社会的インパクト投資の現在地——クラウドクレジットが手がける「女性事業主(起業家)」支援の実例

クラウドクレジットが提供する「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド1号」は社会的インパクト重視ファンドの一例。

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの要約転載。Universe編集部と同社のSDGsおよび皆川朋子氏が共同執筆した。

日本政府が「2050年までに温室効果ガス排出量ゼロ」とする長期指標を発表し、国家単位でのSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)に対する具体的な取り組みが明確になりました。これにより、より一層国内においてもSDGs・ESG投資(Environmental, social and corporate governance)への注目や、社会的課題に取り組む事業への需要が高まることが予想されています。

こうした社会課題に対する投資は、社会的インパクト投資とも呼ばれ、グローバル・ブレイン(GB)においても経済的リターンに加え、社会的リターンを評価する仕組みづくりに挑戦しています。

今回は、GBの出資先でもあり海外融資案件に特化した貸付型クラウドファンディング事業を運営するクラウドクレジットが手がける社会的インパクト投資の未来とその意義についてご紹介していきます。

歴史ある社会的インパクト投資

社会的インパクト投資の対象となるSDGsやESGと聞くと、世界情勢が比較的安定し、国際連合などのインターナショナル・オーガナイゼーションが誕生してきた近年に提唱され始めたものである、という印象があります。

実際にはこうした世界規模での社会課題への関心は1960年代には既に登場しており、同時代に提唱された「SRI(社会的責任投資)」が社会的インパクト投資の始まりともいわれています。

SRIは社会的価値観や倫理観により、投資判断が下されることから「ネガティブスクリーニング」をベースとした手法とされていました。つまり、SRIも「社会的悪」とされる企業を投資対象から外し、社会的に求められる企業へ資本の流入を進める社会的インパクト投資の概念を一部備えていると考えられます。

しかしこうした流れは、2006年に国際連合が主導して設計した「責任投資原則(Principles for Responsible Investment)」により大きく変わることとなります。これは、世界の環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の課題を従来の投資分析と意思決定のプロセスに融合させ、持続可能な金融システム構築を目指すことを掲げたもので、まさにESG投資と言われる源泉となっています。

さらに2015年にはSDGsが採択され、いよいよ本格的にあらゆる企業・個人が社会的リターンを実現すべく、各々の施策を講じはじめた、というわけです。各国の首脳陣、経済界を中心として新しい投資の考え方が議論されていった結果、誕生したのが経済的リターンとともに社会的リターンも追求していく「社会的インパクト投資」なのです。

社会的インパクト投資市場の現在地とクラウドクレジットの役割

GBが出資するクラウドクレジットは、ソーシャルレンディング型で世界各国の資金需要者(優良中堅中小企業)を選定してファンド化することで、日本の個人投資家が、気軽に1万円から融資できるオンラインプラットフォームを運営しています。

個人投資家には利回りを、資金需要者には資金調達先を多様化する手段を提供することで、通常資金が届かないような様々な取組に向けた資金提供の機会を提供します。今年10月末時点で、ファンド全体の運用残高は158億円、累計販売額は321億円、登録ID者数は4.8万人を達成し、海外貸付型クラウドファンディングにおいては国内No.1の地位を築いています。

またクラウドクレジットでは、2018年1月に初の社会的インパクト投資に重視したファンドの販売を開始しています。具体的には「ペルー金融事業者支援ファンド」・「東南アジア未電化地域支援プロジェクト」・「メキシコ女性起業家支援ファンド」などをシリーズとして販売し、2020年にはこれらのファンド残高が20億円を突破したことも公表し、多くの投資家がファンド購入を通じて金融包摂(フィナンシャル・インクルージョン)によるSDGs達成に貢献しています。

例えば貧困削減とジェンダー平等にフォーカスした社会的インパクト投資シリーズ「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」は、SDGsで掲げられている次のミッションステートメントに準じたものとなっています。

  • 「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」
  • 「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」
SDGsのスローガン

ファンドの実質的な貸付先(海外資金需要者)は、ペルーにおける女性事業主グループ向け融資を行う貯蓄信用協同組合で、ペルーには商業銀行からの借入ができない女性の個人事業主が多くいますが、これをビジネスチャンスと捉え、この分野での融資を拡大してきました。女性事業主を中心に貯蓄サービスや貸付を実施することで、これらのSDGs目標への貢献が期待されています。また、13〜50人を一つのグループにまとめ、グループに対する融資を行うとともにメンバー間では相互に連帯保証を負ってもらうという仕組みにより、リスクを低減しています。

クラウドクレジットによれば社会的インパクト投資の市場規模は年々増え続け、グローバルで2015年時点で1380億ドルとされたものが、3年後の2018年には5020億ドルと3倍程度の上昇率を見せているそうです。また、国内においても2016年の337億円規模から、2018年には3440億円とおよそ10倍の成長を遂げており、市場における需要・供給が共に大きく拡大していることが分かります。

社会的リターンの「計測」は可能か

投資において経済的リターンの有無は、主にリスク/リターンという経済的なパフォーマンス指標が重要視されています。では、社会的インパクト投資における「社会的リターン」は経済的リターンと同等に指標計測が可能なのでしょうか。

ロジックモデルの運用

クラウドクレジットは、リターンの度合いをより体系的に計測するため「社会的インパクト測定」の指標の設計を、ファンドごとにロジックモデルを設定しています。具体的には、貸付先(海外資金需要者)が現行で利用しているものを含め、GIINが発表する「Impact Reporting and Investment Standards+(IRIS+:『インパクト評価のための指標カタログ』)」等に基づいて、クラウドクレジットと貸付先(海外資金需要者)で協議を行い、指標の見える化を進めています。

ベンチャーキャピタルとしての社会課題解決への取り組み

この記事に先立ってGBではソーシャルスタートアップとの取り組みについてもお伝えしてきました。社会的な要請に基づく投資活動はより一層重要性を増してきます。今後についても引き続きソーシャルスタートアップやSDGsに関するイベントや情報発信、インパクト投資やSDGs観点での協働などの活動を検討して参ります。