〝持たざる国〟日本のスタートアップは、世界でどう勝つか?【Canvas 10月号(10月16日〜10月22日)】

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〝持たざる国〟日本のスタートアップは、世界でどう勝つか?

今週の話題(10月16日〜10月22日):B Dash Camp in 福岡が開幕——〝持たざる国〟日本のスタートアップは、世界でどう勝つか? #bdashcamp

今週は福岡で「B Dash Camp」が開催されました。2019年末から続く新型コロナウイルスの感染拡大で、この種のスタートアップカンファレンスのリアルイベントしては、実に2年ぶりとなり、久しぶりに顔を合わせる起業家や投資家の皆さんが一堂に会し、イベントは最初から最後まで盛況でした。

今回のテーマは「日本、待ったなし!」というもので、世界のスタートアップシーンの前進が加速しているというよりは、日本のそれが他の国々から取り残されているかもしれない現状にスポットライトが当てられていました。とかく、日本のスタートアップも VC も、日本の市場にのみ注力してきました。

B Dash Camp でオープニングセッションに登壇した皆さん。
左から:渡辺洋行氏(B Dash Ventures 代表取締役社長)、家入一真氏(CAMPFIRE 代表取締役社長)、國光宏尚氏(gumi ファウンダー、Thirdverse 代表取締役 CEO ファウンダー、gumi cryptos capital マネージングパートナー)、佐藤航陽氏(スペースデータ・レット 代表取締役社長、メタップス 創業者兼会長)、辻庸介氏(マネーフォワード 代表取締役社長 CEO)
  • これといった資源を持たない日本が、20世紀に2桁台の経済成長率を出す奇跡を出せたのは、ひとえに加工貿易という産業モデルが功を奏したことに他ならないでしょう。原材料や素材を輸入して、国内で加工・製造、それを製品として海外へ輸出するというビジネスモデルは、人々にとっての付加価値が利益をもたらす、産業立国の王道を歩んでいたと思います。
  • B Dash Camp のオープニングセッションでは、「人材・資金・プラットフォーム」という3つのデジタル産業の発展に必要な資源が、中国やアメリカに比べれば、圧倒的に不足していることが取り上げられました。また、「シリコンバレーをコピーしても、シリコンバレーを越えられない」という議論も耳にして久しいですが、この逆境を乗り越えるにはどうすればいいのか。
  • ブロックチェーン技術は、金融システムがに未熟な地域で、金融包摂という文脈からも急速に受け入れられました。シンギュラリティやベーシックインカムが実現すれば人々が働く意味も変わるでしょうが、その前に働き方にもブロックチェーン同様の分散型の波が訪れれば、デジタル産業資源不足の日本に勝ち目はあるかもしれません。日本のスタートアップに起きるリープフロッグに期待です。

今月の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

インフキュリオンが22億円調達を発表。左から:Minerva Growth Partners 長澤啓氏、インフキュリオン 代表取締役社長 丸山弘毅氏、Minerva Growth Partners 村島健介氏
Image credit: Infcurion

動画活用で企業のDX推進を支援するエビリー、7億円を資金調達(10月21日)

  • エビリーは、直近のラウンドで7億円を調達したと発表した。シリーズ C ラウンド相当と推定される。このラウンドに参加したのは、大和企業投資、地域創生ソリューション、西武しんきんキャピタル、みずほキャピタルで、調達額には金融機関からのデットが含まれる。これは、2019年12月に実施した2億5,000万円の調達に続くものだ。

研究開発を効率化するデータ管理SaaS開発のランデフト、インキュベイトFから7,000万円をシード調達(10月20日)

  • ランデフトは、シードラウンドでインキュベイトファンドからから約7,000万円を調達したと発表した。同社は調達した資金を使って、素材業界向けの研究開発データ管理プラットフォームの構築に着手する。

脱炭素支援のSustineri、インキュベイトFから5,000万円をシード調達——温室効果ガスの排出量表示API公開へ(10月20日)

  • Sustineri は、シードラウンドでインキュベイトファンドから5,000万円を調達したと発表した。調達した資金は、サービス開発や事業推進メンバーの採用などに使用し、開発と顧客企業への導入を加速するとしている。

データで地場運送会社に力を与えるSaaS「アセンド・ロジ」運営、プレシリーズAで1.4億円を調達(10月20日)

  • ascend は、プレシリーズ A ラウンドで1.4億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、BEENEXT の ALL STAR SAAS FUND、サムライインキュベート、名前非開示の物流不動産会社1社。これは、同社にとって、今年3月に実施したシードラウンド(サムライインキュベートなどから5,500万円を調達。デットを含む。)に続くものだ。

フィットネスアプリ「BeatFit」運営、シリーズBで2億円を調達——リブランドで倒産の危機を脱出、法人サービスも強化へ(10月19日)

  • BeatFit は、シリーズ B ラウンドで約2億円を調達したことを明らかにした。このラウンドはインフォコム(東証:4348)がリードし、ツクイキャピタルと VOYAGE VENTURES が参加した。これは同社にとって、2019年3月に発表したシリーズ A ラウンドに続くものだ。創業時からの同社の累積調達額は約5億円に達した。

開発者とセキュリティの距離を縮めるFlatt Security、BDVとFGIらから2億円を調達——世界向けプロダクトローンチへ(10月18日)

  • Flatt Security は、B Dash Ventures(BDV)、フィンテックグローバル(FGI)、名前非開示の事業会社1社から約2億円を調達したと発表した。調達金額の一部にはデットファイナンスが含まれる。これは同社にとって、2019年7月に実施した約2.2億円の調達に続くものだ。今回の調達を受けての累計調達額は約4.5億円に達した。

福岡生まれのカード型チャットツール「postalk」、ドーガン・ベータとFGN ABBALabからプレシード調達(10月18日)

  • postalk は、プレシードラウンドで2,250万円を調達していたことが明らかになった。このラウンドに参加したのは、ドーガン・ベータと FGN ABBALab。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

Animoca Brands が Kikitrade に追加出資。左から:Kikitrade 共同創業者兼 CEO Sean Tao 氏、Animoca Brands 会長兼共同創業者 Yat Siu 氏。
Photo credit: Kikitrade

NAVERスピンオフの韓国版スニダン「Kream」が97億円調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(10月22日)

  • 限定品リセールプラットフォーム「Kream(크림)」が1,000億ウォン(約97億円)規模のシリーズ B 調達。去る3月には200億ウォン(約19億円)を調達、今回の調達を受けて累積投資額は1,400億ウォン(約136億円)で業界最高記録。

インドのローカル言語翻訳プラットフォーム「Devnagri」運営、個人投資家多数から60万米ドルをシード調達(10月22日)

  • Devnagri」は、シードラウンドで60万米ドルを調達した。なお、ラウンドはまだクローズしていない。現時点でこのラウンドに参加したのは、Venture Catalysts、Inflection Point Ventures、その他の共同投資家。

GojekとTokopediaの統合会社、IPOを前にアブダビ投資庁から4億米ドルを調達——インドネシア史上最大規模(10月21日)

  • GoTo GroupGojek と Tokopedia が統合して発足)は、プレ IPO ラウンドでアブダビ投資庁の完全子会社から4億米ドルを調達することになった。これは、ADIA の子会社 Private Equities Department (PED)が、東南アジアのテクノロジー事業に対して行う初のプリンシパル投資であり、これまでのインドネシアにおける最大の投資となる。

ベトナム版Amazon「Tiki」、2.4億米ドルをシリーズE調達——まもなくユニコーンに(10月21日)

  • Tiki は、シリーズ E ラウンドで2億4,000万米ドルの資金を確保した。この資金調達により、Tiki の時価総額は約8億3,200万米ドルとなり、ベトナムで最も価値のあるテクノロジー企業の一つとなった。保険大手の AIA が、総額6,000万米ドルを拠出して最大の投資を行ったようだ。また、UBS AG ロンドン支店、Taiwan Mobile(台湾大哥大)、Mirae Asset-Naver Asia Growth Fund などの著名な支援者も参加している。

東南アジアのコンテンツ決済プロバイダCoda Payments、eスポーツのBAASHを買収(10月19日)

  • Coda Payments は、モバイル e スポーツのトーナメントプラットフォーム「BAASH」を買収した。今回の買収により、Coda は既存のゲームグッズやソリューションの範囲を拡大する。

東南アジアのフリマアプリ「Carousell」、スニーカーマーケットプレイス「Ox Street」を買収(10月19日)

  • Carousell Group は、東南アジアで本物のスニーカーやストリートウェアを扱うオンラインマーケットプレイス「Ox Street」を非公開額で買収した。これは、Carousell が韓国の PE 企業である STIC Investments がリードした1億米ドルの投資ラウンドを受け、ユニコーンになってから数週間後のことだ。

仮想通貨投資家、政府規制回避で国外に会社登記する動きが顕著に——中国ブロックチェーン界週間振り返り(10月18日)

  • 中国メディアの北京商報は18日、多くの中国の仮想通貨投資家が、中国のユーザに対する仮想通貨取引所の規制を回避するために、国外の会社証明を登録していると報じた

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