ブロックチェーンで勃発する「中国元」vs「米ドル」戦争

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ニュースサマリー:中国国家主席を務める習近平氏は25日、中国共産党中央政治局にてブロックチェーンをイノベーションの中枢とする趣旨の発言をした。

従来、中国はビットコインをはじめとする暗号通貨には否定的な姿勢を見せてきていた。しかし、同国でWeChatなどを展開するテンセントが19日にブロックチェーンホワイトペーパーを公開するなど、中国におけるブロックチェーン市場の展望が少しずつ動き出しているようだ。

話題のポイント:中国市場で暗号通貨取引が規制を受けたのは2017年。政府は市場に対し否定的な立場を取っているのではないかと思いがちですが、今回習近平氏の発言にもあるように、ブロックチェーン技術の研究・開発に関して積極的な姿勢を見せ始めています。

日本の中央銀行に当たる中国人民銀行では「元」をデジタル化させ、デジタル人民元としてブロックチェーンを軸に管理する構想を抱いているとされています。ではなぜこのタイミングで中国がブロックチェーンというキーワードを、それも国家主席という立場を通した発言で強調してきたのでしょうか。

ブロックチェーンを利用したデジタル通貨という枠組みで見れば、デジタル人民元にとって一番のライバルは現時点ではFacebookのLibraに相当します。

同プロジェクトをリードするDavid Marcus氏は17日の米Bloombergにて、デジタル人民元がグローバルに成長すると発言。加えて、米国がLibraを規制する構えなのに対し、中国では今回のように国家が主体となって進めている状況だとも述べています。

まさに、この発言を裏付けたのが今回の動きです。習近平氏の声明は少なくともLibra、さらには米国政府を牽制しているともいえるでしょう。もっと言えば、いま市場を握ってしまう絶好のチャンスとも考えられます。

<参考記事>

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米国政府は以前取り上げたように、Facebookのプライバシー問題からLibraの信憑性を問い続けています。また、2020年に迫った米国大統領選に民主党より出馬候補予定のElizabeth Warren氏はFacebookの “解体” を政策にあげるなど、非常に強気な姿勢を見せており、仮想通貨構想に関しては中国とは真逆とも言える流れが出来てしまっているのが現状です。

もちろん今までもITと政治は切っても切り離せない関係性でしたが、今後、中国 vs アメリカ、さらには「中国元」 vs 「米国ドル」まで考えたとき、ブロックチェーンという金融に近いテクノロジーをどこまで政府が利用できるかに焦点が集まるでしょう。

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