本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿)
The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.

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ESG(Environmental, social and corporate governance)の朝が来たようだ。資産運用マネージャーたちは、投資活動における環境・社会・ガバナンスの原則に対する真実の瞬間に目覚めつつある。
もちろん、企業や金融機関は何年も前から ESG について語っている。企業のホームページを見ても、「私たちは、フィデューシャリー(受託者)と ESG の原則を企業行動の頂点に置いています」というような文言が無いものはなかなか無い。年次報告書には「Sustainability(持続可能性)」という項目があり、そこには並木道のある公園でセミの鳴き声を聞きながらピクニックをしている一家(通常は3人)の艶やかな写真が掲載されている。実際、ここ日本でも、ほぼ毎日のように企業がネットゼロ目標(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)を発表しているように思える。
しかし、実際に ESG を実践するには、パンフレットに書かれているような言葉だけでは不十分だ。特に資産運用業界では、ESG への関心が高まっているようだ。私が関わった資産運用会社の多くは、大きく分けて2つのカテゴリに分かれる。
報告段階
最も多いグループは、棚卸しの段階にあるようだ。彼らは、膨大な数の保有資産の中から、ESG の遵守状況やエクスポージャー(金融資産のうち、市場の価格変動リスクにさらされている資産の割合)を判断しようとしている。この取り組みには、データ収集の努力とそれに続く報告手続が必要で、大規模なものになる可能性がある。
行動段階
もう一つの小さなグループは、より進んだ段階にある。これらの先見性のある企業は、おそらく棚卸しの段階と並行して、ESG の原則を自社のプロセスやビジネスモデルに深く連携することで、解き放たれる可能性のある将来の機会を模索している。単なる報告にとどまらず、保有するポートフォリオの ESG 行動に影響を与えようとするかもしれない。
前者については、ビッグ4のような伝統的な監査法人や大規模なコンサルティング会社が、おそらく最も適切なガイダンスを提供してくれるだろう。2つ目の「機会の探求」については、専門のコンサルタントやソートリーダー(思想的指導者)が新たに登場している。
ESG を実行し、その目標を達成するのは大変なことだ。私たちも、自分の小さな VC ファンドで ESG をどの程度実施するのが最も適切なのか、いまだに悩んでいる。このテーマについての専門知識を深めたいと考えている資産運用マネージャーには、私たちのネットワークの中で、両方のカテゴリの専門家や、私たちを支援してくれたアドバイザー、そして LP の何人かをご紹介したいと思う。
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