
Image Credit: Nano-C
ナノ構造の炭素を作り、エネルギーやエレクトロニクスへの活用を目指すアメリカの Nano-C は本日(4月18日)、1,150万米ドルの資金調達を完了し、エレクトロニクスとソーラー発電業界で新たな波を起こすと発表した。
同社はフラーレンやカーボンナノチューブとして知られる極めて小さな原子構造をベースとした、ナノ構造と呼ばれる基礎素材を作っている。この新素材の登場により、エレクトロニクスやソーラー発電、医療機器、自動車部品の分野で、革新的な製品が次々と生み出されるという。
資金調達額のうち、300万米ドルは半導体大手 Analog Devices の共同設立者・取締役会長である Ray Stata 氏から出資を受けたものである。Nano-C はマサチューセッツ州ウェストウッドに拠点を置いており、マサチューセッツ工科大学(MIT)が考案したテクノロジーに基づいて事業展開を進めている。パートナーシップを結んでいる相手先企業は、すでに Nano-C 独自の新素材をベースとした、刺激的な新製品をローンチする準備に入っている。
Stata 氏は声明で、以下のように話している。
この新素材は多くの市場において、未来のイノベーションを生み出す重要なカギとなります。なぜなら、従来の素材では提供できなかった品質を有しているからです。今後影響を与えるであろう市場や用途に目を向けると、Nano-C は成長するチャンスに恵まれていることがすぐにわかります。私がその未来の一員になれることを、非常に嬉しく思います。

Image Credit: Nano-C
Nano-C の社長兼 CEO を務める Viktor Vejins 氏は、声明で以下のように語っている。
弊社のクライアントは、それぞれの業界でリーダー的立場になろうとしています。その理由は、成功するために不可欠となる弊社の素材ソリューションの力を活用することができるからです。そして、今回 Stata 氏が弊社取締役会のオブザーバーに加わってくれることを嬉しく思います。弊社の事業成長を持続させるため、同氏からアドバイスや指導を今後受けていきたいと考えています。
新たに調達した資金は、既存顧客と今後の顧客へのサポート拡大のために使われる。また、需要増加への対応に向け、ウェストウッドにある工場での増産、ならびに人材増員も可能になる。

Image Credit: Nano-C
ベンチャー企業 Fontinalis Partners の共同設立者である Chris Cheever 氏は、声明で以下のように語った。
Nano-C の利用範囲の拡大ぶりは、素晴らしいとしか言いようがありません。商業化に向けて Nano-C の勢いが加速しており、とても興奮しています。
Cheeever 氏は、Fontinalis Partners が2012年に300万米ドルを投資した後、Nano-C の取締役会に参加した。
Nano-C が手掛ける新素材は、幅広い市場で展開中だ。Nantero と提携を組み、新世代の不揮発性のランダム・アクセス・メモリ(NRAM)チップの開発に、Nano-C 製のカーボンナノチューブを使用。それにより、現在主流の DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ。コンピュータの主要メモリ、他多くのデバイスで使用)より圧倒的に消費電力が低く抑えられ、DRAM 並みの読み書きスピードが期待できる。
Nantero は最近、主要な戦略的投資家に Cisco Investments や Dell Technologies Capital、Kingston Technology Corporation、CFT Capital、Schlumberger がいると公表した。さらに、富士通が2019年に NRAM 製品を初めて市場に出す計画があると正式に発表している。
Nano-C の技術は光起電力装置、または太陽電池でも活用されている。ドイツの大手企業 Merck の The Performance Materials Division は、Nano-C が開発したカスタム小分子を、柔軟性に優れた有機薄膜太陽電池(OPV)デバイス用のポリマーに組み込む計画を立てている。3軒の商業用デバイス工場(うち1軒は完成前に売却)が運転可能な中、供給に関する契約交渉はまだ進行中である。
Irresistible Materials とも提携を組んでおり、Nano-C の分子を新型のフォトレジストに採用している。これにより、半導体産業は極端紫外線(EUV)リソグラフィ経由で N5ノードへの進出が可能となり、ムーアの法則を維持できる。複数の大手メモリチップ・ロジックチップメーカーは2018~2019年に、素材のパイロット実験を行うことを目標にしている。
Nano-C は特許を取得した透明カーボンナノチューブフィルムを適用させるため、ディスプレイメーカーとも提携している。そこには、従来の酸化インジウムスズ(ITO)フィルムを「補強」するための特許コンセプトも含まれている。商業用 ITO フィルムの製造メーカーと行った初期テストによると、機械的耐久性において30倍を超える改善が見られたという。実質同コストで従来の ITO と取り換え可能なので、商業化は劇的に加速する可能性がある。Nano-C は、2001年に設立された。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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