水産養殖技術のウミトロン、チチカカ湖でAI給餌機「UMITRON CELL」の設置を開始——サーモントラウト養殖の効率化で地域経済活性化を狙う

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チチカカ湖に実装された「UMITRON CELL」
Image credit: Umitron

シンガポールと日本を拠点に、水産養殖技術を開発するウミトロンは30日、ペルーの養殖業者 Piscifactorias de los Andes(Piscis)が所有するチチカカ湖の養殖場で、AI 搭載のスマート給餌機「UMITRON CELL」の設置を開始したことを明らかにした。同社は昨年12月、米州開発銀行(IDB)グループの IDB Lab から総額200万米ドルを調達、チチカカ湖でのサーモントラウト養殖の効率化プロジェクトを受託していた。今回の UMITRON CELL 設置はその第一歩となる。

チチカカ湖は、ペルーでサーモントラウト生産地として発展してきた。UMITRON CELL 設置先の Piscis は今回のプロジェクトのパートナーであり、チチカカ湖に生産拠点を要するペルー最大のサーモントラウト養殖生産者の一つで、サーモントラウトの生産およびアジア・北米・欧州市場への輸出事業を展開。チチカカ湖で他の生産者への養殖技術の共有にも取り組んでおり、ウミトロンの技術をトラウトサーモン養殖に付加することで、地域全体の生産性向上と高付加価値化に繋がるとしている。

UMITRON CELL を使うと魚の食欲解析→給餌が自動化され、養殖経営においてコストの70%を占めるとされる給餌作業を自動化を実現する。日本国内では、愛媛県愛南町の水産養殖現場に導入、遠隔での餌やりなどの機能を提供してきた。これまで UMITRON のデバイスが実装されるのは、海洋の近海養殖施設が多かったが、湖という淡水環境での実装は今回が初めてとなる。

チチカカ湖に実装された「UMITRON CELL」
Image credit: Umitron

チチカカ湖での UMITRON CELL が意味するところを、ウミトロンの共同創業者でマネージングディレクターの山田雅彦氏に聞いた。

地理的に標高3800m、琵琶湖の13倍の湖に実装したというのが新しい点になります。チチカカ湖は淡水ですが広大な湖のため、リモートコントロールの需要が高い。酸素濃度が薄いので、魚の酸欠を防ぐためにきめ細やかな給餌の必要性と、湖という閉空間での無駄餌をなくすことでの環境負荷を減らす。

また、標高の関係から、生産者の溺死も発生する地域での現場作業を減らすことで、養殖労働環境の安全性の改善などを目指しています。こういった持続可能性の高い技術提供が評価されて IDBLab から問い合わせを頂いたのがプロジェクト始動の背景にあります。

チチカカ湖に設置された UMITRON CELL は、最大400kg の飼料を搭載できる。ソーラーパネルとバッテリーで自律的に発電・蓄電ができ、コンピュータ、カメラ、モーターを持続的に洋上で稼働させることが可能だ。インターネットと接続しているため、魚の状態はスマートフォンや PC などで遠隔環境で確認でき、必要に応じて養殖魚への給餌量も遠隔で調整できる。

ウミトロンは昨年、産業革新機構、D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏、未来創生ファンドなどから総額12.2億円を調達している。

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