2019年に注目したい「不動産市場7社」と「3つのトレンド」まとめ

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本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。いち早くニュースをチェックしたい人はこちらを参照してください。

今回は2018年にFreaks.iDで紹介した不動産スタートアップを紐解き、大きく3つのトレンドを簡単に紹介していこうと思います。

1.高級民泊の登場。ベネフィット付き不動産が流行りの兆し

2018年はアパートメントに代表される従来の不動産の業態が大きく変わった年でした。

12月には新築アパートメントの空室を民泊として活用する「WhyHotel」が1,000万ドルの資金調達を行いました。24時間のホテルマンサービス付き高級民泊サービスを提供しています。同社はこの業態を「ポップアップホテル」と称しています。

同様の業態に高級アパートホテルを運営する「Domino」が挙げられます。10月に1,200万ドル調達をしたDominoは、料理の提供からNetflixに代表されるアメニティの提供も含まれる高級民泊物件を扱う不動産スタートアップです。

Airbnbの登場以来、各国で民泊サービスが多数立ち上がりましたが、昨年は民泊の概念が大型不動産にも及び、かつ各種ベネフィットが付く高級サービスが流行った印象です。たとえば、Amazon Dash Buttonにも似た1クリック呼び出しボタンを押すと、ホテル並みの清掃サービスをオンデマンドで受けられる「Mint Apartment Cleaning」が10月に225万ドルを調達しています。

単なる民家を宿泊施設にするのではなく、これまで長期契約者しか住めなかったアパートにも民泊事業が広がりました。加えて、アパート民泊にはホテル並みのベネフィット・アメニティがAdd-onされています。こうしたトレンドから、今後健康サービスやアパレル系サービスなどもアパート滞在に付加されてくることが予想されます。

2.「所有」と「共有」の橋渡し

一軒家を購入するには多額の頭金が必要となります。そこで登場したのがイギリス発の共同オーナーシップ不動産購入サービス「Unmortgage」。9月に1,000万ユーロを調達しています。顧客は購入金額の最低5%を支払うだけでUnmortgageと共同して住宅を購入することができます。

居住者は毎月一定の賃貸料を支払い続けることで住み続けられます。加えてUnmortgage側が負担した最大95%の住宅購入額を毎年一定額ずつ買い戻していきます。顧客の所有オーナーシップ率が100%になり次第、物件が自分のものなります。仮に何年か住み続けた後に転居を決めた場合、所有オーナーシップ率を買い戻してもらえるのでキャッシュバックが発生します。

月額賃料を支払いながら住み続けられ、気に入ったらオーナーシップを買っていく「所有」と「共有」の橋渡しのビジネスモデルです。住宅ローンなどとは違い、高額な利息かつ長期間の返済義務が伴いません。非常に柔軟性の高い住宅購入オプションと言えるでしょう。

似たようなサービスに低所得者向け住宅ローンサービス「Divvy」が挙げられます。10月に著名VC「Andreessen Horowitz」らから3,000万ドルを調達しています。Divvyの場合、転居することはできません。居住開始から3年以内に物件購入額の5%と金利を毎月支払い続ける必要があります。しかし、住宅ローンを借りられない低所得者は3年の支払いを経ることでクレジットを貯めることができ住宅ローンの借り入れができるようになります。この点、住宅所有の橋渡しとなっていると言えるでしょう。

UnmortgageもDivvyも高級商材を購入するためのブリッジとなるサービスで急成長しています。ここで注目すべき点は、なんでもレンタル/共有する時代になっていると思われがちですが未だに「所有ニーズ」が多いに存在する点です。この点、不動産だけでなく高級家電や家具、アパレル商品の購入に「所有」と「共有」の橋渡しをする支払いオプションが日本でも導入される余地があると考えます。

3.「ゴーストレストラン」の台頭

「UberEats」に代表されるオンデマンドフード配達サービスが急増。こうしたサービスに料理を提供するノーブランド業態「ゴーストレストラン」が登場し始めました。

たとえばマカロニチーズレストランを運営する「Mac’d」が挙げられます。著名アクセレータ「Y Combinator」のプログラムを卒業しています。マカロニチーズを調理できるシェフを対象に月額でシェアリングキッチンサービスを提供。利用者はUberEatsやPostmates、DoorDashなどの配達サービス向けにチーズ料理を提供します。

シェフ個人がわざわざレストランを立ち上げる必要がないため、初期投資不要で料理を提供できるようになります。また、Mac’dを通じて配達拠点周辺の配達需要や顧客データ、運営ノウハウが溜まるため将来的にレストランを持つことを考えているシェフにとっては開業前の業務試験運用にもなります。

Mac’d同様にシェアリングキッチンを運営する「Kitchen United」も10月に1,000万ドルを調達。「キッチンの共有」と「配達サービスとの連携」を軸にした業態がトレンドとなっていることが伺えます。

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