MUFG DIGITALアクセラレータの第4期デモデイが開催、ファイナリスト8チームが4ヶ月間のコラボレーション成果を披露

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三菱 UFJ 銀行をコアメンバーとする、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は7月26日、都内で MUFG DIGITAL アクセラレータ 第4期プログラムのデモデイを開催した。スタートアップ、投資家、大手企業のオープンイノベーション担当者など約500名が参加した。

選考を経て8チームがプログラムに参加。彼らは2019年4月からの4ヶ月間、東京・日本橋兜町に新設されたコワーキングスペース「The Garage」などを中心に、担当メンターらの指導を受けながら、サービスの改善やブラッシュアップに努めてきた。

デモデイでは、彼らの4ヶ月間の成果が、MUFG グループ各社担当者、ベンチャーキャピタル、メディアなどに初めて披露され、イノベーションの度合い、利用者ベネフィット、事業性、MUFG とのシナジーの4つの評価項目に基づき審査され、上位評価が得られたチームには、事業奨励金などの副賞が与えられた。

デモデイでの審査員を務めたのは、

  • 三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)代表執行役副社長 グループ COO 兼 グループ CDTO 亀澤宏規氏
  • 三菱 UFJ キャピタル 代表取締役社長 坂本信介氏
  • 三菱 UFJ イノベーション・パートナーズ 代表取締役社長 鈴木伸武氏
  • 森・濱田松本法律事務所 パートナー 増島雅和氏
  • 三菱総合研究所 常務研究理事 村上清明氏

…以上の方々。また、今回参加した全スタートアップ8社に、PR TIMES 賞(副賞:2019年8月〜2020年7月まで、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を一定回数無償で利用できる権利)が授与された。

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【グランプリ】【オーディエンス賞】SynchroLife by GINKAN

  • 担当プロメンター:伊藤健吾氏(D4V)、倉林陽氏(DNX Ventures)
  • グランプリ副賞:事業奨励金 200万円

GINKAN は、AI とトークンエコノミーを用いた新しいグルメ SNS「SynchroLife(シンクロライフ)」を運営している。投稿情報の正確性や透明性をブロックチェーンのしくみを使って担保し、ユーザは投稿内容の評価に応じて、トークン「SynchroCoin」によって世界共通価値となるユニバーサルなインセンティブが得られる。4言語で152カ国・地域の飲食店に関する投稿に対応しており、現在19万件以上のレビューが掲載されており、全登録ユーザーのうち約20%がレビューを投稿している。

今月3日には、飲食店で会計金額の1〜5%(店舗設定でキャンペーン時最大20%)相当の SynchroCoin が受け取れる機能を追加。飲食店は、既存サービスにおける一般的な飲食店の広告出稿モデルと異なり、実際に来店した顧客の飲食代金の5%相当額を GINKAN に手数料として支払うだけで SynchroLife 上に広告掲載できる。仮想通貨を還元できる加盟店は都内を中心に7月中に50店舗が登録予定、年内に1,000店舗の参加を目指す。SynchroLife の仮想通貨である SynchroCoin は LATOKEN に上場しており、Ethereum 建てで現在約0.8円相当(上場時の約3倍)で取引されている。

今月25日には、MUFG DIGITAL アクセラレータ参加の一環として、三菱 UFJ ニコスとクレジットカード明細利用データに基づいて、利用金額の一部を仮想通貨で還元する PoC を開始した。PoC であるため、対象となるのは三菱 UFJ ニコスの社員が、三菱 UFJ ニコスの加盟店である飲食店で利用した取引のみ。PoC の結果を受けて、将来的には一般会員にまでサービスが拡大される可能性がある。将来は、デビットカードなどとの連携し、貯めた SynchroCoin を一般飲食店で飲食代金に支払える機能の実装を計画している

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【凖グランプリ】Funds by Crowd Port

  • 凖グランプリ副賞:事業奨励金 50万円
  • 担当プロメンター:今野穣氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ)、中嶋淳氏(アーキタイプ)

社債は、企業にとって株式による資金調達よりもコストが安く使途についても柔軟であり、個人投資家にとっては株式相場に左右されず元本割れリスクが少ないなどのメリットがある。しかし、アメリカなどの企業と比べ、日本企業が社債を活用できている事例は著しく低い。これは、日本では上場企業の中でも投資適格の各付けを持つ企業が1割に満たない中、証券会社が投資適格も各付けを持たない企業の社債取扱について限定的であるなどの理由による。

Funds は、個人向け車載を代替するサービスで、社債ではないものの社債に近い機能を提供でき、資産形成したい個人と資金調達したい企業をマッチングする。クラウドポートでは、MUFG DIGITAL アクセラレータへの参加を通じて、上場企業経営者(CFO など)や銀行の営業担当者複数名にヒアリングを行った。企業経営者からは、既存の金融手段では新規事業、M&A、海外事業といった成長資金の調達が難しいこと、また銀行の営業担当者からは、成長資金の融資は過去の事業実績を参考にできないため、審査が煩雑で担保を取りづらいこと、などの課題を聞くことができたという。

今後、Funds で成長資金を提供した事案を、MUFG にトスアップし、事業のモニタリングデータをあわせて提供するなどの事業連携、企業の海外事業支援を念頭に、Funds 上では日本円で資金を集め、企業に US ドルで資金提供するサービスなどを検討する。MUFG 傘下のカブドットコム証券では、固定利回り型の商品が多くないため、Funds をカブドットコム証券上で販売することも予定。また、この日、三菱 UFJ キャピタルから出資が決定したことも明らかにされた。

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【凖グランプリ】Moxtra by Moxtra

  • 凖グランプリ副賞:事業奨励金 50万円

Web コラボレーションツール「WebEx」(2007年に Cisco が買収)の CEO と共同創業者が2012年に創業した Moxtra は、企業が顧客との対話を、デジタル環境を使って行える体験を統合的に提供するプラットフォームだ。営業、勧誘、契約など、通常であれば、顧客に来店を促し対面で行うべき行為を、顧客が持つデジタルデバイスを使って実現する。導入企業は、時間を要するスクラッチ開発をせず、来客体験のデジタル化が可能になる。

金融機関向けのホワイトラベルのアプリをアメリカでは Citi グループが採用しており、資料共有、同意書、フィードバック、電子署名、契約締結などを顧客に一気通貫で提供できる。金融機関にとっては、顧客とのやりとりを担当関係者間で簡単に共有でき、また、顧客に対しては、なかなか時間が取れず来店や受電に応じてもらえない際にも連絡を取りやすくする効果が得られる。

MUFG とは、三菱 UFJ 銀行のウェルスマネジメント部門、コーポレートバンキング、Banco MUFG Brasil(三菱 UFJ 銀行ブラジル現地法人)ほか、6つの部門と2つの MUFG 傘下企業と PoC を実施する予定。コンプライアンス上、顧客情報を外に持ち出せない金融機関の事情を考慮し、Moxtra はサーバシステムをオンプレミス環境で構築する。

以下は入賞に至らなかったものの、4ヶ月間にわたるプログラムでの成果を披露した採択チーム。

MoneyDash by STOCK POINT

  • 担当プロメンター:笹本康太郎氏(電通ベンチャーズ)

STOCK POINT は、ブロックチェーンベースで株価連動型のポイントシステムを展開している。ユーザは買い物で溜まるポイントを STOCK POINT で得られると、その STOCK POINT と連携する株価(購入した商品のメーカーの株価など)の上昇に合わせ、STOCK POINT(銘柄毎)の量が増える。STOCK POINT のポイント量がその銘柄の1株以上になれば、ユーザは株式と交換し、その企業との株主になることができる。

同社はアクセラレータへの参加を通じて、10代向けの金融サービス「MoneyDash」を提案した。人は子供の頃に慣れ親しんだブランドを成人してからも使い続けるという、キッザニアのビジネスコンセプトにヒントを得て、ブランド訴求したい企業、将来に向けて投資を学ばせたい親、スマホを使って遊びたい子供をつなぐ。MoneyDash は親が持っているクレジットカードポイントなどを原資に、STOCK POINT と同様にポイントを使った擬似的な株式投資ができるというものだ。

子供目線での株式投資を実現し、景品にオフィスや工場見学ツアー、アバター育成などのゲーミフィケーション要素を凝らした。子供が18歳になった時、クレジットカード作成や銀行・証券口座を促し、溜まったポイントを使って買い物ができるようになる。MoneyDash ユーザがそのままカード会社、銀行、証券会社の顧客にスライドするため、金融サービス各社にとっては新規ユーザの獲得コストを圧縮することが可能になる。

スマート電池を使った高齢者見守りサービス by Novars

  • プロメンター:浅田慎二氏(セールスフォース・ベンチャーズ)

ノバルスは、電池出力コントロールや電池電圧・電流モニタリングを可能にする乾電池活用 IoT 電池ソリューション「MaBeee」を開発。MaBeee は乾電池の形状をした IoT デバイスで、ユーザは乾電池で稼働する製品に MaBeee を装着することで、スマートフォンから BLE(Bluetooth Low Energy)経由での操作が可能になる。今春には、MaBeee を応用し、遠隔で高齢者などを見守ることができるソリューション「みまもり電池」を開発した。

みまもり電池を高齢者宅のテレビのリモコンに入れるおけば、遠隔地に住む家族がリモコンの操作状態から無事を知ることができる。さらに、認知症が進むことで人は同じボタンを押し続けるなどの傾向が見られるため、認知症の疑いを早期発見したり、進行度合を把握したりする手がかりにもなる。リモコンからはボタンに応じて特定のパルス信号が発せられるため、それを電池で検出することで同じボタンが押されたか異なるボタンが押されたか、などを判定できるらしい。

ノバルスでは、認知度チェックソリューションを提供するトータルブレインケアやミレニアなどをパートナーに獲得。今夏から小規模な PoC を開始し、2020年秋には、みまもり電池を使った認知機能チェックを正式にサービスメニューに加えたいとしている。こうして得られたデータを三菱 UFJ 信託銀行が提供する情報銀行の機能を利用して集積、ビッグデータ解析により高齢者対象商品のメーカーなどに届けるサービスを検討したいとしている。

FlyData Sync by FlyData

  • プロメンター:坂本教晃氏(東京大学エッジキャピタル)

ビッグデータ分析に必要なデータサイエンティストの不足が叫ばれる中、実際のところ、データサイエンティストはその業務の8割をデータのクレンジング(表記揺れの排除や名寄せなど)に使うこと余儀なくされているという。表記揺れや入力誤りなどは、個別にパターン定義する形での修正の場合クレンジングコストが高くなってしまっていたが、FlyData Sync では AI で安価かつ精度向上を実現、従来方法に比べコストは90%を削減、精度は2倍にまで上がった。

PoC として、FlyData では三菱 UFJ ファクターが持つ法人顧客マスタ40万件で実際にデータクレンジングを実施。重複していることが判明したレコードのうち、約6割が表記揺れで残りは複雑で変則的なもの(パターン化できないもの)。約3割は FlyData Sync により修正・解決することができ、AI データクレンジングならではの強みを実証できたという。ユーザ(およびデータサイエンティスト)がデータクレンジングのツールを意識しないでも作業を進められるようになることが究極の目標だとした。

Wabi Project / TECHROCK(橙石感応)

  • プロメンター:吉沢康弘氏(インクルージョン・ジャパン)

中国や東アジアでは、正規品を装った偽物商品が市場に出回ることは少なくなく、正規品ブランドやメーカーにとっては、これを撲滅することは長年の課題となっている。商品パッケージに QR コードのシールを貼付し、消費者がこのコードをスキャンすることで、商品の真贋性を確かめられるようにするソリューションも存在するが、シールが貼り替えられたり、パッケージの中身がすり替えられたりすると、全く意味をなさなくなってしまう。

TECHROCK の開発したのは RFID のアンテナ内蔵型ラベルとブロックチェーンからなるソリューション。RFID チップをスキャンするとトークン「Tael(旧称:Wabi)」が付与され、消費者は流通経路や生産者情報を確認できるだけでなく、本物であることを確かめようとするモチベーションが生まれる仕組みを構築している。ラベルを剥がすとアンテナが破損し RFID を読み取れなくなるため、ラベルの貼り替えや中身のすり替えにも耐性がある。スキャンの履歴はブロックチェーン上に記録されトレーサビリティが担保される。

これらの技術を備えたスマート商品パッケージを今後日本の大手印刷会社と開発する予定で、酒造会社などとは実証実験を行う予定。また、大手百貨店などとインバウンドマーケティングでも連携を行う。現在は中国の B2C 市場にフォーカスしている。越境のソーシャルコマースなど流通経路が見えにくいチャネルにおいても商品の真贋とトレーサビリティを担保し、正規品の流通を押し上げていくのが狙いだ。

SAgri by SAgri

  • プロメンター:吉沢康弘氏(インクルージョン・ジャパン)

世界人口75億人のうち25億人が農業に従事しており、その80%が何らかの理由で必要な資金の調達に困窮しているという。特にインドをはじめとする発展途上国では、返済原資となる収穫量の情報を得られないために、現地金融機関が融資が実施できないケースが多い。収穫量を予想判断する上で重要となる三要素は天候・農業ノウハウ・土壌であるが、このうち天候は確率的であり、農業ノウハウは虚偽申告されると正しい情報を把握できないため、SAgri は科学的に情報を取得しやすい土壌に着目した。

SAgri では衛星データにより土壌の状況(腐食含有量)を、また、農家からはスマホアプリから農作物や品種などの情報を取得し、ブロックチェーンを用いてデータベース化。これらを組み合わせることで、収穫量につながる情報を的確に取得するほか、生物性・化学性・物理性の観点から農家に対して土壌改良の提案も行う。実際に取得した土壌データと腐食含有量のマクロデータを元に、農地を評価するスコアリングの仕組みを開発しており、これらの情報を現地金融機関に提供することで融資の実行を促す。

現地金融機関を農家に紹介し、融資が実行された場合、融資額の一部を SAgri をもらうことでビジネスを成立させる。同社のオフィスは日本国内のほか、現地での業務を加速するためバンガロールに拠点を開設しており、MUFG DIGITAL アクセラレータへの参加を通じて、三菱 UFJ 銀行のデジタル企画部シンガポールチームとの協業を開始している。

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