フィリピンで広がる「給与前払い」サービス、全部使い切るそのお国柄とは

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Image Credit : Advance

ピックアップA digital solution for people living paycheck-to-paycheck in the Philippines

ニュースサマリー:5月28日、フィリピン・マニラ発の給与前払いスタートアップAdvance Tech Lendingは、シードラウンドにて4つの投資家から出資を受けたことを公表している。

重要なポイント:フィリピンの賃金労働者の多くは、金額に関わらず受け取った給与は貯金せず当月内に全て使い切り、急な出費が必要になった際にはその都度お金を借りる生活を送っている。マニラを拠点とするスタートアップAdvandeでは、こういった人々ができる限りお金を借りずにすむよう、お金が必要になった際には自分の給料から必要な額を前倒しで受け取れるオンデマンドプラットフォームを提供している。

詳細:銀行口座の保有率も低く、銀行ローンの審査も厳しいフィリピンでは、お金に困った際に労働者の多くは親戚や友人知人からお金を借りるか、ファイブシックスと呼ばれる、古くから存在する審査や返済期限のゆるい非合法な高利貸し(借りた額を5で割って6倍にして返すシステム=金利20%のためファイブシックスと呼ばれる)から借りざるを得ない。

  • ターゲット市場は20代前半から30代半ばで月収300〜700ドルの低中所得層の賃金労働者(主にはアウトソーシング、製造、サービス業など)。24時間365日、必要な時にオンラインで迅速に振り込みまで完結。
  • 融資ではなく給料支払いの前倒しのため、金利はかからず手数料(3.5%)だけで利用可能。前倒しで受け取れる給与の上限は50%。
  • 雇用主にとっては福利厚生の一環として従業員に利用してもらうことで、会社のリソースを割くことなく労働者に経済的支援を行えるという点がメリットとなる。
  • 今年5月にはNext Billion Venturesが主導するDymon Asia VenturesとAccion Venture Labの参加するシードラウンドで資金調達を実施(金額未公開)、プロダクトの改善や新規市場の開拓を推進するとしている。
  • 過去12カ月約300万ドルを数千人に提供し、今後5年間で1万社の企業、100万人の労働者にサービスを提供することを目指している。

背景:フィリピン中央銀行の2019年の調査結果によると、成人の47%は現在借金をしている(親族や友人知人から借りているものも含む)状態で、34%は現在は借金をしていないがこれまでに借金をした経験があると回答した。同調査によると、成人の32%が貯金をしたことはあるが、現在は貯金していない、約25%は貯金をしたことがないと回答、成人の半数以上が貯金が全くない状態で生活を送っている。

フィリピンでは給料を全て使い切ってしまい給料日前にお金を借りる人が多いことから、給料日は原則として月2回とすることが法律で定められている。

執筆:椛澤かおり/編集:渡邉草太

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