YJCの5億円出資でアクセル踏む「stand.fm」、MERY創業者の中川・河合氏が音声配信アプリに賭けたワケ

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直近でのnewnをはじめ、多くの事業に携わるstand.fm代表の中川綾太郎氏。今回はどういった考えなんだろうか、と思いながら取材をはじめた。

音声配信アプリ「stand.fm」は8月20日、YJキャピタルを引受先とした総額5億円の第三者割当増資をシードラウンドにて実施したことを公表した。株式比率や払込日は非公開となっている。

stand.fmはスマートフォンひとつで音声配信ができるプラットフォーム。録音したコンテンツをストック型で配信することはもちろん、5人までのコラボライブ配信も可能。その他、リスナーとコミュニケーションがとれるコメントやアイテムのギフト機能、限定した配信者だけにライブ配信する限定URL機能などを搭載している。

登録ユーザー数などの詳細は非公開ということだが、アプリの利用者は数十万MAUを超えているそうだ。リスナーと投稿者を含めて滞在時間は1日平均59分。現時点でのユーザー属性は男女半々で政治やエンタメ、ライフスタイルなどの分野の配信がされている。なお、アプリはiOS10.0以降とAndroid5.0以降に対応している。

※追記 30万MAUと当初記載があったが正しくは過去の単月実績、コロナ影響もあり月数によって振れ幅が大きい現状

2018年12月からステルス状態でアプリの配信を開始し、2020年2月頃から本格的に情報の公表をはじめた。中川氏によれば「IT業界やスタートアップ業界のユーザーが利用しつつも、最近では自然に入ってきて頂けるユーザーも増えた」ということだった。コロナ禍では、孤独を感じる人の解消になっているような配信やコメントも多く発生していた。

stand.fmは女性向けメディアMERYの創業者で個人投資家としても活動していた中川綾太郎氏と同じく創業メンバーとして開発を支えたエンジニアの河合真吾氏が共同代表で経営している。

今回は中川氏に取材を実施した。MERYの運営から退任して以来、多くのスタートアップに個人投資家として出資していた中川氏だったが、取材時には「ほんとに、資金調達してシードなんで。事業伸ばさないと、頑張らないと」と10回程はこぼしていた。起業家としてまたアクセルを踏む姿が今後見られそうだ。

コミュニティとコンテンツの深みに着目する

いまや、YouTubeをはじめ、TikTok、Podcast、TwitCastingなど動画や音声の配信サービスの括りでは多くのサービスが存在する。そんな中でstand.fmはどう違うのか、中川氏の構想含めて少し詳しく聞いてみた。

結果、「コミュニティ」と「コンテンツの深み」の2つがキーワードになりそうだった。

まず、コミュニティにおいては海外で注目を集めた音声SNS「Clubhouse」の世界観が近しいという話だ。1人が配信しているライブに途中で乱入して人が増えていったり、弾き語りや実況がはじまったり、と偶発的な要素が生み出される仕組みを大切にしている。

これらは興味関心のある配信を見つけやすいアプリトップ、レター機能で質問を募集して回答する双方向のコミュニケーションのような機能の形でも反映されている。見る人と聞く人が明確に分かれるような1対多数へ配信するショー形式のコンテンツでなく、濃いファンとの繋がりがstand.fmのポイントとなる。

次のコンテンツの深みの部分に関しては、音声コンテンツが持つ特徴について着目している。

「たとえば、星野源さんや福山雅治さんのラジオでの下ネタの面白さってテキストでは伝わらない話だと思うんですよね。音声だからこそ、話し手の場の空気が作れる。そういう音声で伝わる深みでインターネットにまだない暖かい場所を作ろう、というところからstand.fmが生まれています」(中川氏)。

さらに「野球の試合の解説や美術館の解説音声などのように、音声だからこそ出来ることもある」と言われると、確かに納得だ。音声コンテンツならでは、と言われてはじめて気づくような部分に着目しているのがstand.fmなのだろう。

方針としてTwitterのようなリーチを多く増やしていくプラットフォームの方向性でなく、より濃く深いプラットフォームを目指していく。

メイクしながら15分、と画面がないことでの気軽さもウリだ。スマホだけでボタンを押したらオンエアでき、濃いファンとの繋がりを作れるのが彼らの目指す世界になる。

…と記載しつつもこれらはまだ実現の検証段階でもあり、ミニマムに兆しが見えつつあるものの、今後形作っていく要素であるのが課題だとも話していた。

個人の時代とグローバル展開のビジネス観点

話を聞いていて疑問に思ったのが、stand.fmのコンテンツはリアルタイムのライブ特化なのかアーカイブコンテンツとして配信するのか正しいのか、という点だ。

率直に聞いてみたところ「回答に困っていた、としておいてください(笑)」だそうだ。

「ストックされていった方が事業面においてもコンテンツの充実性においても良いが、コラボライブ機能を実施してみて、ライブからコンテンツが生まれる仕組みも面白い。実際、その時にしか聞けない話や保存しないから聞ける面白い話が多い中で全部保存されると面白くない、という観点もある」(中川氏)。

とハイブリッドであることを強みにしたいと話す。配信カテゴリを音楽などで絞ってしまわなかった点においても

「個人の時代が来ると思っているから、ビジネス的に絞る施策も一般的にはあるが、現段階ではオープンなプラットフォームとしたい。あとは2回目(のサービス)で結局、最終的に全部とる必要があるから、絞らないという理由もあります」(中川氏)

との考えだ。

「Instagramでカメラ、YouTubeがテレビの役割を民主化する中で、ラジオはたまに出ると面白いな、と感じるのにいざ、やろうと思っても、ぱっと配信できるものが思いつかない。この部分が日本発のグローバルプラットフォームを狙える領域だと思っています」(中川氏)と、ビジネス観点も踏まえつつ、試行錯誤を繰り替えすstand.fmのチーム。

直近の目標では配信者にフォーカスし、配信者が面白いコンテンツを作りやすくすることを目標とする。面白いコンテンツが増えれば、配信者や視聴者も自然と増えていく、という考えなのだそうだ。

好きなことで食べていける土壌を作る

長くなったがもうひとつ、今回の資金調達と同時に配信者に対して収益化するプログラムの始動も発表している。収益化の方法は主に3種類で再生1時間につき4円から6円を運営側から受け取れるプログラム、コンテンツ自体を有料化するプログラム、月額課金で限定コンテンツを配信するプログラムがそれだ。

収益化自体は配信者が好きなことで食べていける土壌を作るためのプロジェクトとして長期にわたるものだが、各プログラムに関しては導入を通して最適化していく意向だという。

アプリ内広告でのマネタイズなどが一般的だが、単に既存広告を貼る形ではなく、たとえばブランド広告のリスナーの読み上げなど、独自の広告システムを目指す。ここにはMERYに最終時点までアドネットワークでの収益化をしなかった中川氏の美学がある。

この要素が加わり、調達した資金を活用してどのような進化を遂げるのか。調達資金は主に採用費に充当し、特にエンジニアの強化してサービス開発に注力する。そのほかは今回の配信者の収益化プロジェクトのような場面、マーケティングに活用する。

チームの社員は中川氏を含めて社員7名。MERYに「MERYっぽい」が存在したように(TwitterユーザーはMERYっぽいを検索してみて欲しい)、資金調達を機に構想がどのくらいのスピードかつ高い再現性で実現されていくのか、が今後の見所になっていきそうだ。