O2O、データ、ブロックチェーンが中国の不動産業界に革命を起こす(前編)

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北京の CBD
Image credit: sepavo / 123RF

【情報開示】

本稿は、原文出典元である Technode(動点科技)が記事の制作において不動産大手 JLL による協力を受けています。THE BRIDGE は本稿の翻訳掲出にあたり、JLL や Technode から資金の提供は受けていません。

中国は混雑している国であり、家と呼ぶ場所を見つけることは時に困難だ。史上最大の都市化の中で地方から都市部へと人間が流れ込み、McKinsey の見積もりによれば、中国は毎年3億平方メートルの新たな住居を必要とすることになる。そしてそれは住宅市場だけではない。中国の経済がサービス産業へと移行していくにつれ、オフィスビルや小売スペースの需要も急速に増大している。

だが需要があるところにはイノベーションもある。小売やモバイル決済といった分野で中国が示してみせたように、テック企業は新たなソリューションに向けて一気にジャンプする準備ができている。不動産と技術が合わさったものは不動産テックと呼ばれ、中国の不動産業界の多くの頭痛の種の解決を約束するものだ。

当然のことだが、技術は常に産業の一部分である。今の建設作業員はドローンに助けられており、レーザーとロボットが集合住宅に最良の立地を決め、技術者は建設のアイデアをテストするために BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)を通じてデジタル的に家を建て、そして3Dプリンターは17世紀風の邸宅をたった1日で中国に供給している。不動産テックはこれらの技術を取り込み、また、私たちの生き方や働き方を変える新たなビジネスモデルやプラットフォームを生み出している。

上海の Winsun(盈創建築科技)が 3D プリンタを使って建設したマンション
Winsun(盈創建築科技)

イノベーションと不動産テックに力を入れている JLL のチームのメンバー James Hawkey 氏はこう述べた。

世界的に不動産は慎重に動く非常に保守的な業界として知られています。技術の採用も比較的遅かったのですが、今では物事は急速に変化しています。

活発な開発市場やテックのソリューションの素早い採用を考えれば、中国では不動産テックは大きなチャンスです。

イノベーションと不動産テックに力を入れている JLL のチームのメンバーである James Hawkey 氏はこう述べた。

不動産テックは様々な方法で分類されるが、その発展は断続的に訪れている。最初の波が現れたのは10年前、不動産に力を入れたオンラインポータルとアプリの登場時だった。2番目の波は利用可能になった不動産に関する豊富なデータから生まれた。この豊富なデータは企業により多くのインサイトを提供し、また顧客に対しては仮想現実や拡張現実を通じて不動産を理解する新たな方法を提供している。3番目の波である不動産テック3.0は次に来るものであり、そこには IoT、ビッグデータ、スマートビルディング、そしてブロックチェーンが含まれる。

バーチャルな家に入ろう

多くの不動産テックのソリューションはすでに確立されている。仲介と不動産リストの収集を行うアプリには中国最大の不動産ユニコーン企業 Lianjia(鏈家、Homelink)や、不動産テック1.0の登場を促した Anjuke(安居客)といったものがある。

より最近では、不動産業者は不動産テック2.0であるVRやARといったものを売りにして顧客を引き付け始めている。Kujiale(酷家楽)のような企業は購入者の家の視覚化だけでなく、購入者自身をはるか遠くまで移動させることも可能としている。51VRは不動産開発業者に大規模でインタラクティブな視覚化を提供している。

知識のある購入者はさらに専門的なツールを用いて、購入を確実なものにしている。Property Passbook(金房本)のようなプラットフォームはデータを活用して、投資に対するリターンを計算している。商業市場では、Haozu(好租)がオフィスを、Lepu(楽普)が小売の物件をカバーしている。他にも多数あるが、市場の専門家はまだまだ先は長いと言っている。アメリカの商業不動産情報企業 CoSter のような市場支配力には、まだ近づくこともできていない。

不動産のサービス部門の最大で40%は自動化の影響を受けやすいと McKinsey は計算している。不動産プラットフォームは自動化に向けた最初の一歩であり、不動産を探す者にとっては大きな助けとなる。究極的には、より多くの取引がオンラインで処理される可能性がある。私たちは今ホテルの予約をオンラインで気軽にできるが、オフィスや店舗を同じようなプロセスで借りられるようになるのは、あとどれくらい先のことだろうか?

所有に対する過大評価

中国では自分の家を持つということが今でも重要な人生の節目であるが、シェアリングエコノミーの高まりによって、人々は所有という概念を再評価し始めている。Airbnb に対抗する Tujia(途家)は、中国の豊富な資源である空アパートを活用することで、旅行客に貸し出しを始めている。

中国のテック複合企業 Tencent(騰訊)が支援する Ziroom(自如)は借り手に対してアパートを提供しているが、丸ごとでも共有してでも、1ヶ月でも1年単位でも、柔軟に行っている。

同プラットフォームの顧客である Cherry Zeng 氏は次のように述べた。

引っ越すこともできますし、支払いの方法も選べます。清掃や修繕も注文できますし、請求書はすべてアプリを通じて送られます。

商業市場もシェアリングエコノミーを取り込んでいる。中国におけるコワーキングはここ何年も大きな成長を遂げており、UCOMMUNE(優客工場)や KrSpace(気空間)、MyDreamPlus(夢想加)のような現地のコワーキング企業は、もはやテックのスタートアップに過ぎないとは言えない。今や企業は大きな柔軟性のためにコワーキングを利用しようとしており、将来的に自身にディスラプションをもたらすかもしれないスタートアップとつながりたいとも考えている。

中国のコワーキング企業調達額上位10社
Image credit:TechNode(動点科技)

後編へ続く

【原文】

【via Technode】

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