鍵を超えた「サービス」へーーコネクティッド・ロック「TiNK」公開、不在時家事やメルカリのシェアサイクルにも導入へ

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インターネット接続型の鍵とその関連サービスを手がけるtsumugは11月9日、同社の提供するコネクティッド・ロック「TiNK」リシーズの製品発表を実施した。今回公開されたのは個別住宅の玄関に設置できるシリンダータイプの「TiNK C」と集合住宅のエントランス等に設置されている集合ロックに対応した「TiNK E」の2種類。今日から販売開始し、2018年初頭の出荷を予定している。

同社はこれにあわせ、既存投資家のiSGSインベストメントワークスからの追加出資も発表した。同投資ラウンドには新たな出資者としてメルカリ、シャープ、さくらインターネットなどが参加する予定。増資金の額や払込日などの詳細については開示されていない。

同社は販売のパートナーとしてアパマンショップホールディングスグループなどと連携し、賃貸物件への設置による内見業務の効率化を進める。

「TiNK」リシーズを導入することで入退居時の鍵交換にかかる費用が半分程度に軽減できるほか、家族間の鍵共有や家事サービスへの一時共有、子供や高齢者の見守りなど、付帯サービスを提供することで新たな月額モデル事業も提案できるとし、2021年までに100万世帯への設置および付帯サービスの提供を目指す。

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また、メルカリグループのソウゾウが2018年初頭に予定しているオンデマンドシェアサイクル事業「メルチャリ」においてシェアサイクル用のコネクティッド・ロックの共同開発を実施することも発表されている。

ネット接続によって実現する「安心」の月額サービス化、その他連携も

tsumug代表取締役の牧田恵里氏

本誌でも以前お伝えしていた製品が正式公開となった。スマートロックとして一般的な認識が広がりつつある「スマホ接続型の鍵」から一歩進んだ「ネット接続型の鍵」が今回公開されたTiNKだ。

従来製品を使ったことがある人であれば理解できると思うが、実はスマートロック「そのもの」がインターネット接続する必要はあまりない。セットアップや鍵のシェアなどは連携するスマホアプリの方で担当するからだ。また、ロックそのものをインターネットに接続するためには宅内に設置された別のインターネット接続網に繋げる必要があり、一定の知識がなければその操作は難しいことが予想されるだろう。

ではなぜ、わざわざTiNKはロック自体をネット接続させようとしたのだろうか?それには同社の事業的な展開が関係していると考えられる。

例えば今回、提携が発表されたアパマンなどとの取り組みではオートロックやキーのシェア、一時的なワンタイムキーといった既存のスマートロックでも提供されている機能だけであれば従来端末でも実現可能だ。しかし、その後に居住するユーザーに対して見守りやセキュリティといった「付帯」サービスを拡張しようとした際、インターネット接続を家主か居住者のどちらが用意するのかという問題に当たってしまう。

つまり、鍵に「接続」が含まれていることでそこから派生するサービスの選択を事業側に提供できるのがメリットといえるだろう。その点、TiNKは内臓されているLTEのモバイル通信を使うため、よりシンプルに外部サービスとの連携が図れるのが特徴だ。

一方で逆に個人宅への導入については月額費用が発生する分、従来型のスマートロックと同様の使い方ではメリットを感じにくいかもしれない。ここが「コネクティッド」と「スマート」の違いと感じた。

そして意識するのはやはりAmazonだ。先行して話題になった宅「内」サービスはカメラとスマートロックとの連携で発表された。この記事にもある通り、スマートロックは単なる「鍵」を超えて、個人や家族のプライベートを第三者に開放するゲートウェイの役割を果たすことになる。その先にあるビジネスチャンスは幅広い。

確かにホームセキュリティは、モノのインターネット(IoT)の出現とともに大きなビジネスとして浮上している。スマートフォンを使ってドアを施錠・開錠するホームアクセスシステムを構築したサンフランシスコに本拠を置くAugust社は、先週スウェーデンのロック大手であるAssa Abloyが買収した。また、ここには大型調達しまくっているRingがあり、同社は元々の事業であったビデオドアベルを超えて徐々に本格的なホームセキュリティ企業になりつつある。

スマートフォンや一般的な接続性を利用したホームセキュリティシステムに対する需要が大きいことは明確だ。これがAmazonが現在進出しようとしている領域なのだ。(引用: Amazonが家の「中に」配送できる宅内サービス「Amazon Key」発表、今後はハウスクリーニングなどの事業者との連携も

発表会の壇上に立ったtsumug代表取締役の牧田恵里氏も、パートナーとの連携の可能性を何度も伝えていた。

「共働きや母子家庭、高齢者など一般の賃貸物件には多数のライフスタイルがあります。家電と連携したホームコントロールや、不在時の宅配が完了すると通知が届くサービスなど、パートナー企業と一緒になればこういう世界が実現できる。鍵が単なるセキュリティから認証に変わることでサービスが増えればいいなと」。

今後の連携が計画されているカメラやモーションセンサー

同社はアパマンとの連携で2021年までに100万世帯のコネクティッドロックの設置を目指す。つまり、これらがサービス提供のマーケットとなりうるわけだ。また、Amazon Keyではカメラとスマートロックの組み合わせでサービス展開を考えていたが、TiNKでは検討中としつつ、モーションセンサーなどによる個別部屋への侵入検知など、より細かいサービスも考えているということだった。

まずは今回の発表で事業的な連携の可能性がある企業に向けて展開し、来年の発売以降の本格的な事業開始を目指す。

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