ベルリン発の都市農業ソリューション「Infarm」、JR東日本から資金調達し日本市場進出——スーパー「紀ノ国屋」で、屋内栽培の農作物を販売へ

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左から:Erez Galonska 氏(Infarm CEO)、堤口貴子氏(紀ノ国屋 代表取締役社長)、山下俊一郎氏(ムロオ代表取締役社長)、表輝幸氏(JR 東日本 執行役員 事業創造本部副本部長)、平石郁生氏(Infarm Japan マネージングディレクター)
Image credit: Masaru Ikeda

 ※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから。

デジタルエージェンシーのインフォバーンは26日、ベルリンのスタートアップカンファレンス Tech Open Air(TOA)のワールドツアーイベント東京版「TOA WORLD TOUR Tokyo」を都内で開催している。この席上、基調講演に登壇したベルリン発の都市農業(アーバンファーミング)ソリューション「Infarm」の 創業者で CEO の Erez Galonska 氏は、同社が JR 東日本(東証:9020)から出資を受け、JR 東日本傘下の高級スーパー「紀ノ国屋」で Infarm の仕組みを使った屋内(店内)栽培の農作物の販売を今夏開始することを明らかにした。

Infarm の運営会社 Indoor Urban Farming(ドイツ法人)は昨年、ロンドン拠点 VC の Atmico をリードインベスターとして、合計1億米ドルのシリーズ B ラウンドを完了したことで話題を呼んだ。同社の創業以来の累積調達金額は1億3,450万米ドル。今回、JR 東日本が参加した調達ラウンドは、JR 東日本および紀ノ国屋との協業と日本市場進出に向けて設定されたもので、ラウンドステージは定義されていない。BRIDGE の取材に対し、Infarm は今回調達額の開示をしなかった。

Infarm は2013年、イスラエル生まれの Galonska 兄弟(Guy Galonska 氏、Erez Galonska 氏)、 Osnat Michaeli 氏の3人により創業された。冬の寒さで農作物の育たないドイツにおいて、通年、環境に左右されず新鮮な野菜を手軽に食べられるようにするアイデアを実現した。BRIDGE で初めて取り上げたのは、サンブリッジ グローバルベンチャーズが開催していた世界のスタートアップショーケースイベント「Innovation Weekend Grand Finale 2015」で優勝した際のことだ。

Osnat Michaeli 氏(CMO)、Erez Galonska 氏(CEO)、Guy Galonska 氏(CTO)
Image credit: Robert Rieger, FvF Productions UG

Infarm のソリューションでは、室内の温度や湿度、光、pH などが常時クラウドを通じて最適制御され、気候を問わず、ハーブやレタスなどの葉野菜を安定的に栽培できる。電気、水、WiFi さえあれば稼働可能で、モジュール式であるため配置場所についても非常に柔軟だ。現在は種付けなどを Infarm の施設で行い、出荷できるようになった株が半自動的に搬出される。当該株は店内の Infarm 設備に運搬・ストックされるので、消費者は野菜が育っている最中にある新鮮な状態のまま店頭で購入できる。

現在までに、Infarm は本拠地であるドイツはもとより、フランス、スイス、ルクセンブルグ、イギリス、デンマーク、カナダ、アメリカに進出しており、Irma(デンマーク)、Kroger/QFC(アメリカ)、Marks and Spencer(イギリス)、Metro(ヨーロッパ各国)、Edeka(ドイツ)といった現地スーパーと提携し、屋内(店内)栽培の農作物を販売している。世界で600以上の Farming Units を店舗や流通センターで展開し、毎月の植物収穫量は25万株以上。紀ノ国屋での販売は日本においてはもとより、アジアでも初の試みとなる。日本国内では、紀ノ国屋のいずれかの店舗で今夏にも Infarm による農作物販売が開始される見込みだ。

Infarm は日本市場の進出にあたり、日本法人 Infarm Japan を設立する。Infarm Japan のマネージングディレクターには、前出の Innovation Weekend Grand Finale 2015 の主催者で、現在はファンド運用やスタートアップの市場進出などを支援するドリームビジョン代表取締役社長の平石郁生氏が就任する。なお、ドリームビジョンはサンブリッジ グローバルベンチャーズのファンド運用を引き継いでおり、Infarm のシードラウンドにおける投資家である。

Infarm のアーバンファーミングソリューション「Inhub」
Image credit: Infarm

また、国内最大のチルド物流ネットワークを持つコールドサプライチェーン企業ムロオが物流面で協力する。ムロオの代表取締役社長である山下俊一郎氏は、平石氏が法政大学経営大学院(MBA)で客員教授を務めていた際の教え子であり、ムロオのコールドサプライチェーンが Infarm が日本国内で拠点展開する上で施設配置をしやすいとの判断からだ。

Erez Galonska 氏は BRIDGE のインタビューに対し、次のように語ってくれた。

日本市場に進出できることをうれしく思っている。食糧ロスの多さ、台風などの自然災害に見舞われサステイナブルな農業が難しいこと、農家の高齢化などの問題を抱える日本においては、半自動的に新鮮な野菜を届けられる Infarm の進出は意義深い。(中略)

JR 東日本や紀ノ国屋がイノベーションを探していたことからも、今回、Infarm は彼らと組むことでシナジーが見出せると考えた。日本進出にあたり、商品の品揃えもローカライズする。水菜、パクチーなどアジアの野菜を扱うことも考えられるだろう。