社労士向け業務DXのKiteRa、3億円を資金調達——コモディティ化する人事・労務業務を効率化

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KiteRa のチームメンバー。後列左端が CEO 植松隆史氏、右端が COO 藤田智人氏。
Image credit: Kitera

KiteRa は19日、直近のラウンドで3億円を調達したと発表した。ポストシードもしくはプレシリーズ A ラウンド相当と見られる。このラウンドに参加したのは、XTech Ventures、DIMENSION、三井住友海上キャピタルと名前非開示の個人投資家。調達金額には、日本政策金融公庫からのデットが含まれる。

KiteRa にとっては、2019年12月のシードラウンドに続く資金調達。ライフタイムベンチャーズは前回ラウンドに続くフォローオンでの参加となる。

KiteRa は2019年4月、大手化学メーカーでの人事労務担当を経て、株式公開のための内部統制整備に長年従事してきた社会保険労務士(社労士)の植松隆史氏(現 CEO)と、SI-er や大手不動産会社でアプリ開発やプロジェクトリードの経験を持つ藤田智人氏(現 COO)により共同創業。就業規則や社内規程を自動作成するクラウド「KiteRa(キテラ)」を開発・提供している。

法律で定められた社労士の業務は、1号業務(行政機関に提出する書類の作成や当事者の代理人業務)、2号業務(労働社会保険関係法令に基づく帳簿書類)、3号業務(労務管理や社会保険に関する相談に応じ、または指導をすること)に分けられる。このうち、1号業務と2号業務は社労士の独占業務ではあるが、サービスがコモディティ化しているのが現実だ。

これまでも1号業務や2号業務は価格勝負だった側面があるが、SmartHR や MoneyForward といった SaaS の台頭で、企業は人事労務作業の多くを社内で簡単に処理できるようになり、この流れには拍車がかかっている。いずれ、これらの業務は社労士が飯を食っていける部分ではなくなるだろう。

社労士にとって、むしろ差別化を図れるのは3号業務。3号業務は社労士の独占業務ではないが、コンサルティング、評価制度づくり、人事・労務相談、労務管理の仕組みづくりなど、顧問先企業に大きな付加価値を提供することができる。社労士がコモディティ化する1号や2号業務を効率的に処理し、3号業務にリソースを集中できるよう KiteRa の開発・提供を始めた。(植松氏)

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「KiteRa」
Image credit: Kitera

もともとは企業の人事・労務担当も直接のターゲットに捉えていたそうだが、企業と社労士では求められる機能が異なるため、KiteRa では昨年4月頃から社労士向けの機能を充実させることに開発リソースを集中。新型コロナ感染拡大の影響で、社労士が顧問先とのやりとりをオンライン化することに抵抗感が無くなり、KiteRa は「社労士全体の DX の波に乗れた(植松氏)」と言う。

現時点で KiteRa が提供可能なのは、就業規則や社内規程のオンライン作成機能が中心だ。主に次のような機能が提供されている。

  1. 作成機能……社労士の顧客企業は、設問に答えるだけ効率的に作成が可能。最新の法律に準拠し、就業規則以外も作れる。企業の実情(週休2日、フレックスタイム、専門業務型裁量労働制など)にあわせて内容はカスタマイズできる。
  2. 編集機能……オンラインブラウザ機能。条項単位での編集が可能で、自動採番や編集時の参照元・先の自動変更などもサポート。
  3. 履歴・差分管理機能
  4. 社労士向け情報提供……KiteRa 社内で有資格者がいるので最新の状況を把握可能、労働法改正に伴う情報、通達や判例が出た場合はその解説とサンプルとなる規定も条文配信する。
  5. 顧問先管理機能……社労士は、顧問先企業にアカウントを権限付与できる。

KiteRa は当面、社労士向けのサービス提供に特化するが、一方で大企業の人事労務部門からの問い合わせも少なくなく、こういったニーズに合わせたサービス開発についても、今夏あたりから着手したい考えだ。大企業ではそもそも規定の数が多く、グループ会社が存在したり、多店舗展開したりしている場合は、それらの規約を SaaS で一元的に管理したいというニーズがあるそうだ。

シングルサインオンやワークフロー連携なども必要になるかもしれないし、大企業では求められる機能が(社労士向けと)違ってくる。現在の KiteRa のまま(大企業に)提供すると不満足になるので注力していないが、今夏あたりからは大企業向けの課題検証などもやっていきたい。(植松氏)

同社では今回調達した資金を使って、現行サービスの機能拡充及び人材の獲得を行うとしている。

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