスを始めるのはリスクが高い、難しい」と考えますが、現実はそんなに難しいわけではありません。ですから、リアルな情報やスタートアップエコシステムで起きていることを皆が共有すれば、そういった困難解決の後押しにつながるでしょう。

Tim:

もっと多くの情報、もっと多くのユースケースがあればいい?

稲田氏:

そうですね。

Tim:

こういった大企業の人々に、会社を辞めて自分の会社を始めた、稲田さんや寺田さん(Sansan 創業者)のような事例を見てもらうべきですね。

稲田氏:

起業家を高校に呼んで、スタートアップのリアルな情報を生徒たちに共有してもらうといいと思うんです。人々は生徒の頃から、昔ながらの考え方を始めるので。

Tim:

つまり、大企業には入るまでに…というのでは遅いと?

稲田氏:

そう思います。

Tim:

高校生の頃ですかね?

稲田氏:

中学校か高校でしょうね。

Tim:

なるほど。その頃には、生徒たちはどのような仕事に就くかや、将来の選択肢について考え始めますからね。

稲田氏:

そうです。日本での起きているのは、生徒たちが成人と連絡を持っていないことです。生徒たちが知っている成人は、教師、両親、塾の教師くらいです。世界でより多くの情報やリアルな情報に連絡を持っていなければ、両親や教師と同じような考え方をしてしまう。もちろん、こういった大人たちはスタートアップに関する経験はありませんから、生徒たちは「大企業に行って、その仕事を続けなさい」と言われる。そして次第に、昔ながらの考え方になっていくんです。

Tim:

なるほど。同様に、前の世代のイメージが現世代に引き継がれている限り、教育も変わりませんね。

稲田氏:

はい。生徒たちは、教師や両親以外の人たちとも話をする必要があります。

Tim:

確かにそう思います。稲田さんが出会った中学生や高校生では、まだ自信を持っていますか? もしそうなら、「私はこれを作れる、そして、皆が気に入ってくれる」と自信があって、歳をとるにつれ、自信が薄らいでいきますよね。

稲田氏:

ええ。ですが、彼らならできると思います。

Tim:

えぇ、素晴らしいですね。稲田さん、今日はお話しいただき、ありがとうございました。

稲田氏:

ありがとうございました。


人工知能は私が好きな話題の一つだが、これまで常に客観的に話すのが難しいものだった。人工知能が何かを正確に定義するのが難しいからだ。あらゆる統計や適応行動がある種の人工知能や機械学習であると信じさせようとするマーケッターがいる一方で、ゴールポストを遠くへ遠くへと動かし続けるアカデミアの人たちもいる。コンピュータが痛みを学習したり、作曲したり、チェスや碁を打ったりする時、そういったマシンの行動に本当の知能の存在は見受けられない、と人々は主張する。

人工知能を定義するのが難しい時期があるのは、知能そのものを定義するのが難しい時期があるからだろうと思う。心の底からは理解していないのだ。我々は知能について話をするのが好きだ。多くの知能を持っていると主張する人は、知能の量を計るテストを開発したがるが、知能が何かという点については彼らに同意できないように思う。

さて、私は今日、あなたに全てを理解してほしいと思ってはいないが、自らそうしようとするなら、スティーヴン・J・グールドの著書「人間の測りまちがい(The Mismeasure of Man)」を手に入れるべきだ。我々が知能と位置付けているものと、なぜ、そんなに知能を気にするかについて、何ヶ月も考えさせられるような話題を扱った素晴らしい本だ。

知能は複雑で抽象的だが、教育、そう教育は私たちの目の前にある、そして目で見ることができるプロセスだ。教育の場には常に人間が必要だという稲田氏の指摘は、他のほとんどのエドテックスタートアップの主張とは意見を異としていて興味深い。しかし、お分かりの通り、稲田氏は正しいと思う。教育の重要性は、事実やスキルを若い頭脳に注ぎ込むことに他ならない。スキルも言うまでもなく重要だが、それと同じかそれ以上に重要なのは、我々の教育システムが我々の社会を形作っているという事実だ。我々は皆、自分たちの国の歴史に対する知識や理解だけでなく、共有している体験や困難と共に成長している。我々の教育体験は我々が何であるかということの多くを占め、それゆえ、教育はディスラプトするのが難しいのかもしれない。

教育システムは、効率性向上やコスト圧縮によって改善されるとは限らない。それはおそらく、一対一で学習を教わることや教室で一緒に学習することについて、その非効率性やそれへの抵抗のことを言っている。「数学は大変だ」と互いに不平を言い合うことは、それもまた価値を生み出す。我々が最も覚えているのは人間同士の対話や非効率な部分であり、そうやって自分を個人ではなく社会の一員として自分を定義するようになる。

教育、あるいは、人工知能や人間知能について考えのある読者の声を、稲田氏と私は聞きたいと思っている。disruptingjapan.com/show112 を訪問し教えてほしい。このサイトでは、投稿の情報源のセクションには、稲田氏と私が話した多くのことに関するリンクやメモを参照できる。

お聞きいただき、ありがとうございました。また、日本のスタートアップに興味のある人に、この番組のことを教えてもらえると幸いです。Tim Romero でした。Disrupting Japan をお聞きいただき、ありがとうございました。

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日本の教育システム変革で、AIがカギを握る理由とは?——atama plus創業者の稲田大輔氏に聞く(前編)【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本の最も成功した起業家に率直な話を伺う「Disrupting Japan」にようこそ。私は Tim Romero、お聞きいただきありがとうございます。

今日は、人工知能と自然知能について話をしたいと思う。実際のところ、我々は自然知能、そして、テクノロジーを改善する手段として、人工知能の活用について話をしようとしている。教育は、ディスラプションを最も必要としつつ、最も抵抗の強い分野だ。このことを説明できる因果の事例はおそらく少なくない。教育にディスラプションが必要なのは、我々の生活のほとんどの側面が変化したにも関わらず、教育は長くの間、変化させることが難しいものだったいうことだ。とはいえ、この100年間で、教育は日本でのみならず、世界中で変化してきた。

今日は、教育の変化の理由、そして我々がそれに対応して何ができるかについて話したい。atama plus 創業者兼 CEO 稲田大輔氏を紹介しよう。彼は人々の学習を支援できるより良い方法を見つけたと確信し、三井物産での長年の有望キャリアを後にした。今回のインタビューで、稲田氏と私は塾について話すが、日本国外の人々のために塾が何なのか、イノベーションや教育に重要となってくる理由について説明しておくべきだろう。

塾はよく cram school と訳される。西洋に似たようなものは無いが、日本やアジアでは一般的だ。塾は民間会社が運営する学校で、日本の高校生が塾に通うのは、通常の学校授業の終了後、週末、休日だ。塾の目的は、高校生が大学入試で高得点を取れるよう支援すること、また中学生対象の塾であれば高校入試で高得点を取れるように支援するというものだ。しかし、塾は民間企業であって、上場している会社さえある。生徒の獲得に向け激しくしのぎを削り、生徒らがテストでどれだけの成果を出せたかを元に評価される。したがって、塾が新しいテクノロジーを試し、日本における教育イノベーションの多くが塾に焦点を当てていることは不思議ではない。

これで背景がお分かりいただけたと思うので、稲田氏との対話はより意義深いものとなるだろう。彼は三井物産を離れる決断をしたときに直面した困難についても触れ、スタートアップシーンに繋がっていない人がどうやって共同創業者を見つければいいかについて、実用的なアドバイスをくれた。しかし、私が話すより稲田氏はもっとうまく話をしてくれるだろう。さぁ、インタビューを始めよう。

atama plus 創業者兼 CEO 稲田大輔氏

Tim:

というわけで、教育用の AI を開発する atama plus の稲田大輔氏に来ていただきました。今日はありがとうございます。

稲田氏:

来社いただき、ありがとうございます。

Tim:

ところで、エドテック用の AI というのはボヤッとした表現で、それを手がける会社も多くありますね。atama plus が何をやっているか、ご説明いただけますか?

稲田氏:

日本の高校生や中学生に AI プログラムを提供しようとしています。ビデオ講義、演習のほか、熟練度、実績、考慮レベルなど生徒のデータを分析するテストで構成されています。

Tim:

なるほど。どのような科目をターゲットにしていますか? 数学、外国語、歴史など?

稲田氏:

今のところは高校生向けに数学コンテンツを提供していますが(編注:取材時)、他の科目も準備中です。英文法や物理など新プロダクトをローンチする予定です。

Tim:

お客さんについても教えてください。現在は誰が「atama+」を使っているのですか? 政府、塾、それとも大学?

稲田氏:

我々のビジネスモデルは B2B2C で、塾を通じて生徒がお客さんになります。塾という言葉に耳慣れてらっしゃるかわかりませんが。

Tim:

Disrupting Japan の海外のリスナーにとっては、prep school(予備校)という訳では、cram school(塾)が持つ利点の強みを表現しきれていません。生徒に関して言えば、多くの日本の生徒たちは、学校授業の後に塾へ通い、大学入試に向けた勉強に臨むのですよね。

稲田氏:

高校の最終年度には生徒の約70%が学校授業の後に塾に通い、中学三年生の約70%が塾に通っています。塾のコンセプトは、日本で大変人気があります。

Tim:

そうですね。後ほど、イノベーション、教育、エドテックについても話したいんですが、私が日本で面白いと感じたのは塾がイノベーティブになろうとしている点なんです。塾は互いにに競争する民間企業ですね。高校や大学などと違って、教育に新しいテクノロジーを取り入れようとしているようですね。

稲田氏:

そうです。ですから、我々は塾とともに教育をイノベートしたいんです。

Tim:

エドテックや教育用の AI に話を進める前に、稲田さんについて少し話をしたいと思います。稲田さんのこれまでをみてみると、よくいる起業家とは生い立ちが違ってらっしゃるようですね。東大を卒業し、エスタブリッシュで尊敬の念を持って見られる三井物産で11年間も働かれた。どうして、三井物産を離れ、スタートアップを創業されたんですか?

稲田氏:

三井物産時代には、ブラジルに5年間赴任しました。私は、三井物産で教育事業を始めたのです。まず三井物産には教育事業が無かったので、日本最大の教育会社であるベネッセとジョイントベンチャーを設立し、ブラジルで教育事業を始めたのです。日本の教育ノウハウを日本からブラジルに持ち込むというものでした。

Tim:

うまくいきましたか?

稲田氏:

残念ながら、財務状況は良くありませんでした。三井物産はこの事業の会社を閉じ、私はブラジルで再び新たな教育事業をスタートさせました。

Tim:

三井物産とですか?

稲田氏:

三井物産とです。実際には、ブラジルのエドテック企業に出資し、私はそこで働いていました。

Tim:

では、三井物産を離れ、atama plus を始められたきっかけは何ですか?

稲田氏:

日本に帰国後、三井物産の社内で教育の新規事業を立ち上げようとしたのですが、大企業の中で教育をイノベートするのは困難で、スピードが遅かったのです。そこで、自分で一から作った方が良いと考えました。

Tim:

私も多くの日本企業と仕事しているので同意しますが、その点について話をしましょう。スタートアップもいれば、本当に大きな企業もいるわけですが、そこで問題になるのは、クリエイティブでイノベーティブなアイデアが無いことではない。素晴らしいアイデアを持った人は多くいるものの、人々が決断しそれに基づいて行動するよう、指揮系統にアイデアを上げることが難しいのです。稲田さんは、三井物産でも同じような体験をされましたか?

稲田氏:

伝統的な大企業で仕事を続けていたら、私には他の大企業で仕事する選択肢は無かったでしょう。しかし、一から作ったスタートアップと比べると、まさにそこから始められるわけですから、それはもっとスピーディーでクリエイティブになると思いました。

Tim:

家族は、大企業を辞めてスタートアップを始めることに協力的でしたか? なぜなら、東大、三井物産と、明確なライフスタイルの道のりを歩いてこられて、そこからスタートアップに参加するというのは極めて大きな変化だからです。多くの人を驚かせたに違いないでしょう。

稲田氏:

はい。驚かせてしまいましたが、私にとっては夢を実現することの方がもっと重要だったのです。

Tim:

ご結婚はされていますか?

稲田氏:

いいえ、独身です。

Tim:

それなら、決断は比較的しやすいですね。

稲田氏:

そうですね、そう思います。共同創業者と atama plus を始めてからは、リスクが大きいとは考えなくなりました。

Tim:

三井物産で11年働いた後、共同創業者とどのように出会ったんですか?

稲田氏:

彼らは大学時代の友人たちです。中国でリクルートの CEO をしていたビジネスで最強の友人、同じ授業で学んだエンジニアリングで最強の友人を呼び寄せました。

Tim:

ということは、東大の同窓会のようなところで出会ったということでしょうか? あるいは、卒業から10年ぶりに連絡を取ったとか?

稲田氏:

事業担当の共同創業者は、大学の頃からいつも新事業を立ち上げることの可能性について、彼と話をしていました。エンジニアリング担当の共同創業者は、非常に多くの時間を費やして説明し、彼に決断してもらいました。

Tim:

それは重要なことだと思います。若いスタートアップ創業者、特にまだ大学に在籍するような20代前半の創業者の多くの人にとって、ネットワーキングしたり共同創業者を見つけたりするのは容易だからです。大企業で働いていて起業したい人の多くは、最大の困難の一つは共同創業者を見つけることだと言います。

稲田氏:

大学にいた頃は、起業の可能性について話をしていたものの、その議論をやめました。私は三井物産が好きで、共同創業者はそれぞれ(在籍していた)リクルートやマイクロソフトが好きでしたが、彼らと再び議論を始めました。

Tim:

つまり、あれから10年経って「ほら、大学の頃に話していたこと覚えてる?」みたいな?

稲田氏:

そうそう、時が来たのです。

Tim:

それで、彼は「そうだね、やろうか」と言った?

稲田氏:

11月に(現在の)COOと話をし、1ヶ月間議論を続け、彼の参加が決まりました。マイクロソフト出身の CTO は、1年間にわたって話を続けました。

Tim:

なるほど。

稲田氏:

CTO となった彼には家族がいて、子供が2人いました。彼に時間が必要だったのは、奥さんから承認を得ることが大変難しかったからです。彼は奥さんを説得する必要がありました。

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Image credit: atama plus

Tim:

以前、Disrupting Japan に来ていただいた Sansan の寺田さんも前職は三井物産でした。今では、三井物産出身のスタートアップ創業者は多いんでしょうか?

稲田氏:

いえいえ、そんなことはないです。

Tim:

コミュニティのようなものがあるわけでは?

稲田氏:

三井物産出身の創業者たちがいて、連絡があることは事実ですが、その数はコミュニティと言えるほどではありません。

Tim:

まだ数は少ない?

稲田氏:

そうですね。

Tim:

なるほど。三井物産の同僚の人たちは協力的ですか? 今でも三井物産と仕事していますか?

稲田氏:

定年退職前に三井物産を離れる人は多くありませんが、彼らは大変協力的です。

Tim:

それは素晴らしい。将来スタートアップ創業を考えている大企業で働く人たちにアドバイスをもらえませんか?

稲田氏:

三井物産で仕事していた時、一から新会社を作るのは大変難しいと考えていました。リスクをとる必要があったからですが、今では、もちろん困難ではあるのだけど、さほど大きな困難ではないと理解しています。誰でも挑戦できることだけれども、大企業で働いていた人にとっては一歩踏み出すのが大変なんだと思います。。

Tim:

つまり、人々は実際の大変さよりも、さらに大変だと考えてしまっていると?

稲田氏:

そう思いますね。

Tim:

なるほど。それは、たいていのことに言えますね。人々が心配しすぎている。そのほかにも、大企業と違ってスタートアップで働く際の大きな違いとしては、スタートアップは目の前に今ある問題に集中する傾向があるということでしょう。大企業はあらゆる可能性に対して計画したがる。

稲田氏:

そうですね。特に今はそうです。でも、現在では5年間や3年間を計画することはあまり意味がない。今、問題を解決する必要があるんです。それもまた、私が学んだスタートアップと大企業の大きな違いです。

Tim:

えぇ、私もそうです。計画することは安全だけど、行動することはリスクだと思います。AI について少し話をしましょう。atama+ は AI を使っていますが、どのようなことをしているのですか? 何を分析し、カスタマイズされた学習体験を作り出すために何をしているのでしょう?

稲田氏:

我々の生徒たちは、タブレット内のアプリで勉強をします。そして、そのプログラム、私は生徒たちが何を完全に理解していないことにトライします。ビデオ講義、演習、テストなどで構成される、パーソナライズされたカリキュラムを作るのです。

Tim:

例えば、だいぶ前からあるフラッシュカードタイプの復習支援ツール、そういうものはかなり前からありますが、atama+ は(ユーザによって)異なるビデオを引き出し、生徒毎に完全に新しい講座を作るわけですか?

稲田氏:

そうです。しかし、我々はたくさんのコンテンツを持っています。ビデオ講義、2つのテストなど、多くのコンテンツを作りました。

Tim:

うまくいっていますか?

稲田氏:

我々は生徒たちの点数の改善を図りますが、残念ながら、我々にとってはユーザ観察の方が重要です。生徒たちは塾に通い、我々は生徒たちを集めインタビューをとって、生徒たちがどう感じているか、プロダクトのことをどう思っているかを把握しています。

Tim:

どのようにバランスをとっていますか? というのも、atama+ をはじめとするこの種のプロダクトには、2つの方法がありますね。プログラムとやり取りする生徒たちを観察し、それに基づいて判断する直接的なヒューマンインタラクション。でも、これは人工知能ではなく通常知能です。もう一つはデータを眺め、(生徒たちのプログラムとの)やり取りを眺める人工知能による方法。atama+ では、この2つの方法のバランスをどう取っていますか?

稲田氏:

我々にとっては、両方とも重要です。我々は AI 企業ですが教育をイノベートしたいと考えているので、教育体験を改善する必要があると分かった時には、AI によるものではないものも開発しました。

Tim:

なるほど。教育はこの150年間、イノベーションやディスラプションに最も抵抗してきた分野ですね。基本的にはずっと同じまま。新しいツールを取り入れようとしますが、基本的な構造に変化は無い。先ほど、塾は民間企業で競い合っているから、よりイノベートしようとしているという話をしました。文科省や大学、あるいは、他の学校がこの技術を使うことに興味を示していますか?

稲田氏:

えぇ、多くの学校から連絡をもらっていますが、残念ながら、ほとんどの学校は教育を劇的に変えたいとは思っていません。

後編へ続く

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エネルギー新市場でスタートアップが勝ち抜くには?——エネチェンジ創業者の城口洋平氏に聞く【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


世界のエネルギー市場は、自らの姿を変貌させつつある。過去70年間における変化は小さなものだったが、これからの10年間で、日本や世界のエネルギー市場は全く異なる様相を呈するだろう。

今日は、日本最大の小売エネルギー切替プラットフォーム「エネチェンジ」の代表取締役会長である城口洋平氏に話を聞く。エネチェンジのビジネスモデルに迫り、会社を始める上でイギリスやヨーロッパより日本が都合のいい場所である理由について、城口氏は興味深い考察を教えてくれる。

今回も素晴らしいディスカッションなので、お楽しみいただけると思う。

エネチェンジ 代表取締役会長 城口洋平氏

Tim:

興味深いのは、エネチェンジがスタートしたのは2015年4月ということですね。これは、消費者がエネルギー事業者を切り替えできるようになる前のことでした。

城口氏:

はい。法律が変わった時に我々の準備が整っているよう、意図的に規制緩和の1年前に会社を設立しました。

Tim:

そういうことなのですね。しかし、市場がまだ存在していない市場への事業に、投資家をどうやって見つけることができたのですか?

城口氏:

ヨーロッパのエネルギー市場は2008年頃に規制緩和されているので、この市場がどのように発展し、エネルギー切替プラットフォームがどんなに良いビジネスになるかを、潜在投資家に説明することがができたのです。

Tim:

お客さんについて教えてください。エネチェンジを使っているのは、どういう人たちですか?

城口氏:

我々のお客様は、エネルギー市場全体の動向を反映していますね。日本のエネルギー市場の半分は小売顧客7,000万件、残りの半分は商業や産業の顧客およそ100万件です。エネチェンジの売上の約半分は商用利用から、約半分が住居利用からです。

Tim:

エネチェンジは、住居利用のお客さんにも、商用利用のお客さんにも、同じ内容を提供しているのですか?

城口氏:

実際のところ、提供内容はかなり違っています。住居で利用されるエネルギーは極めて単純なので、いくつか利用できる選択肢を提示し、お客様には最適なものを選んでもらいます。我々は、推薦した事業者から手数料を受け取ります。Web ベースで処理が完結します。商用利用のお客様では状況がより複雑なので、専任の担当者がお客様毎に料金プランを開発します。

Tim:

お客さんが、特定のエネルギー事業者を選ぶ上で、主な理由は何でしょうか?

城口氏:

クリーンエネルギーやグリーンエネルギーを宣伝している事業者は数多くいますが、お客様の95%は価格で選んでいます。信頼性は言うまでもなく重要ですが、それが疑わしい事業者にはエネチェンジを使ってもらっていないので、選択の判断はほぼ価格を元に行われているのが現状です。

Tim:

エネチェンジを始められたわけですが、他にもイギリスで事業を創業されていますね?

城口氏:

はい。21歳の時に日本で最初の会社を創業し、それを少額で売却しました。博士号を取得しにケンブリッジ大学に通いながら、エネルギースタートアップを3社設立しました。Cambridge Energy Data LabSMAP (Smart Meter Analytics Platform、エネチェンジです。

Tim:

ということは、エネチェンジはイギリスで運営しているのですか?

城口氏:

いえ、エネチェンジは今や極めて日本の会社です。私は自分の時間の半分をイギリス、残りの半分を日本で過ごしていますが、エネチェンジの経営陣やスタッフは全員日本にいます。

Tim:

エネルギー事業者切替以外にも、事業を拡大させる計画はありますか?

城口氏:

はい。我々の事業はまだ第一段階にあり、エネルギー業界に対して、より深いソリューションを提供する計画です。現在はエネルギー事業者の顧客獲得を支援していますが、今後、顧客の管理のほか、どのお客様が利益に貢献しているかの把握や、スマートメータのデータ解析を支援したいと考えています。エネルギー企業は規制緩和以前、特定の顧客が利益に貢献するかどうかを意識する必要はありませんでした。以前はただサービスを提供し、市場全体として利益が出ていればよかったのですが、それが急速に変化しつつあります。

Tim:

それは興味深いですね。言ってみれば、過去100年間は政府がエネルギー事業の唯一の顧客だったわけですね。エネルギー事業者は規制当局に新しい発電所の建設や料金値上の許可を求めるので、エネルギー事業者にとっては規制当局の反応だけが重要だった。エネルギー事業者にとっては、エネルギーの消費者が顧客になると言うのは、極めて新しいコンセプトなんだろうと思います。

城口氏:

そうですね。それは日本だけでなく、市場の規制緩和が進む中で、世界中で起きていることです。

Tim:

日本では、すでにエネルギー小売事業者が400社を超えています。将来、どういった企業が生き残ると思いますか?

城口氏:

最も速く新しいテクノロジーを取り入れて活用できる企業でしょうね。日本のスマートメーターやデータ品質は、他の市場より遥かに優れていますから多くの事業機会がありますが、結局のところ、テクノロジーを理解した企業の経営効率が最も高まるので、その効率が最も良い企業が勝つことになるでしょう。

Tim:

この種のテクノロジーにおいて、日本は他の市場より進んでいるんでしょうか。遅れているのでしょうか?

城口氏:

私の知る中でイギリスと日本は最良の市場で、この2つの市場の間に大きなテクノロジーの差は無いように思います。どちらの市場においても、企業はまだ理解をし始めたところです。しかし、日本はスタートアップを始める上で、より都合のいい場所だと思います。

Tim:

なぜですか?

城口氏:

日本の方が市場が大きく、買収や IPO といったイグジット機会が多いからです。金融業界を除けば、イギリスのスタートアップは M&A や IPO の機会を求めてアメリカを目指す必要がありますが、日本のスタートアップには買収機会へのアクセスがあり、地元市場で IPO への明らかな道筋が拓けています。この事実は、スタートアップが成長する上で、多くの選択肢をもたらしてくれます。


スタートアップがエネルギー市場で差別化するのは難しい。城口氏が指摘したように、消費者の大多数が価格を元に事業者を選ぶ環境においては特にそうだろう。日本では現在、エネルギー事業者として400社が登録されているが、そのうちの多くが将来、事業から撤退することは間違いない。

城口氏の日本市場に対する評価にも勇気づけられた。かつて私は、日本のスタートアップがさらなる成長が見込める段階で IPO してしまうことに対し、時期尚早過ぎると批判したことがある。これは日本をサンフランシスコと比較すると、そういうことになるわけだが、イギリスやヨーロッパ市場と比べれば、状況は極めて違って見える。

いずれにせよ、日本はスタートアップを始める上で素晴らしい場所だ。エネルギーや金融で規制緩和が進むにつれ、日本をディスラプトするスタートアップがさらに生まれてくることだろう。

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SaaSビジネスにとってフリーミアムモデルが最良とは限らない——飲食業向け「TableSolution」運営の谷口優氏に聞く【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


無料のプロダクトを揃えるのは、潜在顧客にプロダクトを評価してもらうリスクの低い方法を与えることで新たなユーザを獲得するという、スタートアップには常套手段だ。しかし、単に販売した方が、簡単ではるかに利益を出しやすいということもよくある。

TableCheck CEO の谷口優氏は、レストランオーナーが予約を管理したり顧客を理解したりするのを支援する SaaS プロダクト「TableSolution」を開発している。谷口氏と私は TableSolution のビジネスモデルについて話をし、彼は中小企業への販売や新市場への進出について、素晴らしいアドバイス、直感だけではわからない洞察を共有してくれた。

今回も素晴らしいディスカッションなので、お楽しみいただけると思う。

(編注:原文掲出後 Vesper から TableCheck に社名改称されたのに伴い、本稿では新社名で記述しています。)

TableCheck CEO 谷口優氏

Tim:

レストラン予約は大変競争が激しい業界ですよね。その中で、TableSolution はどうやって突出していますか?

谷口氏:

TableSolution は、ぐるなび、食べログ、OpenTable といった企業と競合関係にありません。こういった企業は、予約や客席確保に特化しています。我々も同様の機能を提供していますが、完全なテーブル管理やレストラン向け CRM に特化しています。

Tim:

つまり、機能群が違うだけということですか?

谷口氏:

我々は顧客であるレストランと(既存のしくみとは)違った形の関係を作っています。たいていの予約特化システムは無料で使えますが、予約毎に料金が発生します。こういった取引発生毎の関係ではなく、TableSolution では1万2千円から2万円の月額均一料金制をとっています。均一料金なので、レストランは(TableSolution 経由の流入件数を気にせず)自店舗の Facebook ページや広告から(TableSolution 上に開設された)予約ページにリンクを張ることができます。

Tim:

たいていの SaaS 企業は潜在顧客にプロダクトを試してもらえるよう無料メニューを用意していますが、このモデルを採用しないと決めたのはなぜですか?

谷口氏:

簡単な決断ではありませんでした。フリーミアムから広告収入モデルまで、あらゆる売上モデルを試しました。プロダクト開発の過程で300人を超えるレストランオーナーやマネージャーにインタビューしたところ、オペレーションがスムーズにできると確信できるものに対してなら、月額1万円を喜んで支払うと彼らは言ったのでした。そこで、レストランのオペレーション改善に特化することに決めたのです。当時、弊社にはあまり資金がありませんでしたので、すぐにでも顧客に課金を始める必要があったことも事実です。

Tim:

なるほど。新しいプロダクトを使うために、レストランがスタッフをトレーニングして手順を変更する必要があるとすれば、必要コストのほとんどはトレーニングに関するものになりますね。そういった顧客にとって、月額が無料か1万2千円かは、大きな違いになりませんね。

谷口氏:

そうなんです。レストランが TableSolution の本当の価値の恩恵を受けるには、時間をとって TableSolution のシステムを学習してもらう必要があります。受動的な使い方では、大きな改善は望めません。例えば、TableSolution ではお客様毎の好みの情報を提供し、そのお客の収益率やトータルライフタイムバリューを計算することもできます。レストランにとっては大変価値のある情報ですが、それを使いこなすためには時間が必要です。

TableSolution
Image credit: TableCheck

Tim:

どれくらいのレストランに使ってもらっているのですか?

谷口氏:

ヒルトン、インターコンチネンタル、ハイアットといった世界的ホテルチェーンをはじめ、2,000軒のレストランにご利用いただいています。日本での成功をテコに、海外進出も行なっています。例えば、日本国内で IHG が運営する全ての施設で、また、タイやベトナムなどの施設でも TableSolution が使われ始めています。

Tim:

素晴らしいですね。トップダウン戦略をとるアメリカ企業では、アメリカ本社が新しいプロダクトを試した後、世界の支社でそのプロダクトを標準として使う、という手順を余儀なくされることは、しばしばお聞きになっていると思います。そんな中で、ボトムアップで似たようなアプローチをとる日本のスタートアップが生まれてきているのは素晴らしい。

谷口氏:

これまでのところ、世界的リーダーになった日本のインターネットサービスは存在しません。その一番乗りになることが私の目標です。

Tim:

非常に価値がありそうな多量のデータを手にすることにもなりますね。例えば、過去1ヶ月間に20代の女性が食べるクリームパスタの注文数が増え始めたとか、トマトパスタの注文数は減り始めたとか、ドイツ料理のレストランでワインの注文数がいつもより増え始めたとか。レストランにてとってはメニューを変えたり、プロモーションを計画したりする上で、非常に参考になりますよね。

谷口氏:

はい。そういったサービスは、我々の長期にわたる事業計画の中で大きな部分を占めます。しかし、我々は全く違った方向にも価値を提供できます。例えば、Tim がボロネーゼのスパゲティを大好きだとしましょう。従来からあるレビューサイトは、レストランの提供するメニューの中で特定のメニューを評価するわけではないので、役に立ちませんね。我々はボロネーゼのリピート客が多数の割合を占めるレストランをお勧めしたり、ボロネーゼ好きが高い確率でボロネーゼを注文する場所をお勧めしたりすることもできるでしょう。

Tim:

それはお勧めをする上で、極めて効率がいいですね。でも、保守的な飲食業界で、レストランはそういったツールを導入するんでしょうか?

谷口氏:

導入が速いところも遅いところもあるでしょう。ツール群が提供する価値を考えれば、たいていのレストランは最終的に、これらのツールを使ってくれるでしょう。

Tim:

数年前、BeautySalon というプロダクトをローンチされましたが、そちらはシャットダウンを決められましたね。なぜですか?

谷口氏:

当初、美容業界をはじめ、レッスンやイベント、医師や病院などで我々のプラットフォームを活用してもらえるのでは、と考えたのですが、2つの問題があることがわかりました。まず我々の開発リソースが限られており、既存ユーザから多くの改善要望を受け取っていること。そして、美容業界に対して私はあまりパッションを抱いてないからです。私はレストランで食事するのが大好きだし、飲食業界には胸をわくわくさせられます。でも、ヘアースタイリングにそれと同等レベルの関心はありませんでした。最前を尽くせるところに特化したのは、明快な選択だったと思います。


谷口氏のレストランのみに特化した決断は当然のことのようだが、反対のことを勧める VC は多い。皆が共通して持つべきスタートアップの戦略は、あるニッチで技術を証明し、それを迅速に他の新しいニッチでも再利用するというものだ。

しかしながら、スタートアップが持つ技術は往々にして自分たちが思うほど重要ではなく、谷口氏は良い戦略をとったと思う。ある層の顧客に特化することで、特定のニーズに訴求できる、世界でも唯一のプロダクトを作ることができる。

たいていの場合、結局あなたの技術は本来の競争優位性をもたらしてくれない。重要なのは、顧客との関係を理解することである。

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外国人起業家が日本でスタッフを雇用・管理する方法【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本の労働法はアメリカやヨーロッパの基準とは多く異なり、仕事だけでなく会社まで失うことになる単純な間違いをしてしまう外国人は少なくない。

Terrie Lloyd 氏は30年以上にわたり12社以上の企業を日本で設立、数百名の人々を雇用してきた。今日は、Lloyd 氏が多くの個人的な話を聞かせてくれ、日本人を雇ったり、管理したり、会社に居続けたりしてもらう必要のある西洋人に実務的なアドバイスを提供してくれる。

興味深いディスカッションなので、お楽しみいただけるだろう。

Terrie Lloyd 氏

Tim:

ここ数年では日本で数社を創業されていますが、特に直近のビジネスである Japan Travel について教えていただけますか?

Terrie:

もともとは旅行ポータルにすることを意図して作ったわけではありません。ACQ2 というコミュニティマネージメントプラットフォームが当初のアイデアでした。企業に非常に多くのコミュニティ生成コンテンツを、作成したり、編集したり、管理したりできるようにするためのものでした。このプロジェクトに資金を募ってみたのですが、その可能性を理解してくれる人がいなかったのです。そこで、これを使って事業を作ろうと決めたわけです。

Tim:

旅行に特化しようと決めたわけですか?

Terrie:

いえ、そうではなくて、我々の最初のプロダクトは doglovers.jp というもので、犬好きの人に特化したものでした。Japan Travel は2つ目のアイデアでした。doglovers.jp も Japan Travel もほどほどに成功しましたが、最終的には doglovers.jp をシャットダウンし、Japan Travel に注力することに決めました。

Tim:

Japan Travel はどのように機能するのですか?

Terrie:

コミュニティが最重要事項です。コミュニティの中から参加したい人は、やりたいと思う仕事にサインアップします。物書きが好きな人もいれば、編集が好きな人もいるし、チェックの速い人もいれば、構成が上手い人もいるでしょう。ACQ2 は、こういったワークフローを管理し、やりたいと思うボランティアにその仕事をまわすシステムです。もちろん、ここに関わる人たちは完全にタダ働きというわけではなく、景品交換可能なポイントが与えられます。しかし、多くのボランティアにとっては、コミュニティに貢献することが最大のモチベーションです。Japan Travel に貢献してくれている人々は約30万人います。

Tim:

過去30年の間に、日本で17社を設立していますね。どうやって、事業機会を見つけたのでしょうか?

Terrie:

すべての会社がうまくいったわけではありません。たいていの成功する外国人起業家は、外国人であることを活用して方法を見出します。彼らは外国の技術にもアクセスできるだろうし、新しい外国のビジネスモデルを取り入れるのも早いだろうし、最初のお客が外国企業だったり、外国の資金にもアクセスできたりするかもしれない。こうして優位性を獲得した外国人は、日本企業と競争するのは大変だと理解するようになります。私が犬のサイトをシャットダウンして、旅行に注力するようになった理由の一つもそれです。

Tim:

それは物事を始めるのには良い方法だと思いますが、そこからどうやって長期にわたる事業を築いたのですか?

Terrie:

新しい何か、ニッチな何かを紹介したいと考えると、そのエコシステムを持つ必要が生じます。クライアントの関係も必要になるし、プロダクトやサービスの届け方も制御する必要があるでしょう。独自の技術も必要です。外国人なら当初は強力な人脈は無いかもしれないが、それを徐々に作っていく必要があるでしょう。最初は自分がはまる場所が見つからないかもしれないが、それでも構わない。そこから、はまる場所を作り、エコシステムを築けばいいのです。エコシステムを制御することをあきらめたら人間関係は弱くなり、これは外国人が経営する企業にとっては非常な危険なこととなります。

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Japan Travel

Tim:

外国人起業家が直面する最も大きな問題は、良質な従業員を魅了し続けることですね。日本人を雇用したり、会社にいつづけてもらったりする上で、どのようなアプローチを取ってきましたか?

Terrie:

それは、数十年にわたり事業をしていても変わらない部分であり、今でも難しい部分です。日本の多くの大学卒業生は、有名ブランドや安定した企業に就職しようとします。我々はスタートアップなので、このような人たちをリクルートしようとは思いません。しかし、大企業では働きたくないとか、標準的な教育システムを経た人でなくても、有能な人々は大勢います。我々は彼らに注目します。このような若い人たちは、会社のブランドよりもリーダーシップの質を気にかけるからです。

Tim:

そういった人々は、増えていますか?

Terrie:

明らかにそうですね。今日の日本の30代未満の世代は平均3回職を変えるといいます。つまり、多くの人は有名企業よりも、自分の価値観に合ったキャリアを探しているのです。実際のところ、今日の若い人々は大企業で数年間働き、そこが合っていないとわかると、次の転職機会を探し始めるのです。

Tim:

そういった人々は、20代後半から30代前半の人たちになるでしょうか?

Terrie:

はい。人が会社に入るのには、いい年齢ですね。自分で結論を描くには十分な経験を積んでいて、責任をとったりイニシアティブをリードしたりすることもできるが、長期的なキャリア観に対してはまだ柔軟です。我々はスタートアップなのでお金は多く持っていませんが、ワークライフバランスの良さ、従業員同士によるリアルなコミュニテイの形成に注力しています。

Tim:

それを従業員に約束している会社は多くありますが、そう行った中で、あなたの会社は抜きん出て、他社との違いを明らかにするために、どのようなことをしていますか?

Terrie:

スタートアップの場合、それは創業者がどう考えているかということになりますね。自社の価値が何かを皆に見せ、それに向けて取り組んでいるんだ、ということをわかってもらう必要があります。我々は目標やビジョンだけでなく、直面してきた大変さや困難についても、オープンかつ正直であるように努力しています。これまでに幾度となく失敗してきて、現在すべての答えを持ち合わせているわけではありません。それについてもオープンにして、常に心のそこからコミュニケーションをとるよう努力をしています。人々はそれに感謝してくれています。それは偽ることのできないものであり、助け合う企業文化を作り出すのです。


Lloyd 氏の日本人スタッフの雇用や管理に関するアドバイスは外国人(の起業家)に向けたものだったが、日本人の起業家やマネージャーにとっても良きアドアイスとなるだろう。事実、すべての国において、イノベイティブで独立して事業を行う人々は、強いビジョンを持ち信頼できるリーダーに魅了されている。

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子供達の世代のファッションビジネスを変えてゆく「FACY(フェイシー)」【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本のファッションがユニークであるように、また日本のファッション業界もユニークだ。

FACY(フェイシー)の小関翼氏と彼のチームは、インスタントメッセンジャーと、ショップ〜顧客間に構築された関係性をもとにしたファッションマーケットプレイスを構築した。しかし、たいていのファッションマーケットプレイスと異なり、FACY はメジャーレーベルや世界ブランドではなく、ローカルや中堅ブランドで占められている。

FACY が持つ、興味深くミニマルな e コマースへのアプローチは注目に値する。

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FACY のチーム

Tim:

FACY はどのように機能するのでしょうか?

小関氏:

基本的な流れとしては、我々のユーザがファッションニーズについて質問をし、ショップやブランドが回答するというものです。そのやりとりはオープンなので、すべてのユーザが回答を閲覧できます。

Tim:

どのような質問をするのですか?

小関氏:

内容は非常に多岐にわたりますね。特徴的なのでは「オフィスに履いていけるスニーカーを探しています。」とか、あるいは一般的な「ファッションに不慣れですが、何から始めればいいですか? 最初に買えばいいのは何でしょう?」などです。

Tim:

ファッションに不慣れというユーザには、ショップはどういう回答をしたのですか?

小関氏:

これは大変人気のある質問で、多くのショップが回答しました。「Levi’s 501 から始めたら」というものもあれば、「良いスニーカーがベースになる」というものもありました。多くの意見が寄せられました。

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FACY での相談から購入まで

Tim:

興味を惹くのもわかります。ビジネスモデルは?

小関氏:

FACY を通じての販売の20%を手数料として受け取り、ショップは顧客に商品を直送します。

Tim:

お客さんについて教えてください。誰が FACY を使ってるのですか?

小関氏:

毎週20万人を超えるアクティブユーザがいます。大変アクティブですが、ほとんどのユーザは自ら質問をせず、他の人の質問を読んでいます。平均年齢は25〜35歳で、彼らは給料が増えつつありますが、自由な時間は減りつつあります。男女比は概ね半々です。

Tim:

ほとんどのファッションサイトは、主に女性か、または男性をターゲットにしますよね。FACY では、それが均等に分かれているのは興味深いです。年齢については納得できますが。大学を出ると、誰しも昔のファッションを捨てて、新しいスタイルを確立する必要が出てくるもの。メジャーブランドがターゲットにするのは、この層ですよね。

小関氏:

実のところ、我々の主なクライアントはメジャーブランドではありません。アメリカではアパレルブランドは主に、高級ブランドとファストファッションに分かれますが、日本は多くの中流価格のブランドがあり、それらが FACY で最も人気を得ています。

Tim:

なぜでしょう?

小関氏:

中堅ブランドは顧客にリーチする新しい方法を探していて、喜んで実験を試みてくれます。高級ブランドやファストファッションの小売業者は、予算が大きく、優れた E コマースサイトを持っているのですが、顧客の質問に一つ一つ応じられるだけの余力を持っていません。ファストファッションよりも品質のよい服が欲しい人は多くいますが、彼らは高級ブランドを買いたいわけではないのです。

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FACY の台湾オフィス

Tim:

海外展開の計画はお持ちですか?

小関氏:

アジアは多くの可能性を見出しています。多くの国でファッションにお金をたくさん使う中間層人口が伸びていますし、アジア諸国の多くで24〜34歳人口が多いからです。

Tim:

FACY は対話に特化した Twitter に近いのでしょうか、あるいは、つながりに特化した Facebook に近いのでしょうか?

小関氏:

Facebook に近いと思います。ショップには顧客と長期的な関係を築いてほしいと思っていますし、顧客のファッションアドバイザーになってほしいと思っています。我々はショップが FACY のプラットフォーム上で、こういった関係を築き維持するためのツールを開発しているわけです。

Tim:

FACY はテキストのみですが、ファッションは目で見るものなのに、どうしてテキストのみなのですか?

小関氏:

ショップは、回答の中で写真を使うこともできます。ユーザ側には、顧客が写真をアップロードできる機能をβリリースしましたが、この機能を使う人は多くなかったので、少なくとも今ではテキストに特化しています。最終的には、コミュニケーションと信頼が写真よりも重要だと思っています。

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FACY CEO 小関翼氏

Tim:

FACY で、AI やチャットボットは使っているのですか?

小関氏:

ショップが使えるチャットボット作成の実験を始めています。将来、この種の AI 対話機能は大変重要になるでしょう。

Tim:

AI やチャットボットの登場で、力はメジャーブランドへと戻るでしょうか? 今の所は、スタッフやオーナーが顧客と一対一でやりとりしアドバイスできる、中堅ブランドに iFACY が理想的なわけです。しかし、大手ブランドが多額の予算を確保して、素晴らしいチャットボット開発に投資できるようになれば、それまで FACY が持っていたアドバンテージを、大手ブランドが持つように思えます。

小関氏:

それはよいポイントですね。それについても、ある程度、考えています。しかし、チャットボットはツールでしかありません。チャットボットが顧客との関係を築くことはできないでしょう。

Tim:

この種のパーソナル E コマースは、メジャーブランドに戦いを挑む存在になると思いますか?

小関氏:

大手ブランドが活躍する場は将来も常に存在するでしょうが、ファッションはよりパーソナルなものになりつつあります。人々は、以前のようにテレビや雑誌からファッションのヒントを得ているのではありません。現在では、ソーシャルメディア、SNS、スマートフォンにより時間を費やすようになりました。マスメディアの重要性は減りつつあり、したがって、マスファッションもそうなりつつあるのです。


FACY は、ファッションについての新しい考え方を示すだけでなく、小関氏がヒントをくれたように、メディアへの依存や利用するメディアの変化がもたらした、ごく当然の結果なのだ。

ファッションブランドの現代のコンセプトは、雑誌やテレビといったトップダウンのブロードキャストメディアに依存している。数少ないレーベルやデザイナーがファッショントレンドを定義し、メディアを介してブロードキャストし、消費者は単にそれに従う。

ソーシャルメディアがこれを変えつつある。ファッションはよりパーソナルかつ対話的なものになりつつある。テクノロジーが存在することで、初めて新たな関係構築を可能にしたからだ。未来のファッショブランドは、ファッションリーダーになることから、パーソナルアドバイザーになることへと、自ら姿を変える必要があるだろう。

この変化についていける今日のトップファッションブランドは、ごくわずかだろう。

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LogBar吉田卓郎氏に聞いた、ハードウェアスタートアップの失敗とたゆまぬ挑戦【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本のハードウェアスタートアップの大半が失敗するのには、それを説明ができる理由が存在する。

今日は、LogBar の CEO で創業者の吉田卓郎氏に話を聞く。ハードウェアスタートアップ失敗の理由に迫り、スタートアップがそのような間違いを避ける方法を見ていきたい。吉田氏は、日本で最も成功した Kickstarter キャンペーンの一つを手がけ、最も成功した2つの IoT プロジェクト——ウエアラブル指輪の形をした VR コントローラ「Ring ZERO」と本格的に勢いをつけ始めた自動翻訳機「ili」——を手がけている。

今回も素晴らしい対話だったので、お楽しみいただけると思う。

LogBar CEO 吉田卓郎氏

Tim:

LogBar は Ring と ili の両方を開発していますね。これらはそれぞれ全くことなるプロダクトですが、どうして作ろうと思ったのですか?

吉田氏:

学生のとき、1年半ほどサンフランシスコに住んでいました。その頃、スタートアップという考え方が好きになりました。帰国後も年に一度はシリコンバレーにやってきて、自分のスタートアップのアイデアを VC にピッチしていました。うまくはいかなかったのですが、それでも挑戦を続けていました。2013年、日本で LogBar を始めました。LogBar の名前は実のところ、実際のバーから来ています。当時、私はバーテンダーとして、お客さんに iPad を使ってドリンクをオーダーしてもらうなど実験をしていました。

Tim:

クラウドファデンィングでは、Ring のためだけに資金を調達したのですか?

吉田氏:

Kickstarter のキャンペーンをやる前にも、少しだけ資金は調達していました。それはプロトタイプを作るには十分でした。Kickstarter でキャンペーンを展開したのは、量産のための資金を調達することとマーケティングの助けとするためでした。

Tim:

Kickstarter では80万ドル超を調達しましたが、製造は当初の期待ほどスムーズには進まなかったんですよね?

吉田氏:

ハードウェアはハードです。ちょっとした変更に、2〜3ヶ月を要することもあります。ちょっとした変更がどれほどスケジュールに影響を及ぼすか、それがわかるほどの経験が我々にはありませんでした。Ring は3ヶ月遅れて出荷を開始しましたが、新しいハードウェアスタートアップとしては、さほど悪い結果ではなかったと思います。

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Ring

Tim:

中国で製造しているのですか?

吉田氏:

すべて日本国内生産です。海外でやっていたら、製造・出荷の遅延はもっとひどいことになっていたでしょう。ハードウェアを作るのは始め絵だったので、工場を信頼し、彼らのアドバイスに耳を傾ける必要があったのです。彼らはベンダーというより、パートナーですね。

Tim:

ソフトウェアスタートアップは、たいてい1週間単位で開発周期を作りますね。ハードウェアスタートアップには、何をすすめますか?

吉田氏:

プロトタイピング段階であれば、1周期あたり3〜4ヶ月で計画すべきでしょう。少なくとも、2〜3周期は必要になります。プロトタイプに満足できたら、型を作り生産に移るまでに、さらに2ヶ月かかります。

Tim:

Ring は、Kickstarter で大成功でしたね。クラウドファンディング後も、その成功は続いたのですか?

吉田氏:

Kickstarter 後は、顧客を魅了し続けるのに苦労しました。Ring はアーリーアダプターを対象にしたものでしたが、多くの主流派の顧客を魅了することをしませんでした。その最大の理由は、Ring を操作するにはスマートフォンが必要であり、多くの人々はスマートフォンを直接操作したいと考えるからでした。我々のバリュープロポジションは十分ではありませんでした。当時利用できた技術では、費用が高く、少し大きな形のものでした。

Tim:

Ring の未来はどのようなものでしょう? 技術が進化し価格が下がれば、バージョン2.0を見ることはできるでしょうか?

吉田氏:

はい、たぶん。5年から10年後じゃないでしょうか。Ring をあきらめていませんが、現在は ili に集中しています。ili は約2年前に開発を開始しました。

ili

Tim:

ili は、Ring とは全く異なるプロダクトですね。

吉田氏:

技術と市場は異なりますが、コアのモチベーションは同じです。我々とユーザの両方がわくわくできるものを作りたかったのです。今日では、販売が非常に強固なものになりました。

Tim:

ili は、どのような人が使っているのでしょう?

吉田氏:

ハワイにある多くのホテルやレンタカー会社ですね。ili は旅行業など特定の使い方にカスタマイズできるので、企業向け販売に注力しています。このバージョンをビジネス交渉に使いたいとは思わないでしょうが、旅行者が身を置いている、たいていの状況を取り扱うことはできます。すべての機能をデバイス内に内包しているため、WiFi やインターネット接続は不要です。ili に向かって話しかけるだけで効果的に翻訳します。

ili

Tim:

携帯電話はよりパワフルになるにつれ、ili のような省電力で単一機能デバイスは将来、iPhone や Android アプリと競合になるのではないでしょうか?

吉田氏:

そうは思いません。携帯電話には高い処理能力が備わっていますが、翻訳機として使うのは難しい。試せばわかると思います。そのように、電話を自分に向けたり相手に向けたりするのは不自然に感じるでしょう。ili のような単一機能デバイスはよりシンプルです。マイクのような感じですが、このことがより重要です。最初に使った場所で、翻訳のためにハードウェアデバイスを使う習慣を人々が身につけることになります。自動翻訳機を使うという考え方において、人々に快適さを感じてもらうことこそ、長期的な成功にとって最も難しく重要な部分なのです。

Tim:

VC やクラウドファンディング で資金調達しようとしている、日本のハードウェアスタートアップにアドバイスはありますか?

吉田氏:

現在はハードな時期です。数年前に比べ、VC はハードウェアスタートアップへの投資に関心を示さなくなっていますし、日本のクラウドファンディングもあまり成長していません。ハードウェアスタートアップは、プロトタイプを作る前に製品のビデオを制作すべきだと思いますね。私はいつもそうしています。そうすると、VC と潜在顧客の両方からフィードバックを得ることができ、関心と資金の両方を獲得する機会を手に入れることができるからです。


吉田氏の専念ぶりには敬服させられる。彼は、ユーザや投資家と共感できるものを見つけられるまで、次々とプロジェクトに挑戦を続け、またピッチを続けてきた。Ring が日米両方の VC から断られた後も、潜在顧客から記録的な金額を直接資金を調達した。

今後も、LogBar からは多くのイノベーティブなハードウェアプロダクトがもたらされることだろう。

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日本で増えゆくサイバー犯罪に備えるには——カウリス代表の島津敦好氏に聞く【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。 Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


〝日本株式会社〟は、コンピュータセキュリティに対するアプローチにおいて、大きな移行期を迎えつつある。これまでは、日本独自の決済システムや日本語が壁となって、国を超えての詐欺や攻撃が低レベルに抑えられていた。

それらすべては変わりつつある。決済システムがグローバルかつ自由になり、ブラウザから誰でも簡単に翻訳ができるようになった今、詐欺は日本でも増えつつあるのだ。

今日はカウリスの島津敦好氏をゲストに迎え、新しい脅威とそれらに対して我々が何ができるかについて説明してもらう。

カウリス代表取締役 島津敦好氏

Tim:

カウリスの製品である「FraudAlert(フロードアラート)」について教えてください。

島津氏:

FraudAlert は、企業の Web サイトやモバイルサイトを承認されていない利用から守ります。ログイン状況のモニターだけでなく、ユーザがログインした後の通常と異なる行動についても確認することで、これを実現します。これらの情報を分析し、リアルタイムで警報を送信するわけです。

Tim:

通常と異なる行動とは、どのようなアクションをいうのでしょうか?

島津氏:

疑わしい行動とは、例えば、いつも Mac を使っているユーザが Windows からログインしてきたりとか、同じ IP アドレスから異なる複数の E メールアドレスでログインが試みられたりとか、ユーザが送金ページへ直行したりとか、そのようなケースですね。多くのファクターの組み合わせを元に、総合的なリスクスコアを割り出します。

Tim:

Web やモバイルのセキュリティは、ユーザ名やパスワードに依存していることが多いですね。IoT の時代に移行する中で、これは変化すると思われますか?

島津氏:

トヨタのような企業と、IoT セキュリティについて協業しています。携帯電話や Web ブラウザはパーソナルなものですが、自動車などのデバイスは友人や家族と共有することがよくあります。つまり、セキュリティに対して、より顧客に特化したアプローチを取る必要があるということです。顧客がこれらのプロダクトを、どのように使っているかをより理解する必要があります。それは複雑なセキュリティモデルですが、最終的にはユーザにとってより使いやすいものになるでしょう。

Tim:

オンライン詐欺はに日本では比較的稀です。どの程度のものでしょうか?

島津氏:

2015年に日本政府が調査したところ、すべての公開会社の3分の1が詐欺で損害を受けたことがあると回答しました。中でもクレジットカード詐欺は30億円に上りますが、これは決して小さな金額ではなく、毎年増大しつつあります。

Tim:

確かに大きな金額ですね。アメリカドルで言えばおよそ2,700万ドル、しかし、昨年アメリカのクレジットカード詐欺は85億ドルでした。日本の経済規模はアメリカの30%ですが、クレジットカード詐欺の件数はアメリカの0.3%です。なぜでしょう?

島津氏:

詐欺にはクレジットカード以外のものもありますが、クレジットカードに限れば、その大きな理由は日本人は今でも現金や他の電子マネーを使う傾向が高いからでしょう。クレジットカード決済が日本経済に占める割合は、アメリカに比べてはるかに小さい。しかし、もっと大きな理由は日本語です。

Tim:

どういうことですか?

島津氏:

詐欺未遂が日本で急速に増え始めたのは2013年です。2013年というのは、Web ブラウザが自動翻訳機能を搭載し始めた年ですね。それ以前からハッカーはサイトにアクセスできましたが、それが銀行のサイトなのか、どこに口座管理画面があるか、ポイントカードをサポートしているのかどうか、彼らは理解できなかった。

Tim:

つまり、言語の違いによって、海外のハッカーが日本のサイトをターゲットにするのを難しくしていたと?

島津氏:

そうです。ユーザに名前をかな入力させるようなシンプルなものでも、アタックからの防衛に役立っていました。ハッカーはそれが何のことかわからないし、入力方法もわからないからです。しかし、これは本当のセキュリティではありません。アタックをしばらく遅らせるだけです。日本企業は長きににわたり脆弱なセキュリティに無頓着で対策を怠ってきました。しかし、自分たちのシステムを守るために、それを迅速に変える必要があります。

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カウリス代表取締役 島津敦好氏

Tim:

日本政府は、クレジットカードや銀行カードの詐欺について統計を発表していますが、島津さんはポイントカードや航空会社のマイレージカードもターゲットになっているとおっしゃっていましたね。

島津氏:

そうなんです。そういったサイトは、ハッカーにとって格好のターゲットです。現金振込に比べると、ポイントやマイレージの転送には法的な制限がほとんどなく、ハッカーは迅速にビットコインや他の電子マネーに換金し、追跡しにくくしてしまいます。

Tim:

企業がよりよいセキュリティを導入しようとすると、顧客や従業員が不満を言うことはよくあります。これに対する解決策は何でしょうか?

島津氏:

セキュリティを厳しくすると、使いやすさが犠牲になることはしばしばです。時には理にかなったトレードオフもありますが、FraudAlert のようなアプローチの利便性の一つは、ユーザが怪しく無い限り、追加的に何かのアクションを求めない点です。例えば、いつもと何か状態が違うときだけ、二段階認証や確認メールの送信、パスワードの再入力を求めるわけです。

Tim:

インターネットから自分を守るために、個人ができる最もよいことは何でしょうか?

島津氏:

最も重要なのは、パスワードマネージャーをインストールし、同じユーザ名やパスワードをいろんなサイトで使い回さないことです。調査によれば、日本人の70%が同じユーザ名/パスワードを使っているということで、この習慣はすぐにでもやめる必要があります。haveibeenpwned.com を時々訪問し、自分のメールアドレスが最近盗まれたものの中に含まれていないか、確認するのもよいでしょう。


日本では、サイバー犯罪に関する公式の統計結果は、まだ低い数字で推移している。しかし、実際にどれほどの犯罪が存在しているか、そこから知ることは難しい。自社システムが被害を受けたことに気づかない企業も多く、またネガティブなイメージを晒す可能性を嫌ってハックされたことを報告しない企業も多いからだ。

しかし、本当のところ何件の被害があるかに関係なく、島津氏の指摘は役に立つものだった。ハッキングやコンピュータ詐欺は、日本で一般的なものとなりつつある。ハッキングがより簡単になるだけでなく、より人の手を介さず自動的に処理できるようになりつつあり、自動翻訳の普及によって、海外のハッカーは日本のサイトをターゲットにしやすくなっている。日本企業がよりセンシティブなデータをインターネットに配置するようになる一方で、このようなことが起きているわけだ。

FraudAlert のようなプロダクトがそのような問題を解決するわけではないが、被害を減らすことに役立つのは間違いないだろう。

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「投資は、ライフスタイル確立手段の一つ」——独自のブランディングで、ミレニアル世代の顧客獲得に成功したお金のデザイン【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。 Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。 彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を…

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本のリーテル金融業界は、アメリカほどは洗練されていないか料金が高い傾向にある。さらに、年金や税金は一般的に雇用主によって徴収されるので、たいていの人にとって投資について熟考する理由も多くない。

お金のデザインの中村仁氏は、ミレニアル世代をターゲットにするという興味深い戦略で、そのような状況を変えようとしている。価格競争がすべてとされる市場において、お金のデザインは、金融に関係のないプレミアムなライフスタイルブランドを構築することを決めた。

そして、その戦略はうまくいっているようだ。

今回も興味深い話なので、お楽しみいただけると思う。

お金のデザイン 代表取締役社長 中村仁氏

Tim:

お金のデザインの戦略とプロダクトについて、教えてください。

中村氏:

我々の会社、そしてプロダクトの「THEO(テオ)」は実にシンプルです。ロボアドバイザリーサービスを提供していて、我々の顧客は毎月少額を投資し、我々はそれをバランスよく、コストの低い ETF(上場投資信託)のポートフォリオに投資しています。

Tim:

ということは、WealthfrontBetterment のようなアメリカ企業と似ていますか?

中村氏:

基本的には同じアイデアですね。我々は、いくつかの質問をして顧客毎に最適なポートフォリオを設計します。しかし、主なインターフェイスとしてはモバイルを使っており、たいていの金融業界よりも若い世代の投資家に特化しています。

Tim:

たいていの会社は、お金をたくさん持っているシニア層に特化しているんですよね?

中村氏:

そうですね、しかし、今若い人々は成長し豊かになるでしょうから、今からリーチしておくことには意味があります。実際には、我々の顧客の51%が30代で、15%が20代です。昔からある金融機関では、20代の顧客は5〜7%程度です。彼らもこれが問題だと認識してはいるものの、若い世代にリーチするのに苦戦しています。

Tim:

では、どうやって、お金のデザインは若い世代にリーチしたのでしょうか? 投資に回すお金をあまり持たない人々を巻き込むのは難しいに違いないですよね?

中村氏:

いいポイントですね。例えば、我々の新しい顧客の89%には投資経験がありません。ですから、THEO を使いやすくわかりやすいものにする必要がありました。昔からの金融機関では、ウェブサイトも UI も大変複雑になりがちです。おそらくシニア層に専門知識やノウハウを披露しているのでしょうが、若い世代はそのように考えません。我々は物事を大変シンプルにし、顧客がサインアップするのを簡単にしたのです。

Tim:

シンプルさをアピールされるのはわかりました。しかし、どうやって若い人々に、最初に出会ったアプリで投資してみようと促すことができたのでしょうか?

中村氏:

我々のブランディングは、金融を中心に据えていません。むしろ、ライフスタイルを中心に置いています。欲しいライフスタイルを築くために、投資をしようというものです。我々には「Outliers(アウトライヤーズ)」というオウンドメディアがあり、自ら選んだライフスタイルで生活する人々を取り上げています。有名登山家、シェフ、アーティストなどのインタビューなどで構成され、金融や THEO についての記事はないですが、最後にスポンサーとして THEO が紹介されているだけです。記事をソーシャルメディアでシェアしてくれる人々も多く、これが強いブランドウェアネスとブランドローヤルティの構築につながっています。大きな金融機関は、我々の400倍以上の口座を持っていますが、ソーシャルメディアのフォロワーは我々の方が多いと思います。

Tim:

金融サービスが複雑になるほど、特にその戦略は的を得ていますね。

中村氏:

そうなんです。金融商品に関して、顧客が決断するのは難しい。常に、情報が少ないか多すぎるかという状況です。信頼できるブランドとなり、シンプルであることが、大きなアドバンテージになるのです。

Tim:

最近、銀行や大手金融機関と提携されましたよね?

中村氏:

はい。これらの提携は、我々の長期的な成長において重要になると思います。日本では、ほとんどの人が銀行口座を持っているので、そこにユーザ数の増加は見られませんが、多くの人は金融アドバイスへのアクセスを持っていません。銀行は一般的に、この種のアドバイスを提供するような専門知識を持っていないので、我々がそれを提供できるよう提携したわけです。

Tim:

それは、銀行のブランドのもとで提供するのですか? それとも THEO のブランドで?

中村氏:

共同ブランドのもとです。ビジネスモデルは銀行毎に多少違っていて、紹介した顧客毎に我々から手数料を受け取る銀行もあれば、プロフィットシェアに近い形を取る銀行もあります。

Tim:

より広い分野の顧客層を手に入れられるという点で、このような提携は貴社にとって素晴らしいと思います。しかし、銀行の視点からは、新しいビジネスラインとして見ているのでしょうか、あるいは、若い顧客層にリーチする手段として見ているのでしょうか?

中村氏:

彼らは新しい売上を確保する手段を得ることに前向きだと思いますが、銀行にとっては、ミレニアム世代の顧客にアピールできることが、より重要なのだと思います。彼らは自分たちが提供するサービスのイメージを変えたがっています。今こそ、ブランドローヤルティが確立されるべきときなのです。

Tim:

THEO のようなプログラムを開発するための技術スキルはさほど高いものではないのであれば、銀行が自らロボアドバイザーを開発しようとしないのはなぜでしょうか?

中村氏:

自前での開発に挑戦した銀行も数行あります。彼らはソフトウェア開発会社に構築を依頼しましたが、開発・維持には多額の費用がかかり、品質も低いものになることがわかったのです。我々と組んで、可能な限り最良のロボアドバイザーを我々に開発・維持させた方が、銀行にとっては利益が生まれるわけです。


お金のデザインの「価格では競争しない」という戦略には感銘を受けた。日本はコストに敏感な市場だ。昔からのブローカーたちは費用が高く取扱手数料も高いが、アメリカやヨーロッパに比べると、投資家らはその費用の高さにあまり関心がない。この環境において、ライフスタイルブランドとして差別化を図ることには合点が行く。

しかし、投資家からの関心と透明性の確保が増すにつれ、手数料に関する強いプレッシャーが働くことは確実だろう。それがいつになるか言及することは難しいが。

お金のデザインによる銀行との提携は、スタートアップ提携のほぼ完璧な一例と言える。銀行は大市場へのアクセスをお金のデザインに提供し、他方、お金のデザインは銀行に新サービスを提供する。買収につながらない限り、このような提携は短期的なものになりがちだ。スタートアップと大企業の双方が常に成長機会を求めていると、最終的に利益は整理できなくなり転落が起こる、

言うまでもなく、お金のデザインはもはや提携を必要としないまでに成長しているが、素晴らしい成長軌道に乗っているように思えた。

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