
シンガポール航空は、マイレージサービスである KrisFlyer の加入者が持つエアマイルをデジタル通貨に変換できるブロックチェーンベースのデジタルウォレット「KrisPay」をローンチした。
加入者は15KrisPay(0.07米ドル相当)から利用でき、同国にある18の提携店で支払いができるようになる。その中には、飲食店、ガソリンスタンド、美容小売店などが含まれる。
同航空は2月に、「まず最初に、シンガポール市場にある小売店と提携する」と語っていた。
KrisPay のブロックチェーンはシンガポール航空が民間所有している。ネットワークに参加しているパートナーのみが、ブロックチェーン上での取引に参加することが可能だ。
KrisPay は、同航空や監査法人の KPMG、テクノロジー大手 Microsoft が共同で行った概念実証(POC)の成功後にローンチされた。ブロックチェーン商品のテストや小売店舗とのトライアルも関連して行われた。
ブロックチェーンのメリット
昨年、KrisFlyer 会員のエアマイルは総額7億米ドル相当に達し、2011年の4億4,500万米ドル、2014年の5億7,300万米ドルからアップした。
ブロックチェーンのクリプトウォレットは、マイル消費のため小売店で商品を購入するという新たな手段を実現させ、同航空の在庫削減に役立つものとなる。
ブロックチェーンは分散型で、1つの場所で情報を保存しない性質を持ち、ネットワークに属する全てのパートナーは取引から生じる一連の情報を共有する。これにより、ネットワークに障害が起きても報酬システムを復元できると AI・ブロックチェーン会社 Hearti の CMO、Kenneth Tan 氏が語っている。
1つのサーバーネットワークがダメになったとしても、顧客情報やマイルのデータは全て安全に保存されています。
また、ブロックチェーン上の取引履歴は恒久的でかつ変更も取消も不可能なので、履歴はもちろんのこと、顧客の詳細情報も改ざんすることはできないと Tan 氏は付け加えた。
さらに、取引を遂行する仲介人も必要としないため、全ての償還は即座にシステム上で承認され、アップデートされるという。
パートナーはアップデートされた顧客の情報やマイルをリアルタイムに取得できるため、シンガポール航空は彼らを迎え入れやすくなると Tokenize Exchange の設立者 Hong Qi Yu 氏は語った。
Hong 氏は次のように説明する。
全てのスターアライアンスのメンバーが輪になり、統合された報酬システムを構築することにより、ブロックチェーンのネットワークはさらに拡大することができます。
報酬プログラムを超えて
KrisPay は単に報酬を還元する手段に留まらないポテンシャルを秘めていると専門家は話す。デジタル通貨は資金を調達する方法、そして投資商品として利用でき、現金化することも可能だ。
例えば、シンガポール航空は今後、独自のトークンを販売し資金調達を行うイニシャル・コイン・オファリング(ICO)をローンチすることもできる。
また、仮想通貨取引所で報酬トークンを上場させることで、所有者は他の仮想通貨、もしくは法定通貨に交換できると Hong 氏は語る。これにより、シンガポール航空のマイルの価値は高まり、飛行機を利用する客が増えると Quadrant Protocol の設立者 Mike Davie 氏が付け加えた。
ブロックチェーンに参入するのはシンガポール航空だけに留まらない。他の航空会社もブロックチェーンや仮想通貨を業務に取り入れるために、実験を行っている最中だ。
アメリカを拠点とした Surf Air は昨年、チケット代の支払いに仮想通貨を利用できる計画を発表した。ドイツのエアライングループ、ルフトハンザ航空とニュージーランド航空はスイスのスタートアップ Winding Tree と共に、ブロックチェーンベースの旅行アプリの開発に取り組んでいる。
【via Tech in Asia】 @techinasia
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