バンコクのイノベーションハブTrue Digital Park、デジタルトランスフォーメーション推進のために新たなカンファレンスを開催

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True Digital Park 社長の Thanasorn Jaidee 氏、CP グループ CEO の Suphachai Chearavanont 氏、タイ副首相の Somkid Jatusripitak 氏
Image credit: True Digital Park

東南アジアにおいてスタートアップのエコシステムが急速に成長しているのは誰もが知ることである。この地域は10社のユニコーンスタートアップのホ-ムであり、投資家にとって最も魅力的な場所の1つとなっている。タイはとりわけ起業家にとって初期段階の市場だ。Global Entrepreneurship Index 2018では、世界の137か国の中で71位に位置し、アジア太平洋地域の28か国の中では15位につけている。

近年タイ政府はテックのエコシステムを作り上げようと力を注いでいる。イノベーションの促進を目指す政府機関である National Innovation Agency(NIA:タイ国家イノベーション庁)は、金融的なサポートプログラムを全面的に見直し、スタートアップがより速く進めるよう手助けし、440億バーツの金融支援にアクセスできるようにしている。同庁の主な目標は、今後10年でイノベーションを基としたスタートアップ3,000社を作り、スタートアップのエコシステムを育て、成長させることである。

同庁はまた、同国初にして東南アジア最大のデジタルイノベーションハブである True Digital Park(TDPK)ともパートナーシップを結んでいる。バンコクに拠点を置くこの国際的スタートアップハブが目指すのは、スタートアップにとっての遊び場のようなものであり、統合されたコミュニティの中で職場と日々の生活の場を提供している。これらの取り組みが、タイのデジタルトランスフォーメーションに対する熱心な姿勢を強く際立たせている。

微笑みの国のデジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションと聞いて多くの人が真っ先に思いつくことは、単純に日々の手作業や活動がデジタルな枠組みに移行するということだが、実際はそれよりもはるかに幅広い。

The Enterpriser’s Project によれば、ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションとは「どう運営するのか、価値をどう届けるのかを根本的に変えるもの」である。そこにはまた、「現状や体験への継続的な挑戦、および失敗への寛容さを組織に求める、文化的な変化」も含まれる。

これはエコシステムにも当てはまり、すでに確立されたプロセスを再考するイノベーションを推し進めるものだ。例えば、ソーシャルメディアは全世界に全く新しいコミュニケーション方法とシェア体験を提供し、以前には想像もできなかった方法で社会を再構築している。人々のつながり合い方に起きたイノベーションはデジタルトランスフォーメーションを起こし、結果として幅広い同時代的な変化を起こしている。

ビジネスや生活など無数の分野がトランスフォーメーションの只中にあるが、デジタルトランスフォーメーションの核心的な部分においてイノベーションがどのように脈打つのかを最も分かりやすく示す例の1つは、今でもソーシャルメディアである。非常に一般的なものとなり、人々の日々の日常だけではなく、ビジネスの一部ともなっている。

タイの TDPK は同地域におけるこういったデジタルトランスフォーメーションが根を張ることができるかもしれない場所だ。このパークは人材と投資を大量に集め、デジタルイノベーションをサポートする重要な知識の創造を提供している。イノベーションが盛んで大きく広がる場所の中心に位置取っている TDPK は、この地域のスタートアップエコシステムを促進し、そのポテンシャルを飛躍的に加速させている。

Togetherness of Possibilities(可能性の連帯)——地域の橋渡し

Image credit: True Digital Park

2019年9月、TDPK はスタートアップやビジネス、そして政府省庁に刺激を与え、知識や体験を共有するために、Togetherness of Possibilities というテックカンファレンスを開催した。カンファレンスで取り上げられたのは、この分野の官と民の部門のパートナーが展示する新技術とイノベーションラボ、ならびに、タイと東南アジアでより持続可能なデジタル経済発展を進めるための仕事をしている最高経営幹部や起業家たちだった。

Charoen Pokphand Group の CEO でありTrue Corporation の役員会のチェアマンでもある Suphachai Chearavanont 氏はこう述べた。

イノベーションとデジタル技術は、デジタルトランスフォーメーションの推進力です。特に、製品やサービスに付加価値を与えるために、ビジネスモデルの変化やデジタル技術の適用を必要としている企業や産業にとってはなおさらです。

一方でデジタル技術は、コミュニティや社会、医療や環境をより良いものにするためのデジタル化においても、重要な役割を果たします。所得格差を縮小し、タイの持続可能な繁栄を築く上で役に立ちます。True Digital Park はイノベーションや創造性、そして技術を通じて、タイの能力を増大させるために開発されています。これらすべての要素が結びつき、長期的に持続可能な経済成長を作り出すのです。

TDPK の Togetherness of Possibilities 2019カンファレンスでは、新進の起業家に対して、タイおよびその他の国々の大手企業やスタートアップから来た専門家や高評価な発表者との出会いを提供した。

特筆すべき出席者を幾人か挙げると、Digital Economy Promotion Agency(デジタル経済振興庁)のエグゼクティブバイスプレジデントの Chinawut Chinaprayoon 博士、NIA 主催のイベント「Startup Thailand」のディレクターである Pariwat Wongsamran 氏、Action Community for Entrepreneurship(ACE シンガポール)のデピュティチェアマンである James Tan 氏、Saigon Innovation Hub のチェアマン Phi Van Nguyen 氏、General Assembly のアジア太平洋地域マネージングディレクターのS. Ryan Meyer 氏、Asia Partners の共同設立者兼マネージングパートナーの Nicholas Nash 氏、そして500 Startups のマネージングパートナー Khailee Ng 氏である。

カンファレンスは丸一日にわたって開催され、日程表には話し合いやフォーラム、そして参加者が議論したりブレインストーミングしたりすることができるネットワーク作りの機会が詰め込まれていた。キーノートの発表者である Technode の設立者兼 CEO の Lu Gang 博士は、将来性がある中国の未来と世界的なイノベーションおよびテックについて話をし、一方でパネルディスカッションでは、東南アジアのテックエコシステムにおける企業改革やプレイヤーの発展、そしてユニコーン企業の可能性が詳細に議論された。

地域における統合と支援

このカンファレンスにおける最も大きなポイントは、東南アジアのテックエコシステムにとっての、統合と相互支援の必要性だった。あるパネルの中で Pariwat Wongsamran 氏はこう述べた。

実際、私たちの国々(マレーシア、シンガポール、ベトナム、タイ)には、ASEAN のスタートアップを支援するプログラムがすでにあります。それらを同じプログラムの中に合わせることができます。

私たちはデータを共有し、投資の役に立つようにすることができます。ベンチャーキャピタルは1つの国だけに投資しようとは考えず、東南アジア全体に投資しようと考えます。だからこそ、私たちは協力し、ランディングパッドやローンチパッドのような既存のプログラム、および交流プログラムを活用し、スタートアップの手助けをすべきなのです。

TDPK の Togetherness of Possibilities のようなテックプレイヤーの集まりは、地域にネットワークを作り地元のスタートアップを力づけるために、非常に重要である。エコシステムのすべての関係者にそれぞれの視野やアイデアを超えたものに触れる機会を与え、究極的には誰もが順調に進めるように地域全体を俯瞰的に見る広い視野を作り上げる。同じようなアイデアや同種のビジネスコミュニティを防ぎ、同時に、スタートアップやビジネスの間の健全な競争を促進する。

東南アジアにおけるシンクロニシティの重要性

広大な東南アジア市場に入ろうとしている海外のスタートアップや、イノベーティブな新しいビジネスにポートフォリオを拡大しようとしている海外の投資家も、こういった集まりには引き付けられる。タイには東南アジアの中心地としての特権があり、この地域を活用し翼を広げたい海外のスタートアップが拠点として使用するポテンシャルがある。

投資家もこの地域には積極的に関心を寄せており、Financial Times によれば、2019年上半期における東南アジアのテックスタートアップの買収は倍以上になっている。同時期の取得の額は49億米ドルに上り、インドネシアの Go-Jek のようなユニコーンがリードしたものだった。

シンガポールの Golden Gate Ventures のレポートや Insead ビジネススクールはこのトレンドが高まると予想しており、2023年から2025年の間には少なくとも700社のスタートアップがイグジットすると概算している。Golden Gate Ventures のパートナーである Michael Lints 氏は、リサーチによれば多数の世界的な投資家がこの地域に資本を投下しようとしており、もっとも高い興味を示しているのがアメリカ、次いで日本、韓国、そしてヨーロッパの一部であると Financial Times に語っている。

TDPK は国と地域の両方で持続可能な開発へのタイのコミットメントを反映している。同社は投資家や広い市場へのアクセスに関して地元のスタートアップが直面している困難およびディープテックの欠如について認識しており、これらのスタートアップがもっと世界規模の見通しを持てるよう、積極的に機会を作り、方策を打ち出している。タイのエコシステムは始まりはゆっくりであったが、その速度を上げて世界中から注目を集めるようになってきている。

Togetherness of Possibilities の開催中、TDPK はスタートアップエコシステムの完成を発表し、地域のデジタル経済を前に進めるための準備をさらに強化した。タイがアジアにおけるイノベーションと起業の主要なハブとなる見込みは、手の届く範囲にある。TDPK はつながり合いと知識の共有を促進させるスタートアップエコシステムの完成に注力することで、スタートアップやテック起業家がポテンシャルを今後フルに発揮できるよう手助けするという使命を進めている。

このイノベーションハブの繁栄のために、TDPK とその他タイの官と民の両機関は、他の東南アジアのハブによる協力と資本をさらに求めなければならない。それはすでに熱心に行われており、パートナーシップや同国の起業活動への興味という形で実を結んでいる。このままの調子で続いて行けば、タイの目標達成を妨げるものは何もない。

【via e27】 @E27co

【原文】

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