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事業会社5社と資本提携し、シリコンバレーのDB開発スタートアップとアドテク基盤を共同開発――Fringe81のこれからを代表の田中弦氏に訊いた

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先月下旬、アドテク・スタートアップの Fringe81(フリンジ ハチイチ)が4.2億円を資金調達した。Fringe81 はRSS広告配信事業に端を発し、デマンドサイドプラットフォーム(DMP)やディスプレイ広告の運用システムで群を抜いてきたスタートアップだ。 今回の調達先の5社はいずれも事業会社系の CVC であったため、事業シナジーを期待しての動きであることが推測できる。また、このタイミングで…

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Fringe81 代表取締役社長 田中弦(ゆづる)氏

先月下旬、アドテク・スタートアップの Fringe81(フリンジ ハチイチ)4.2億円を資金調達した。Fringe81 はRSS広告配信事業に端を発し、デマンドサイドプラットフォーム(DMP)やディスプレイ広告の運用システムで群を抜いてきたスタートアップだ。

今回の調達先の5社はいずれも事業会社系の CVC であったため、事業シナジーを期待しての動きであることが推測できる。また、このタイミングで、楽天の執行役員などを歴任した尾原和啓氏が、Fringe81 に執行役員として参画することが発表された。月をまたいで今月5日には、Fringe81 は NoSQLデータベース開発の Aerospike 社と最新機能の共同開発を発表している

アドテク・スタートアップにしては、いささか矢継ぎ早に守備範囲が広げ過ぎているように思えなくもないが、ここからどこへ向かおうとしているのだろう? 調達した資金の使途や今後のビジネス展開の方向性などについて、創業者で代表取締役社長の田中弦(ゆづる)氏に話を聞くことができた。

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Aerospike 社との共同開発

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Aerospike のチーム(Aerospike のウェブサイトから)

Aerospike 社は2009年に創業、アメリカ Mountain View に本拠を置き、オープンソースの NoSQL データベースを開発するスタートアップだ。通常、Fringe81 に代表されるサービスやアプリを開発する企業は、バックエンドやインフラについては、既に完成していて小慣れた環境を採用することが多い。予期せぬ開発上のトラブルやスケジュール遅延のリスク避けるためだ。完成品として出回っている環境でさえ潜在バグに悩まされるので、メンテナンスの難しいノンストップ運用を求められるサービスでは、敢えて枯れた技術や一世代前の環境を採用することも少なくない。

今回、Fringe81 では、同社の広告運用支援ツール「Humpty(ハンプティ)」に対して、Aerospike 社が開発中だった Aerospike バージョン3を検証しながら大規模適用するという、業界的には珍しい手法を取った。

数ある NoSQL データベースの中でも、Aerospike のベンチマーク結果が優れているのは知っていた。バージョン3 を開発中ということで、彼らも検証するにも、実際に大規模な実データを入れて回してみることは困難。実証実験ができるということで、Fringe81 と Aerospike で一緒にやってみることになった。DMP に適用しちゃおう、と。

実際にやってみると半年くらいはかかった。やってみてわかったのは、日本人(=Fringe81 のエンジニア)のデバッグ能力はすごいな、ということ。対して、インド人(=Aerospike)は、コーディングがすごく速い。東京(=Fringe81)、インド・バンガロール/シリコンバレー(=Aerospike)をつないで、デバッグしコードを修正していった。日本人が品質管理をすると、すごくうまくいく、というのが今回のプロジェクトを通じて感じた実感。(田中氏)

端的に言うと、Aerospike バージョン3 の導入により、Fringe81 はサービスの提供に要するサーバの台数を3分の1に減らせるのだそう。言い換えれば、これは同じサービスが基盤データベースを差し替えるだけで、3倍程度のパフォーマンスを出せるようになることを意味する。

アドテク分野の一つの特徴として、従来はバッチ処理でしか対応できなかった機能が、バックエンドのパフォーマンス向上により、リアルタイムで処理されるように進化してきている。これにより、例えば、ユーザに対してリターゲティングする際に、一定時間以上滞留しているユーザに対して広告単価を上げて設定してみるとか、ユーザの振る舞いに応じて、広告主は対照ユーザをリアルタイムに振り分けてみるとか、異なる条件で臨機応変に取り扱うことができるようになるのだという。

なお、Aerospike バージョン3 は、先週発表された、Fringe81 と D2C が共同で構築するスマートフォン・アドネットワークの基盤としても活用されるのだそうだ。

社員の新卒比率は50%

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画像は、Fringe81 のウェブサイトから

極論をすると、システム・インテグレーションやシステム・エンジニアリングの会社にとっては、エンジニアこそが資産。確かに、どんな企業にとっても社員こそが最大の資産なのだが、技術会社にとっては、プロダクトやブランドに増して、エンジニアの存在が企業価値に占める割合が大きい、というのが筆者の解釈だ。

Fringe81 のエンジニア比率は全体の30%、また、新卒比率は全社員の50% だという。筆者もこれまでに、幾度かシステム・インテグレーションを担う会社を経営してきたが、現実的に考えて2人に1人が実務未経験の状態でプロジェクトを回すのはかなり難しいと思われるので、もしこれが実現可能だとすれば画期的かもしれない。Fringe81 ではどのように実現しているのだろうか。

(新卒のエンジニアに対して)最初は OJT で大丈夫かなとも思ったのですが、そうでもなかったので、テクノロジーインターンシップを導入しました。

設計のやり方とか、ものすごい量の教育プログラムを Qiita にまとめていて、社員には Qiita にどのくらい投稿をしたかというのを、一つのミッションとして課しています。この Qiita にまとめた内容は一般にも公開しており、Scala を使っているところがまだ珍しいということもあって、いろんな人が見に来てくれる。

Qiita の投稿を見て、「◯◯さん(=投稿している、Fringe81 のエンジニアの名前)のファンです」と言って、社員採用に応募が来たりもします。(田中氏)

スタートアップにとっては、ユーザのエンゲージメントもさることながら、エンジニアを含む社員や将来の社員候補のエンゲージメントも避けて通れない重要課題。もともと社内教育用に作成したエンジニア養成用のコンテンツをオープンソースのように公開することで、新入社員の応募にも効果をもたらしているのは、ナレッジシェア・プラットフォームの有機的な使い方と言えるだろう。

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Qiita 上に開設された、Fringe81 の情報共有ページ

尾原和啓氏の参画

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執行役員に就任した尾原和啓氏

資金調達と時を同じくして、Fringe81 は尾原和啓氏が執行役員として参画することを発表した。尾原氏はこれまでに数多くのインターネット企業やコンサルティング・ファームを渡り歩き、昨年には「ITビジネスの原理」などの著書でも知られる人物だ。Fringe81 代表の田中氏とは、コンサルティング・ファームのコーポレイト ディレクションで現場の上司として、机を並べて仕事をした間柄である。

尾原氏は今春からバリ島に移住、勤務時間中は六本木ヒルズにある Fringe81 のオフィスとバリ島を映像・音声つなぎっぱなしにし、遠隔で経営に参画する。

バリ島のウブドは、シェアリズムを体現する文化をもっています。

ウブドには、(起業家で TED のスピーカーとしても有名な)Derek Sivers をはじめ世界中から creative thinker が集まってきているので、次のシリコンバレーになる匂いがします。(尾原氏)

バリ島といえば、争いを好まない現地人の気質、指揮者がいないのにハーモニーを奏でられるガムランに象徴されるように、ある意味、今日のシェアリング・エコノミーの原点のような文化が見受けられることで有名だ。同じインドネシアでも、渋滞や喧騒に悩まされるジャカルタとは対照的に、バリ島には穏やかな時間が流れており、最近では、筆者の周りでも活動拠点をバリ島に移すスタートアップの話をちらほらと聞くようになった。

ビジネスに注力しながら QOL(Quality of Life)も追求する生き方は、尾原氏に続く Fringe81 の社員たちにも参考になるところも大きいだろう。穏やかな時間が流れる遠隔地と東京を結んで仕事をするという試みは、Sansan の神山ラボなどの前例もあるが、このような動きが業績を伸ばしながらも優秀な社員の確保を模索するスタートアップの間でブームになることを、筆者は内心期待している。

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バリ島ウブドに広がる棚田の風景(via Flickr by Pandu Adnyana. CC BY 2.0 lincensed.)

2014年のアドテク業界では、VOYAGE GROUP をはじめ、FreakOut、ロックオン、サイジニアなど上場が相次いだ。スタートアップである以上はイグジットを目指すのが宿命であり、投資ラウンドのタイムラインを見る限り、そろそろ Fringe81 も IPO へのカウントダウンを始めそうに思えるのだが、代表の田中氏をもってして「うちには、キラキラしてるやつはいない」と言わせるほど、社員は実直で真面目なのが社風なのだとのこと。技術力を研ぎ澄まし、ユーザが求めるいいものを提供すれば結果は後から付いてくるという、自信の現れのようにも感じた。

ともあれ、先日発表された、D2C と共同構築するアドネットワークの行方は気になるところだ。スマートフォン向けのアドネットワークの既存プレーヤーは少なくないので、どのような仕掛けや戦法で競合に打ち勝とうとしているのか、それらが明らかになったタイミングで改めて取り上げてみたいと思う。

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Fringe81 オフィス玄関(Fringe81 のウェブサイトから)
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アドテクのFringe 81、D2Cと協業でスマートフォン向けアドネットワークを構築へ

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先月、日本の大手メディア・広告系事業会社5社から総額4.2億円を資金調達したアドテク・スタートアップの Fringe81(フリンジ ハチイチ)だが、今日、D2C と協業でスマートフォンに特化したアドネットワークを共同構築・運営すると発表した。D2C はその名の通り、先の資金調達で Fringe 81 の株主となった NTTドコモや電通らが擁する合弁会社であり、資本関係を直接的に生かした形での最初の…

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先月、日本の大手メディア・広告系事業会社5社から総額4.2億円を資金調達したアドテク・スタートアップの Fringe81(フリンジ ハチイチ)だが、今日、D2C と協業でスマートフォンに特化したアドネットワークを共同構築・運営すると発表した。D2C はその名の通り、先の資金調達で Fringe 81 の株主となった NTTドコモや電通らが擁する合弁会社であり、資本関係を直接的に生かした形での最初の共同事業展開となる。

詳細については改めてお伝えできると思うが、Fringe 81 の創業者で代表取締役の田中弦(ゆづる)氏によれば、この新しいアドネットワークには Fringe 81 がシリコンバレーの Aerospike 社と共同開発した基盤技術がふんだんに取り入れられるとのこと。No SQL のオープンソース RDMBS「Aerospike」はサードパーティーによるベンチマーク・テストでも圧倒的なパフォーマンスを見せており、以前であれば、バッチでしか処理できなかったようなタスクを、ほぼすべてリアルタイムで実現している。

Aerospike のバージョン3シリーズでは、プラットフォームの運用に必要なサーバ/クラウドリソースが従来の3分の1程度で済むそうで、これまでのアドネットワークでは無理だった、詳細条件に基づくユーザのターゲティングも実現できるようになりそうだ。

今回、Fringe 81 が D2C と共同構築するアドネットワークでは、次のようなバリエーションの広告を提供する予定としている。

  • リッチメディア広告
  • インフィード動画広告
  • 大規模かつ多様なデータを利用したバナー広告およびインフィード広告
  • スマートフォン向けアトリビューション分析システムおよびサービス

これまでのアドテク・プラットフォームは、デマンドサイド(広告主)とサプライサイド(広告を掲出する先のメディア)のどちらかを向いているものが多かったが、今後、Fringe 81 では両者に対して包括的にソリューションを提供していくようだ。サービスのローンチを楽しみに待ちたい。

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立ち上げから3年で勝負は決まる−−Fringe81田中氏が語るベンチャーサバイバル8つのヒント

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日本では創業3年で90%が倒産と言われるほど、企業が生き残るのは難しい。その過酷な道を乗り越えながら、世の中に新しいサービスやインパクトを与えていくことをベンチャーには求められる。 かつてネットイヤー創業三番目の社員として入社、その後のネットエイジ上場時には役員も務めた田中弦氏は、現在Fringe81代表取締役社長としてベンチャー経営の舵取りをおこなう人物だ。 田中氏がMOVIDA SCHOOLで…

日本では創業3年で90%が倒産と言われるほど、企業が生き残るのは難しい。その過酷な道を乗り越えながら、世の中に新しいサービスやインパクトを与えていくことをベンチャーには求められる。

かつてネットイヤー創業三番目の社員として入社、その後のネットエイジ上場時には役員も務めた田中弦氏は、現在Fringe81代表取締役社長としてベンチャー経営の舵取りをおこなう人物だ。

田中氏がMOVIDA SCHOOLで語った、ベンチャーをサバイブさせる事業展開と資本政策の考え方についてまとめた。

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立ち上げから3年で勝負は決まる

新しい製品作りを目指してベンチャーを起こす人は多いが、創業メンバーや社員全員が夢を追って働ける期間は3年程度。

夢だけでそれ以上社員は追従しないし、自分自身も続かない。企業として生き残るためには、少なくとも創業から18ヶ月以内に数人は雇える状況を作らないといけない。

数年で成果を出さなければいけないのがベンチャーだ。その間、受託をして何とか企業を生き残らせようと考えることは、自身が思っている以上に時間や意識を取られてしまう。

人のために何かを開発するよりも、自分たちのサービスや製品を開発する時間に充てたほうがいい。ぜひ、体力の続く限り受託をやらずに進めて欲しい。

新卒の社員は採用すべき

ベンチャーという急成長する場において新卒社員は、どういった状況でも対応できる体力とポテンシャルを持っている。

企業が危機になった時に新卒社員が活躍することは大いにあるため、3年スパンで考えた時には、多少無理をしても新卒採用をしたほうが企業としての馬力もでてくる。3年間をいかに有効に使えるかが勝負だ。

何にどうお金を使うかで、調達方法は変わる

資金調達が終わり、スムーズに次の資金調達がいくとは限らない。景気がよくなったら、事業計画がうまくいったら、と調達のタイミングを考えているようでは遅い場合も多い。

リーマン・ショックの例にあるように、時代や社会情勢の中では難しい状況も突然やってくる。そのため、資金調達はできる時にしておくとよい。本当に資金調達が必要な時と、資金調達すべき時は違うと意識してもらいたい。

VCからの出資か、銀行からの借り入れか

VCからの投資の場合は、最低でも5年はお付き合いをする長期視点をもって出資をしていただく人との関係性を築こう。出資の場合は、優先株がいい場合とそうでない場合がある。優先株の中身の条件を設計し、先行している出資者との整合性がとれるように調整しよう。

VCだけが資金調達の方法とは限らない。3000万円程度の額であれば、場合によっては銀行からの借入が企業にとって良い場合もある。もちろん事業計画次第ではあるが、すぐにキャッシュが作れる状況であれば、銀行からの借入のほうがリスクは少ないこともある。

先行投資なのか、製品の拡充のためのお金か。もしくは運転資金としてのお金か。考えるべきは、何にどうお金を使うかを意識して、効率的に資本政策を実施して欲しい。

自社とのシナジーが生まれる事業会社からの出資も選択肢の一つ

起業後すぐに、リクルート(現リクルートホールディングス)とCCI(サイバーコミュニケーションズ)からファンドではなく直接出資をしていただいた。

事業会社からの出資は、事業面での利益リターンを条件とする事業提携などが含まれている場合がある。事業者から出資をいただくことができれば、場合によっては償還期間もないため長くお付き合いでき、企業のバリューも高まりやすくなる。

しかし、事業会社の投資契約は時間がかかり、条件面をしっかり熟考しないと後で面倒なことになることもある。契約においては事業上の縛りといった排他条項に気をつけ、契約書の書面を確認しよう。

排他条項であっても期間を区切ったり事業会社としてのコミットを求める工夫が必要で、そうした細かい配慮をすれば、自社と事業会社とのシナジーが生まれやすくなる。

自社の状況、市場、競合を考えて新規事業を立ち上げろ

新規事業や事業自体のピボットも珍しくないだろう。しかし、新規事業は失敗が多い。新規事業がある程度お金を作り出すまでの時間やお金を見通し、新規事業が失敗した時のリスクヘッジのために、本業でキャッシュ・フローが黒字になるまでは新規事業に手をださないほうが良い。

ベンチャーはニッチ・トップを選んでビジネスチャンスを作ることが多いが、あまりにそこを狙いすぎると次の展開が難しくなる。市場規模が小さいとスケールが難しく、反対に市場規模が大きすぎても競合が多く難しい。

市場規模と競合とのバランスを考慮しながら、自社の強みが活きる市場を選んでいくべきだ。新規事業のタイミング、自社の強み、市場規模と競合などのバランスを見て、事業展開を考えよう。

KPIによる数字の把握で危機管理のアンテナを張る

小さな目標達成の積み重ねが大きな達成を生む。アクセス数やアクセスあたりの売上、1人あたり売上、1時間あたり売上だけのみならず、週次における決算やアポ数、アポ突破数、受注率、解約数など様々な経営指数をもとに判断することは、売上を伸ばす際の材料となる。

数字の把握は、企業のピンチを察しやすくなる。日々数字を見るだけではなくその数字の裏にある現場を把握し、次に打つべき打開策を思考しよう。KPIは、目標達成のみならず危機管理としての指標の役割があることを認識してもらいたい。

自社での徹底した作り込みがサバイブの基盤になる

ベンチャーに必要なマーケティングとして、SEM、SEO、ABテストなどがある。お金のないベンチャーは、まずは社内で体制を構築しできる範囲の取り組みを実施する。そのためにも、まずはサイトのコンバージョンを高めるABテストが最優先だ。そこからSEO、そしてSEMといった流れとなる。

どれだけ真剣にユーザのことを考えてサイトを作り込むか。ボタンの色、形、文言などにも注意を払い細部にまでこだわる。地道な作り込みこそKPIに直接影響を及ぼすものだ。社内で徹底した作り込みをすることは、ベンチャーをサバイブさせていく基盤となりうる。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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