コロナ禍でどうなる「Y Combinator 2020」ここが注目【Podcast:Code Republic・松山さん】

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史上初めて完全オンライン上にて開催された「Y Combinator 2020年度夏季アクセラレータープログラム」。8月31日より2日に分けて、総参加企業198社がオンライン上でプレゼンテーションを披露しました。

参加企業のほぼ半分である48%はB2Bソフトウェア開発スタートアップが占め、それに続けてヘルスケア関連が16%、コンシューマー関連が13%、フィンテック関連が11%を占める結果となっています。本稿ではスタートアップアクセラレータープログラム「Code Republic(コードリパブリック)」の松山馨太さんがstand.fmで語った、デモデイ参加企業のトレンドについて印象に残ったポイントをまとめてみました(文中の発言箇所はすべて松山さんの音声からの書き起こしです)。

音声はこちらから

松山さんは今回のプログラムを三つのトレンドに整理しています。

  • 新興国のタイムマシン経営
  • withコロナ型のビジネス
  • データ業務の効率化

まず、「新興国のタイムマシン経営」について。

「アメリカでの成功モデルをインドやアフリカ・南米などの新興国で展開するビジネスです。採択社数を増加させた2019年冬プログラムも多く存在していましたが、今回は前回に比べても増加している印象です。それだけ単純なインターネットサービスによるイノベーションが難しくなっているのかもしれません」。

では、今回のバッチで目立っていた「新興国のタイムマシン経営」を軸に持つスタートアップはどういったものが挙げられるのでしょうか。松山氏は、約10社の同領域へ挑むスタートアップを取り上げています。

「今回のバッチでは、チャレンジャーバンクを展開するインド版PlaidのDecentro、決済システムを提供するパキスタン版StripeのSafepay、コーポレートカードを提供する東南アジア版BrexのVoloPay、手数料無料の株取引PFを提供する中東版ロビンフッドのThndrが大きく印象に残っています。不動産領域ではメキシコ版OpenDoorのFlat、エジプト版ZillowのSakneen、他にも飲食店のクラウドPOSを提供する南米版TOASTのParrot Software、卒業後に学費を支払うISAモデルのヨーロッパ版ラムダスクール、南米版ラムダスクールなど多くのサービスが発表されていました」。

中東版ロビンフッド「Thndr」

withコロナ型のビジネス

またCOVID-19真っ只中ということで、例年にはない特徴を次のように指摘されています。

「コロナウイルスの流れの中でヘルスケア領域はもちろんのこと、デリバリーサービスだけで9社、教育やフィットネスなどオンラインを通じたイベント・レッスンを販売するサービスが11社、リモートワークやリモートのコミュニケーションを支援するサービスが13社となっています。こうした動きは例年とは大きく異なっており、コロナによる環境変化を意識したビジネスが多く選定されていると感じました」。

具体的な選出スタートアップは次のようなものです。

「デリバリーでは中小規模のリアル店舗やEC事業者に対して、オンデマンドで即日配達サービスを提供するTyltGoのようなサービスがあり、複数事業者からの集荷、ルートの最適化、ドライバーのクラウドソーシングにより低コストで即日配達できる配送ネットワークを提供しています。

またIn Stockは、Amazon Primeより低価格で同日配達してくれるECプラットフォームを目指しており、消費者は、郵便番号と製品名を入力すると、即日配達もしくは持ち帰り可能な商品を表示、そのまま購入できるECサービスになっています。このサービスは小売店が登録すると、POSから在庫情報を読み取り、自動的に出品〜販売され、リアル店舗の小売業者の販売支援という一面もになっています。オンラインイベントやレッスンの販売では、サービス版Shopifyのようなサービスが多く登場しています。

Sutraは、フィットネスに特化したオンラインレッスンコンテンツの販売プラットフォームで、各ショップページ、ライブコンテンツ・オンデマンドコンテンツの販売、予約・決済システムを提供しています。同じくPolyOpsはWhatsapp・Telegramでオンラインレッスンを販売するために必要な機能を提供するサービスとなっており、月額支払・単発支払・アフィリエイトプログラム・会員管理等のツールを提供しています」。

この「ソーシャル・ディスタンス」におけるトレンドの中で特徴的な動きは次のようなものだそうです。

「このようなソーシャルを販売チャネルに変化する動きは、サービスだけでなく物販のECにおいても見られました。たとえば、インドのBikayiは、WhatsApp版Shopifyを標榜しており、インドでは個人商店がWhatsAppで注文をもらい配達するケースが多いそうで、WhatsAppと連携したオンラインショップを簡単に開設できるサービスを提供しています。同社はデモデイ終了5日後には約2億円の調達を実施しています。

リモートワークの領域では、常時接続のビデオチャットサービスとハードウェアを提供するSidekickのようなサービスがありました。また、TellaやQueueのような動画の共同編集サービスも登場しています。プライベートのリモートコミュニケーションでは、ZoomやLINEでのビデオを通話が一般化していますが、新たなフォーマットを提供するサービスも生まれてきています。

たとえば、Hereは、他のビデオチャットとは異なり自由にビデオチャットルームを作成できるサービスで、ルーム上に友人を招待したり、パワポ感覚でGIF、画像、メモなどを貼り付けて自由にカスタマイズできるサービスになっています。また、Piepackerはゲームをしながらビデオチャットできるクラウドゲームプラットフォームとなっており、ゲームをしながら話すだけでなく、ゲームキャラに自分を加工したり、ゲームに最適化したコミュニケーションで盛り上がれるサービスとなっています。

このようにデリバリー、オンラインイベント・レッスンの販売、リモートワーク・リモートコミュニケーションツールのようにWithコロナを意識したビジネスが多く登場していることが分かります」。

データ業務の効率化

最後のトレンドは「データ業務の効率化」です。SaaSなどの発展で、一般企業が膨大な利用データを抱える中、それを効率的利用へ導くためのサービスということでしょう。具体的に、デモデイではどのような課題解決を目指すスタートアップが選定されたのでしょうか。

「データのエラーや欠損を自動的に追跡・確認するシステムを提供するHubbleはデータの加工・変種における非効率を軽減しています。また、Aquarium LearningやKeyDBのように機械学習やデータベースの処理速度自体を向上させるサービスもあります。さらに非エンジニアのデータ分析では、Salesforce等のSaaSやShopify、Stripe等の決済情報、ソーシャルメディアに至るまで自社の様々なたデータ一元管理できシステムを提供するMozart Data、SQLを記述せずノーコードでデータベース上の分析・管理できるツールを提供するAchoが選定されています。」

今回のバッチは、YCにとってもその運営方法や選出するスタートアップのトレンドなど大きな変更が起きる年になったと言えるでしょう。松山さんが取り上げているように、COVID-19で求められている「withコロナ型のビジネス」は確実に増えたことは間違いありません。また、withコロナに関わらず今まで通りビッグデータ解析系スタートアップや、タイムマシン経営を先進国で目指すスタートアップも順調に需要を集め続けていることが伺えます。

ある意味、今年はコロナ禍でYCがどういった系統のスタートアップを選出するのか、例年以上に注目が集まっていたと思います。結果だけを見れば、コロナ関連の新市場が誕生し総合的な割合を増やしつつも、大半は既存テクノロジーにイノベーティブな磨きをかけていく、そうしたスタートアップが占めていたと感じます。

VC界をリードするY Combinatoがパンデミック以降、初めて選出したスタートアップにwithコロナ型のビジネスが組み込まれていたことはこれからのスタートアップ・VCの方向性を見極めていく上で重要なターニングポイントとなりそうです。

編集部よりお知らせ:松山さんが共同代表を務めるアクセラレータープログラム「Code Republic」では随時参加企業を募集中です。参加希望される方は公式サイトをご覧ください。