本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。
現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。
Image credit: Baroque Street
7月2日、バルト三国の一つリトアニアの首都ヴィリニュスにある仮想通貨・ブロックチェーンに特化した技術センター Blockchain Centre Vilnius(以下、BC Vilnius)を訪れた。本施設は技術センターと謳っているが実態はコワーキングスペースであり、先月寄稿したスイスの Crypto Valley Labs と同様、リトアニアの仮想通貨・ブロックチェーン業界におけるエコシステムの中心的役割を果たそうとしている。
以下では、BC Vilnius との面談内容を中心に、一部他社の発言も交えてリトアニアの仮想通貨・ブロックチェーン事情について考察する。
Blockchain Centre Vilnius が掲げる3つのビジョン
BC Vilnius は2018年1月に設立された、仮想通貨・ブロックチェーンに特化したインキュベーション施設である。施設会員に対し提携先あるいはメンターと呼ばれる専門家が法務・税務・マーケティング等各方面でのサポート行う。また、欧州だけでなく中国、オーストラリアにも提携先があり、投資家の紹介や進出支援等を行うことで施設会員の事業促進を図っている。経営陣には起業家や投資家だけではなく、欧州議会やエストニア政府での経歴を持つ人もおり、官民ともに知識が豊富と言える。
上述した通り、基本的な役割は他のインキュベーション施設と何ら変わりないが、BC Vilnius は経営理念として以下3つのビジョンを掲げている。
勉強会などのイベントが行われているスペース Image credit: Baroque Street
第二に、彼らが力を入れているのは業界内におけるスタートアップの育成である。そのサポート体制として特筆すべき点はメンター制度でだ。メンターとは、名前の通り施設会員の指導的役割を担う立場を指し、審査は必要なものの誰でも web サイト上から応募することができる。
この制度の狙いは海外から様々な専門性を持った人材を本施設に招き入れることにあるが、今いるメンターもリトアニア国内に限らずドイツ、香港、オーストラリア等海外で活躍する人が含まれ、そのバックグラウンドも起業家、技術者、法律家等さまざまである。今後メンターが増えていけば施設会員へのサポート体制も充実し、集合知として BC Vilnius が業界内で果たす役割も大きくなるだろう。
壁には、ビットコインの論文が1ページずつ掲げられていた。 Image credit: Baroque Street
3. コミュニティ形成
最後に、彼らが力を入れているのはコミュニティ形成である。施設会員そして BC Vilnius の提携先を増やすことでネットワークを拡大し、欧州における仮想通貨・ブロックチェーンの中心地になることを目指している。現在の施設会員数は8社と少ないが、今ある席は既に満席。その内訳は国内外・業種とさまざまで、中には日本で知名度の高い NEM も含まれている。
施設拡大の予定はあるが時期は決まっておらず、現在は南米コロンビアでの新たな施設設立を検討している。リトアニアは Monetha や Bankera 等これまでも多くの ICO プロジェクトを輩出してきた。BC Vilnius を中心に政府や金融機関とも連携し、これらの一体感をどのように生み出すかが今後の業界発展のために重要となるだろう。
仮想通貨・ブロックチェーンを通じ、第二のエストニアへ
施設内には複数のチームが入居し、サービスの開発を進めている。 Image credit: Baroque Street
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Dymon Asia Ventures のパートナーである Chris Kaptein 氏は次のように話す。
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