立ち上げから3年で勝負は決まる−−Fringe81田中氏が語るベンチャーサバイバル8つのヒント

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日本では創業3年で90%が倒産と言われるほど、企業が生き残るのは難しい。その過酷な道を乗り越えながら、世の中に新しいサービスやインパクトを与えていくことをベンチャーには求められる。

かつてネットイヤー創業三番目の社員として入社、その後のネットエイジ上場時には役員も務めた田中弦氏は、現在Fringe81代表取締役社長としてベンチャー経営の舵取りをおこなう人物だ。

田中氏がMOVIDA SCHOOLで語った、ベンチャーをサバイブさせる事業展開と資本政策の考え方についてまとめた。

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立ち上げから3年で勝負は決まる

新しい製品作りを目指してベンチャーを起こす人は多いが、創業メンバーや社員全員が夢を追って働ける期間は3年程度。

夢だけでそれ以上社員は追従しないし、自分自身も続かない。企業として生き残るためには、少なくとも創業から18ヶ月以内に数人は雇える状況を作らないといけない。

数年で成果を出さなければいけないのがベンチャーだ。その間、受託をして何とか企業を生き残らせようと考えることは、自身が思っている以上に時間や意識を取られてしまう。

人のために何かを開発するよりも、自分たちのサービスや製品を開発する時間に充てたほうがいい。ぜひ、体力の続く限り受託をやらずに進めて欲しい。

新卒の社員は採用すべき

ベンチャーという急成長する場において新卒社員は、どういった状況でも対応できる体力とポテンシャルを持っている。

企業が危機になった時に新卒社員が活躍することは大いにあるため、3年スパンで考えた時には、多少無理をしても新卒採用をしたほうが企業としての馬力もでてくる。3年間をいかに有効に使えるかが勝負だ。

何にどうお金を使うかで、調達方法は変わる

資金調達が終わり、スムーズに次の資金調達がいくとは限らない。景気がよくなったら、事業計画がうまくいったら、と調達のタイミングを考えているようでは遅い場合も多い。

リーマン・ショックの例にあるように、時代や社会情勢の中では難しい状況も突然やってくる。そのため、資金調達はできる時にしておくとよい。本当に資金調達が必要な時と、資金調達すべき時は違うと意識してもらいたい。

VCからの出資か、銀行からの借り入れか

VCからの投資の場合は、最低でも5年はお付き合いをする長期視点をもって出資をしていただく人との関係性を築こう。出資の場合は、優先株がいい場合とそうでない場合がある。優先株の中身の条件を設計し、先行している出資者との整合性がとれるように調整しよう。

VCだけが資金調達の方法とは限らない。3000万円程度の額であれば、場合によっては銀行からの借入が企業にとって良い場合もある。もちろん事業計画次第ではあるが、すぐにキャッシュが作れる状況であれば、銀行からの借入のほうがリスクは少ないこともある。

先行投資なのか、製品の拡充のためのお金か。もしくは運転資金としてのお金か。考えるべきは、何にどうお金を使うかを意識して、効率的に資本政策を実施して欲しい。

自社とのシナジーが生まれる事業会社からの出資も選択肢の一つ

起業後すぐに、リクルート(現リクルートホールディングス)とCCI(サイバーコミュニケーションズ)からファンドではなく直接出資をしていただいた。

事業会社からの出資は、事業面での利益リターンを条件とする事業提携などが含まれている場合がある。事業者から出資をいただくことができれば、場合によっては償還期間もないため長くお付き合いでき、企業のバリューも高まりやすくなる。

しかし、事業会社の投資契約は時間がかかり、条件面をしっかり熟考しないと後で面倒なことになることもある。契約においては事業上の縛りといった排他条項に気をつけ、契約書の書面を確認しよう。

排他条項であっても期間を区切ったり事業会社としてのコミットを求める工夫が必要で、そうした細かい配慮をすれば、自社と事業会社とのシナジーが生まれやすくなる。

自社の状況、市場、競合を考えて新規事業を立ち上げろ

新規事業や事業自体のピボットも珍しくないだろう。しかし、新規事業は失敗が多い。新規事業がある程度お金を作り出すまでの時間やお金を見通し、新規事業が失敗した時のリスクヘッジのために、本業でキャッシュ・フローが黒字になるまでは新規事業に手をださないほうが良い。

ベンチャーはニッチ・トップを選んでビジネスチャンスを作ることが多いが、あまりにそこを狙いすぎると次の展開が難しくなる。市場規模が小さいとスケールが難しく、反対に市場規模が大きすぎても競合が多く難しい。

市場規模と競合とのバランスを考慮しながら、自社の強みが活きる市場を選んでいくべきだ。新規事業のタイミング、自社の強み、市場規模と競合などのバランスを見て、事業展開を考えよう。

KPIによる数字の把握で危機管理のアンテナを張る

小さな目標達成の積み重ねが大きな達成を生む。アクセス数やアクセスあたりの売上、1人あたり売上、1時間あたり売上だけのみならず、週次における決算やアポ数、アポ突破数、受注率、解約数など様々な経営指数をもとに判断することは、売上を伸ばす際の材料となる。

数字の把握は、企業のピンチを察しやすくなる。日々数字を見るだけではなくその数字の裏にある現場を把握し、次に打つべき打開策を思考しよう。KPIは、目標達成のみならず危機管理としての指標の役割があることを認識してもらいたい。

自社での徹底した作り込みがサバイブの基盤になる

ベンチャーに必要なマーケティングとして、SEM、SEO、ABテストなどがある。お金のないベンチャーは、まずは社内で体制を構築しできる範囲の取り組みを実施する。そのためにも、まずはサイトのコンバージョンを高めるABテストが最優先だ。そこからSEO、そしてSEMといった流れとなる。

どれだけ真剣にユーザのことを考えてサイトを作り込むか。ボタンの色、形、文言などにも注意を払い細部にまでこだわる。地道な作り込みこそKPIに直接影響を及ぼすものだ。社内で徹底した作り込みをすることは、ベンチャーをサバイブさせていく基盤となりうる。

U-NOTEリンク】:スクール当日にライブで記録されたU-NOTEです。合わせてご参照ください。

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