衛星データ活用農業支援SAgri、1億5,500万円をシード調達——耕作放棄地発見、農地の区画情報整理事業を加速

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左から:CTO 田中貴氏、CEO 坪井俊輔氏、COO 益田周氏、リアルテックファンド代表取締役の丸幸弘氏
Image credit: SAgri

衛星データを活用した農業支援プラットフォーム「SAgri(サグリ)」を提供するサグリは2日、直近のラウンドで1億5,500万円を調達したことを明らかにした。このラウンドはリアルテックファンドがリードインベスターを務め、みなとキャピタル、池田泉州キャピタル、広島ベンチャーキャピタル、ひょうご神戸スタートアップファンド(Bonds Investment Group、兵庫県、神戸市による運営)が参加した。なお、ひょうご神戸スタートアップファンドからは、SAgri が初の投資となる。

SAgri にとっては、2019年1月の花房弘也氏(アラン・プロダクツ CEO)とグローカリンクからの調達(エンジェルラウンド)、2020年4月の調達(J-KISS による調達)に続くものだ。それぞれの調達金額は不明だが、今回調達を受けて資本金は1億7,400万円に達したことが明らかになっているため、資本金額と今回調達額の差が過去調達額に相当するとみられる。ラウンドステージは、シードラウンドと推定される。

2019年12月、バンコクで開催された「ROCK THAILAND」第2期デモデイでピッチする坪井氏
Image credit: Masaru Ikeda

SAgri は衛星データにより土壌の状況(腐食含有量)を、また、農家からはスマホアプリから農作物や品種などの情報を取得し、ブロックチェーンを用いてデータベース化。これらを組み合わせることで、収穫量につながる情報を的確に取得するほか、生物性・化学性・物理性の観点から農家に対して土壌改良の提案も行う。実際に取得した土壌データと腐食含有量のマクロデータを元に、農地を評価するスコアリングの仕組みを開発している。

これまでにも土壌の窒素含有量を実測する方法はあったが高コストだった。衛星を使うことで安価な計測を実現、小麦・米・サトウキビに特化して、畑の状況に応じた収穫予測をしたり、肥料の必要投入量などをアドバイスしたりすることが可能だ。インドではこれらの情報を現地金融機関に提供することで農家への融資の実行を促したり、日本では政府のプロジェクトとして耕作を再開できるかどうかの休耕田の状態を見極めるのに活用されたりしている。

「ACTABA」
Image credit: SAgri

同社では、このインドで培ったサービスを元に耕作放棄地を発見するアプリ「ACTABA」を開発。もともと行政の担当者などが現地を確認して情報を集約していたが、衛星から得られる波長データをもとに AI 解析による耕作放棄地かどうかの判定精度が9割以上にまで向上し、作業の効率化に繋がっている。国内では、つくば市、神戸市、名古屋市、加賀市など、年内に10以上の市町村で実証実験を始める予定だ。

そして SAgri のもう一つの経営の柱が、農地データの AI ポリゴン(区画情報整理)だ。日本では農水省が持つ農地図データに、いわば手作業で手を引いている状態であるが、将来、ドローンを使った肥料散布などを想定した場合、農地図データが不正確であると危険を伴うため自動操縦に使えない。同社では国内をはじめ、インドやタイなのさまざまな地域で農地を区画化し、営農型ビジネスの加速を図る。衛星データの活用で圃場の見える化(炭素・窒素含有量と pH)を図り、肥料散布の効率化を支援する。

同社はこれまでに、MUFG DIGITAL アクセラレータ第4期500 Kobe 第3期、在タイ日本大使館とタイ財閥最大手の CP グループによる越境オープンイノベーションイベント「Rock Thailand」の第2期に採択された。

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