オンラインセールスに特化した Web のコミュニケーション・システム「bellFace」を開発するベルフェイスは21日、シリーズ D ラウンドで約30億円を資金調達したことを明らかにした。このラウンドには、シンガポール VC の Axiom Asia Private Capital、三井住友トラスト・インベストメント、第一生命のほか、既存投資家であるインキュベイトファンド(今日発表の新ファンドからの調達)、SMBC ベンチャーキャピタルが参加した。同社にとっては、昨年2月に実施したシリーズ C ラウンドに続くものだ。累積調達額は85.5億円に達した。
ベルフェイスは、同社の代表取締役を務める中島一明氏が2015年4月に設立。bellFace を使えば、営業マンからセールスを受ける顧客は、専用ソフトのインストールやアカウント情報のやり取りの必要がなく、Web ブラウザさえあればやりとりができる。営業マンにとっては、普段使用している営業資料を bellFace にアップロードするだけで顧客と資料を共有でき、画面共有機能で Web サービスの操作方法など見せながら商談を進めることができるメリットがある。
昨年大型調達を実施していたので資金ショートする懸念は無かったものの、成長曲線を描くには何らかの営業戦略の変更、または、プロダクトのピボットの必要に迫られた。そこで、ベルフェイスが目をつけたのが金融業界のリテール営業だ。リテール金融のお得意様は、比較的多くの資産を持つシニアの人々。彼らは IT ツールには疎かったり、また、新型コロナの感染リスクへの懸念から外出や対面を避けたりするので、bellFace が解決できる部分は多い。
メガバンクはほぼ全てに導入してもらっており、現在は地銀などにも積極的に営業している。従来は、1つの ID を多くの企業に使ってもらうというモデルだったが、現在は複数の金融機関などに数千 ID 単位(担当行員の人数分)で使ってもらうというモデルに変化した。再び成長曲線に戻れたので、今回調達を決めた。(中島氏)
金融のリテール営業に Zoom や Teams が使いにくい理由は他にもある。これらのソフトウェアでは簡単に画面共有ができてしまうため、金融機関にとってはセキュリティ漏洩のリスクが潜在し、おいそれと利用の許可が出すことができない。対して、bellFace では共有したいスライドのファイルは予め相手に送るか、システムに登録して共有を行い、どのファイルがどの時点で誰と共有されたかも記録が残るため、こういったリスクを回避することができる。
ベルフェイスでは顧客ターゲットをリテール営業にシフトしたことで、bellFace をオンラインセールスのコミュニケーションツールとしての機能に加え、そのまま契約を成立させるところまでワンストップで提供するツールに進化させる計画だ。金融サービスの契約はこれまで、対面販売か Web 販売で行う必要があった。これらの機能は、数ヶ月後には日の目を見ることになりそう。結果的に、ホリゾンタル SaaS からバーティカル SaaS に進化することになりそうだ。
今回のグロースファンドの約57%は、北米、香港、シンガポールを拠点とした金融機関、大学基金などからの出資だ。本間氏によれば、これほどまでに海外からの資金が集まった理由は大きく2つあるという。まず一つは積極的な情報公開。ファンドのパフォーマンスは、DPI(Distributions to Paid in Capital、リミテッドパートナーへの分配額をファンドへの投入資金で割った金額)で表されるが、インキュベイトファンドのこれまでの成果を海外投資家に整理・開示したところ、大きな理解が得られたという。
インキュベイトファンドは国内でもプレゼンスを持つが、パートナーの本間氏がシンガポールに活動拠点を置いていたり、KK Fund のような東南アジアのリージョナルファンドに Fund of Funds 出資したりしていることもあって、日本の資金を東南アジアの有望スタートアップに投資している印象が強かった。今回のグロースファンドの誕生を受けて、海外からの資金を日本のスタートアップに投資する双方向のマネーフローが生み出されることになり、スタートアップの国際的な事業拡大にも利益がもたらされるだろう。
越境 EC は、政策的な支援により飛躍的に成長している。輸出企業にとって、今回の海外展開は、販売チャネルの多様化や注文の細分化など、数年前とは大きく異なるものとなっている。熾烈な市場競争の中で、デジタル化は大きなトレンドとなっている。(XTransfer 創業者兼 CEO の Bill Deng=鄧国標氏)
<ピックアップ> What You Learn at a Startup that Grows from $0 to $7.75 Billion in 2 Years スタートアップを定義する基準は異なるが、典型的には、J カーブを描いて急速に成長するロケット企業をスタートアップと呼んでいる。オンラインイベントの主催者プラットフォーム「Hopin」もこの解釈に合致したスタートアップだ。2019年に…
Hopin 創業者兼 CEO のJohnny Boufarhat 氏 Image credit: Hopin
東急アライアンスプラットフォームの Web サイトに「Needs」という項目が追加され、ここには対象領域毎の課題やニーズが掲載され、月1回程度の頻度で情報が更新されるようになりました。これまでのアクセラレートプログラムでは、スタートアップ側からソリューションが提示され、それに関心のある東急グループの企業や部門が手を上げる形でしたが、これからは逆、すなわち、東急グループ各社や部門から解決したい課題が提示されます。マッチングの可能性がより高まることが期待できます。
3. 新オウンドメディア「TAP Library」による課題・ニーズの背景や共創事例等の発信
TAP には過去6年間で824件の応募があり、54件のテストマーケティングや実証実験・試験導入、26件の事業化や本格導入、7件の業務・資本提携を実施しました。最近の事例では、ヘラルボニーが取り扱う知的障害のあるアーティストの作品を渋谷の街の壁面広告の空き枠に掲出し、QRコードを経由し販売するサービス、Chompy による東急百貨店デパ地下店舗から取り寄せできるオリジナルアプリのローンチ、フラーと共同開発する地域共助のプラットフォームサービスアプリ「 common」などがありました。これまでの事例が TAP Library に網羅されており、今後、応募を検討するスタートアップが参考にできます。
TAP は東急グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の核を担っています。これまで大企業がやってきたように、プロジェクトの必要に応じて、外部の協力会社に案件発注するだけでは、社内に知見がたまらず、また、人材の変容を促すのにも限界があります。TAP を通じて協業するスタートアップに社内のチームに加わってもらうことで、プロジェクトを通じて東急の内部から変革を起こし、未来の都市創造を牽引する企業グループへの生まれ変わりを目指すようです。