Apple「爆速」M1チップで変わる世界:爆発的に増加するAppleのプロセッサ(3/3)

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Image Credit: Apple

(前回からのつづき)2つの長期的な傾向によってApple Siliconがその魅力的なパフォーマンスを提供できるようになったということに簡単に触れておこう。 1つは、電力効率の高いARMテクノロジベースのRISCプロセッサが、より小さなプロセスノードでのチップ製造技術へと進化し続けていることで、最も注目すべきは、AppleのファブリケーションパートナーであるTSMCが今年完成させた5ナノメートルプロセスノードだ。

もう1つは、AppleがGrand Central Dispatchなどの強力なマルチスレッドOS技術を生み出したことで、開発者やユーザーが常に注意の目を光らせていなくても、複数のコアによるアプリのタスクの効率的なルーティングが可能になったことだ。これらのイノベーションによる直接的な結果として、AppleのチップとOSは、物理的に可能な限りシームレスにコアの拡張ができるようになり、次世代になるごとに目に見えてスピードと能力が向上する。

この変革は、CPUパフォーマンスに対する乗算的な効果を超えて影響を及ぼす。 Appleの最初のM1チップでさえ、16個の専用AIコアを搭載しており、汎用的な機械学習タスクからコンピュータービジョンまで、あらゆるものに対して11TOPSのサポートを約束している。 Qualcommの新しいSoC(システムオンチップ)Snapdragon888が今月スマートフォンのAI推論性能を26TOPSに引き上げたように、AppleはモバイルチップとMacチップの両方でより高性能なAIハードウェアを採用し、各デバイスにAI機能を搭載する。ほんの10年前には考えられなかったことだ。

AppleのGPU戦略は、要求の厳しいゲーマーや画像処理の専門家のニーズを満たすためにグラフィックカードの処理コア数を増やしたNvidiaの戦略に似ている。しかしNvidiaは現在10,000を超えるグラフィックコアとTensor AIコアを備えた、最大750ワットのシステム電力を必要とするグラフィックカードを出荷しており、グラフィックにおけるApple最大の野望が2021年にプロフェッショナル向けの128コアGPUをリリースすることだと仮定すると、それはNvidiaの1/100程度にすぎない。もしそうであれば、まだ当分の間Nvidiaの未来は安泰だろう。さらにNvidiaは、Appleのチップが依存しているARMアーキテクチャの鍵を握っているが、とはいえAppleは既製のARMチップ設計に依存するのではなく、ARMテクノロジーに基づいて独自のCPUおよびGPUコアを作成している。

つまりこれらをまとめると、一連の開発の進展から得られる重要なポイントは、Appleのプロセッサの数が世界中至るところで爆発的に増加しようとしている(コンシューマ向けに限らないという点では初めて)ということだ。 Apple Siliconがデータセンターに参入すると、各Macは複数のApple CPU、GPU、およびAIコアによって処理が行われ、各ラックには複数のMacが収納され、各サーバーファームはB2Bアプリからエンタープライズデータウェアハウジング、クラウドゲームに至るまで、以前のワークロードの何倍もの負荷を処理する。

現段階ではAMD、Nvidia、IntelがAppleの成長を現実的な脅威とみなしているのか、あるいは従来からあるような市場の競争力を高める要因程度のものとみなしているのかは不明だが、将来的には現在よりもさらに大規模な並列処理が必要とされることは明らかであり、Appleは自分たちのためにできるだけ多くのデータセンター、開発者、そして資金を獲得し独自の世界を構築しているのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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