ピックアップ: Awair raises $10M to help customers like WeWork monitor their office environments
ニュースサマリ:2019年4月、室内空気データをモニタリングする「Awair」がシリーズBで1,000万ドルの資金調達を行った。同社は2013年にサンフランシスコで創業、累計調達額は2,110万ドル。
温度、湿度だけでなくCO2やPM2.5、騒音度合いなどの空気計測を通じてわかる諸データを収集する。端末価格は199ドル。2015年からコンシューマー市場向けに製品展開を始める。2106年末頃から企業向けにも展開を開始。
企業向けダッシュボード上ではAwairを設置したオフィス各地点の空気データを確認できる。特定箇所からアラートが出た場合、担当者が空調設定をするなどの対応をする導線。
現在WeWorkやAirbnbを筆頭とする約300社の企業顧客を獲得。今後エンタープライズ向けの営業リソース強化するという。
話題のポイント:本記事のポイントは「生産性に関わるあらゆる要素をレバレッジする」というWeWorkの戦略です。
Awairは家庭用IoT「Nest」「Amazon Echo」との連携機能を3年前に発表。当時は2C向け市場拡大を狙っていました。しかし市場選択の課題点が2つほど浮上したと考えられます。
1つはユーザーアクション。一般ユーザーが室内のCO2や湿度が高い表示を見せられたとしてもすぐにアクションプランに繋がりません。たとえば除湿機を持っていない家庭にAwairを置いたとしても対応策がありません。特に欧米では家屋備え付けの空調設備があるのば当たり前であるため、部屋毎の細かな調整ができません。
上記の点を解決するために外部ハードウェアとの連携を目指しましたようですが、IoTを複数台購入し連携させるギークユーザーは稀と言えるでしょう。スケール性に欠けます。
もう1つは利用シーン。Awairが置き換える従来の器具は室内気温/湿度計。より高度にデータ計測できる市場ポジションを狙ったようですが、Amazonで$10ほどで購入出来るものを置き換えようとしても無駄な機能をたくさん備えた高級品にしか見えません。
室内気温/湿度計を置いたところで何をモチベーションに使い続けられるでしょうか。先述した具体的なアクションが見えづらい製品ではどのような課題解決の利用シーンで使われるのか想像しづらいです。
そこでAwairが次の一手として選んだ市場がWeWorkに代表されるコワーキングスペースや大型オフィス。
2017年に『gcuc』が発表したデータによると 2017年のコワーキングスペース数は世界中で1.4万拠点に及びます。 2022年には3万拠点を超え、利用者数は500万人に至るとも予想されています。
「生産性の最大化」が顧客価値の大きな軸になるコワーキングスペース事業者にとって、心地の良い空間作りが重要となります。大手スタートアップにとっても同様のことが社員に対して言えるでしょう。
空気内のデータを読み取り、利用者にとって仕事のしやすい環境であるかを随時把握することは、十分業務の一環となるはずです。ここでコミュニテイマネージャーやHR部門にとって利用シーン/モチベーションが明確になります。
また、家庭では用意しきれない業務用空調設備を完備させる予算を企業は持っています。この点、家庭とは違い空調管理を徹底的に行える環境が整備されており、担当者がAwairを使った対応アクションも簡単に想像がつきます。
とりわけWeWorkにとって、2018年に買収したミーティングルームの予約サービス「Teem」との連携も可能となるはずです。同社はAirbnbやSlack、Lyftを筆頭に2,800社の顧客企業を持ちます。
Teemはすでに膨大なミーティング室の利用状況データを保有しています。どの時間帯にどのくらいミーティングルームが使われるのかといった日々のトレンド情報を予測できるでしょう。
こうしたビックデータとAwair経由で獲得できる空気情報を紐づければ、空調設定を自動で最適化するシステム構築に使えます。
たとえば「月曜の朝にはミーティング室の利用率と参加人数が多い。1室当たりの利用数が多いためCO2と湿度が高くなる可能性が高い」といった具合。こうしたトレンドがわかれば、快適な空調にすべく事前設定ができるはずです。
ちなみにAwairの背景を踏まえるとユーザーの呼吸から心理状態を図るIoT「Spire」も十分にWeWorkやAirbnbに代表されるスタートアップに導入される可能性があるでしょう。
同社は呼吸数やスピード、幅などの細かな情報からユーザーの緊張度合いを計測します。Awairと同じく空気関連のIoT。トラブル対応センターで働くテレフォン担当のストレス度合いなどを図る2Bシーンで利用が進んでいます。
ここまで説明してきたAwairやSpireは、データ資産が十分に溜まれば将来的にWeWorkに代表される不動産企業に買収される可能性を多分に含んでいると考えられます。
さて、今回はWeWorkを筆頭事例に話を進めましたが、2C向けで展開していたIoTが2B市場に参入した際に真価を発揮し、ビックデータ獲得デバイスとして日の目を見るかもしれません。起業家や投資家はこの視点を見据えて市場を読み解くと良いかもしれません。
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