今年やった採用手法は「1回全部捨てる」の真実ーーサイバーエージェントに学ぶ組織論【対談・2/3】小澤政生×諸戸友

image_3
写真左:TechBowlの小澤政生さん、クルーズの諸戸友さん

組織論対談、前回からの続き。

諸戸:元々採用が重要という考えが根底にあって、全社総会でベストリクルーター賞は〇〇さんです、わー!みたいな皆が羨ましがるような文化を仕組みや制度で醸成してきてたんでしょうね。YJCを取り入れて、改めて採用大事なんだぞっていう、これもメッセージヴィークルですよね。前回の渡邊さんの言葉を借りると。ところで、小澤さんは採用やる前は何をやっていたんだっけ?

小澤:僕、実は出戻りなんですよ。サイバーで営業として配属して半年で辞めて、自営業を手伝いながら家庭教師と飲食のバイトして、証券マン1年やってサイバーに戻りました。

諸戸:サイバーに戻って最初から人事でしたっけ?

小澤:そうです。出戻ってからずっとエンジニア採用です。

諸戸:それ自体はやっぱりやりたかったことなの?

小澤:採用の仕事はやってみたかったし、興味があったので、嬉しかったですね。でも、エンジニア採用って言われて、はて?みたいな。エンジニアって何ですか?みたいなところから始まりました(笑)

諸戸:じゃあエンジニアを採用するための知識やどういうやり方があるのかみたいなのは自分で調べて作っていったってこと?

小澤:そうですね、本を読むのはあまり得意じゃないので、とりあえず小さく試してみようと思って、エンジニアってググってエンジニアの方がよく持ってるマウスとかシャツとか完全食とかデスク用品を買いまくったり、流行ってるゲームとかツールをとりあえず使って会話に入るとか。とりあえず歩み寄ろうと必死でした。

あと、大阪にも開発メンバーや内定者アルバイトがいたので、その人たちを毎日ランチ誘って、とにかく技術用語を覚えたり、サービス開発をレストランに例えてホワイトボードで説明してもらったりして、点の情報をかき集めてました。それをもう1回自分で白紙にバーっと書いていって、点と点を数珠繋ぎにしていってサイバーのエンジニアの特徴をつかむ、みたいなことは最初の頃はよくやっていました。

諸戸:とはいえ、経験ない中で大変でしたでしょうね。

小澤:基本的にエンジニア採用に限っていうと僕ら人事はサッカーでいうと「ボランチ」の役割だと思っています。学生に会った時に「この学生はAndroidに興味があるのか、iOSに興味があるのか、サービスに興味あるのか、研究開発に興味あるのか」そのあたりの温度感や解像度を先に人事で察知して、いち早くエンジニアにつなぐ。

粒度が粗くてパスがまだ出せない人は、人事側で初期情報を繰り返し与え、精度を上げてからエンジニアにパスしていく。とにかく「早くパスを送る」ってことを徹底的にやっていました。

この「高速パス回し」は採用に限らず組織としてサイバーが強いところだと思います。ただ、事業が多い分、とにかくパスの出しどころが多いんですよ。例えば漠然とゲームを作りたいっていう候補者がいたとします。小さい時からゲームが好きだったから、という人もいれば、当たればデカいビジネスをやりたいという人もいます。

候補者の疑問やリクエストを出来るだけ細かくヒアリングしながら分解して、一番刺さるポイントを突き刺していく感じです。

諸戸:そうすると当然、色んな事業があるわけだから、色んな文化があって、色んな人材を採用していくわけですよね。その中で共通して言える言葉、敢えて言語化するとしたら?

小澤:それがまさに「素直でいいヤツ」ですね。過去に、部署別採用、事業別採用みたいなのを提案したことがありました。

ゲームと、メディアと広告で使う技術も全く違うし、組織文化も違うので、どっちが正解というわけじゃないですけど、事業部別で半分採用し、残りの半分をジェネラリストとして本体で採用するという提案をしました。

その方が会社としても事業の立ち上がりとかクローズも多い会社なのでわりと柔軟に動ける組織になるんじゃないかと考えたんです。ただ、結局実行まではいかないんです。

何故かというと「インターネットサービス事業を展開しているサイバーエージェント」で働きたい人を採用したいからです。これは藤田社長がよく話しているうどん屋の話。「明日うどん屋をやるよと言ってもやれる人です。仮にサイバーがまったく違う事業をすることになったとして、たとえそれがうどん屋であっても何であっても、我々の組織を持ってすればきっと成功すると思う」っていうのは採用にもすごく浸透した考え方だと思います。

image_4

諸戸:なるほど、カルチャーフィットなのか!やっぱりそこは。

小澤:事業部別採用にしてしまうと、他の事業や会社に興味を持たないし、自分の部署以外知りません、みたいな感じになる可能性がある。各社各事業で自由に裁量持ってやりつつも、「ベンチャーの集合体」としてのサイバーを大事にしたい、そこがなくなるとサイバーっぽくないというか。

諸戸:サイバーっぽい、ぽくないってどういうこと?

小澤:なんだろう、何なんですかね(笑)

諸戸:なんとなく分かるけどね、僕も。サイバーぽいなこの人とか。

小澤:「21世紀を代表する会社を創る」という会社のビジョンがあるんですが、新卒の頃ってよく分からないんですよね。

これって何のこと?みたいな感じですけど、働けば働くほど、そのビジョンの意味がじわじわフィットしてくるというか使いやすくなってくる感じがあります。

あくまで僕の印象ですけど「21世紀を代表する会社を創る」っていう大きい上向きのベクトルがあって、よく見ると小さいベクトルが向きは違えどみんな上を向いている感じというか。魚群が同じ方向に進むことで大きな1匹の魚に見える感じのイメージです。で、その魚群がどんどん増え、少しずつ向きを変えながら突き進み続けていき、全体としてのサイズがまたグッと大きくなるというか。

そのビジョンに向かっていればやり方とか過程はどうでもよくて、暴れるだけ暴れてくれ〜みたいな。そこに共感する人でないと採用しない。サイバーっぽいってそんな感じなのかなぁと思います。

ちょっと採用の話っぽくなるんですが、キャリアって個人と組織と社会の3つの円でよく例えられますよね。

例えば、エンジニア志望の学生でたまにいたのは、「機械学習をやりたいので入社したいです!」とか。これだけだと別にサイバーじゃなく他の会社でもいいじゃないですか。ベクトルが自分にしか向いてないので採用しない。

「機械学習を使ってサイバーの中でこういうもの作りたいです。これができたら世の中こんなにハッピーになるんですよ!ちょっとやってみたのでみてください」、みたいな鼻息の荒い子はやっぱり一緒に働きたいですよね。

諸戸:キーワードとか言語化してこういう人っていうのがある訳じゃないけど、とはいえサイバーっぽい、ぽくないとか個人、組織、社会の3つのベクトルが同じ方を向いているかとかなんとなく共通認識はやっぱりあるんですね。

小澤:そうですね。活躍社員の名前を具体的に出して、あの社員を超える人を採用しないとダメだと言って、その社員を構成する要素を細かく分析して、その上で「あの人超える(むしろ超えさせたい)な、よし採用しよう!」みたいな議論はわりとしていました。

協調性とか行動力とか地頭みたいなのをポイント化してもよくわからないし、評価者によってバラつきが出たり、覚えられないのであまりそういう堅い採用はしてこなかったですね。多分今もそうだと思います。サイバーっぽくないですね。

諸戸:ついつい決めたくなっちゃうんですよね。スタートアップでもちゃんとやろうとしている会社ほど、自頭がいいとか負けず嫌いとか、5個6個せっかく何時間もかけて決めたけどそれってどこも言ってることじゃん、みたいな。過程は大事かもしれないですけどね。

もう1 つ僕が思うのが、サイバーの採用って毎年毎年やり方が変わるじゃないですか。規模が大きくなるにつれて、だんだん変化させるのって大変だと思うんですが。

小澤:そうですね。やっぱりサイバーの好きなところは「思いっきり振る」ところです。今年やった採用手法は1回全部捨てる、来年やるときには今年やったものは二度と使えないものだと思ってやる、そういう意識で採用に取り組むのは結構痺れましたが、個人的にはすごくいい経験をさせてもらったと思います。

「もしも〜がなくなったら」とか「もしも〜が10倍100倍だったら」をよく妄想していました。例えば、今までめっちゃ使っていた媒体を、もし来年全く使わなくなったとしたら数百万円の費用が浮くことになる。

もし浮いたらその予算をどう使うのがいいだろう、という具合により効果的なものを自然と考え始める。他にももしも通年採用が当たり前になったら?1,000人採用するとしたら?人事が今の10倍になったら?研修を無くして速攻配属させたら?とか。勝手に妄想してニヤニヤしてましたね。

語弊があるかもしれませんが、人事って事業部に比べて割とお金をじゃぶじゃぶ使おうと思えば使えると思うんです。でもそこに対するコスト意識とか自分でお金を稼ぐみたいな、直接生み出すわけじゃないですけど、予算のアロケーションを考え、張るところを張る、捨てるときは全部捨ててみる、みたいな選択と集中、そして「妄想」をセットでやるのはとてもいい経験だったなぁと思います。

事業サイドではこういうのって当たり前にやっていると思うんですが、採用とか人事ってとにかくコスト削減が第一にきて、レバレッジ効かせるとか、採用で業績貢献するみたいな視点が意外と抜けてたりするんですよね。

その辺りはゼロベース思考というか、「来年やるときは今年やったことは全部やらない」と決めて、やりながら揺れ戻していくことが、去年より良い採用を生むことに繋がっていたと思います。

諸戸:バージョンアップとかマイナーチェンジとかじゃなくて、毎年がらっとリセットしてやり方を変えていくってことですね。僕も採用やっていたから分かるんですけど、毎年変えるのって、それこそ上手くいってたら提案しづらいし、勇気いりませんか?

特に人事とかノウハウ化しづらいものって一回なんかうまい感じの流れができると、それをもう1回リセットして考えるって結構・・・、言うは易し行うは難しって気がするんですよね。

小澤:そうですね、なので、会社説明会を全部捨てた時とかは、だいぶ怖かったですね。集まらなかったらどうしよう、と不安で寝れないこともありました(笑)

元々説明会を年に100回くらいやっていたんですけど、準備とかを含めると凄まじい時間がかかるので「さばく」採用になりがちじゃないですか。

なので、これって意味あるっけ?サイバーっぽくないよね、ってなって。タイミング良く全社的に業務の棚卸を推進していた期間も重なったので、じゃあ一回全部捨てようということになったんです。

中には全部捨てなくてよくないですか?みたいな意見もありましたが、当時スマホのアプリ作ったときも広告事業部1,600人いたのを800人一気に動かすとか、とにかくサイバーって、2人3人をちょろちょろ動かしても経営としても組織としても強くならないし、新しい課題もイノベーションも生まれない、という考え方が過去の経営的にもあったので、採用としても100回やっていたものを50、30にするのではなく、思い切ってゼロにしよう、という感じになりました。

それに、サイバーには撤退ルールというのもあって、始める前にあらかじめ撤退する基準や期日も決めるんです。だからやってみて本当にやばかったら〜月に戻そうみたいな。

諸戸:実際どうだったんですか?

小澤:最初はやはりひやひやしましたよ。募集も微減しましたが、いい学生に会う確率と、そういう学生にじっくり時間を充てる機会が増えたので、結果的に例年の3か月前倒しくらいで満足のいく採用を終えることができました。(つづく)

お知らせ:諸戸さん・小澤さんは9月25日のイベント「サイバーエージェント大解剖スペシャル」に登壇予定です。すでに定員に達しているので、参加したい方は主催者やパネラーにSNS等で直接お尋ねください

 

----------[AD]----------