頭角を現し始めた名古屋のスタートアップシーン
今週の話題(10月9日〜10月15日):トランスミット、プレシリーズAで1.24億円を資金調達——トヨタの地元から製造業向け生産管理SaaSを世界へ / スマホで建築家に間取り作成依頼「madree」運営、プレシリーズAで1.3億円を調達——AIで設計精度・効率向上を目指す
今週は続けざまに名古屋のスタートアップの資金調達のニュースがヘッドラインを飾りました。トランスミットと、スタジオアンビルトです。それぞれ、「なごのキャンパス」「PRE-STATION Ai」という名古屋を象徴するスタートアップハブを拠点に成長してきたスタートアップです。
政府は「グローバル拠点都市」として、東京・京阪神・名古屋・福岡を選んでいます。東京は人口が多いので外して考えても、残る京阪神・名古屋・福岡のうち、名古屋から出てきたスタートアップを取り上げる機会は少なかったかもしれません。その理由・特徴を推測し、今後につなげられればと思います。

- 東京まで新幹線で1時間40分という地の利は、毎日の通勤さえ可能にしてしまいます。それゆえ、生まれも育ちも名古屋だが、事業を興すのなら東京と心を決めている人も少なくないのでしょう。しかし、コロナ禍でリモートワークに拍車がかかったこともあり、スタートアップをやるために東京にいなければならない理由は以前より少なくなりました。
- 地元自治体や地元企業のスタートアップ支援に向けた動きも前向きです。愛知県がベンチャーキャピタルネットワーク「あいちパートナーVC」を開始。また、デンマーク発の〝スタートアップ版・世界の歩き方〟である「Startup Guide Nagoya」が、名古屋市と中部圏イノベーション推進機構が支援する形で発刊されました。日本では東京に続く2都市目の発刊です。
- 大学発の動きも活発化しています。筆者の感覚では、名古屋の大学の研究室には素晴らしい技術を持ったスタートアップが、誰にも発掘されずにひたすら研究に打ち込んでいる、という印象が強かったのですが、地元の大学関係者らの尽力により、こういったスタートアップが露出する機会も増えてきました。今後、筆者も名古屋に取材に出かける機会も増えると思います。
今月の調達ニュース
今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

Image credit: Infcurion
上場スタートアップ3社の営業を牽引したプロが構築、予実管理SaaS「GRAPH」が2,000万円をシード調達(10月15日)
- グラフは、シードラウンドで Coral Capital から2,000万円を調達したことを明らかにした。調達額には日本政策金融公庫からのデットが含まれる。
トランスミット、プレシリーズAで1.24億円を資金調達——トヨタの地元から製造業向け生産管理SaaSを世界へ(10月14日)
- トランスミットは、シードラウンドで1.24億円を調達したことを明らかにした。このラウンドは KUSABI がリードインベスターを務め、Gazelle Capital が参加した。ラウンドステージはプレシリーズ A ラウンドと見られる。調達額には、名古屋銀行と日本政策金融公庫からのデットが含まれる。
「Web幹事」「動画幹事」からDXの相談窓口に進化、ユーティルがシリーズAで2.4億円を調達(10月14日)
- ユーティルは、シリーズ A ラウンドで2.4億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、日本ベンチャーキャピタル、コロプラネクスト、グリーベンチャーズ、岡三キャピタルパートナーズ、サイバーエージェント・キャピタル、basepartners。
事業用駐車場マッチング「at PORT」運営、7,000万円をシード調達——モビリティ+不動産テックへの進化を目指す(10月13日)
- ランディットは、シードラウンドで約7,000万円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、インキュベイトファンド、mint と名前非開示の個人投資家。
スマホで建築家に間取り作成依頼「madree」運営、プレシリーズAで1.3億円を調達——AIで設計精度・効率向上を目指す(10月13日)
- スタジオアンビルトは、プレシリーズ A ラウンドで1億3,000万円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、マネーフォワードベンチャーパートナーズが運営する HIRAC FUND、名前非開示の個人投資家1名。
スマホで質入れできるアプリ「CASHARi(カシャリ)」運営、プレシリーズAで1億円を調達(10月13日)
- ガレージバンクは、プレシリーズ A ラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドには、W ventures、マネックスベンチャーズ、個人投資家として山崎令二郎氏(アールキューブ代表取締役)が参加した。
リテールテックのフェズ、シリーズCラウンドで11.5億円を調達(10月13日)
- 広告×販促×店頭施策を連動する一気通貫型プラットフォーム「Urumo OMO」を展開するフェズは、シリーズ Cラウンドで約11.5億円を調達した。このラウンドはニッセイ・キャピタルがリードインベスターを務め、Incubate Fund US、SHIFT、MTG Ventures、フォースタートアップスキャピタルが参加した。調達額には金融機関からのデットが含まれる。
法人向けカード事業のUPSIDER、シリーズBラウンド全体で38億円を調達(10月12日)
- UPSIDER がシリーズ B のエクステンションラウンドを実施したことを明らかにした。今年3月に明らかになったシリーズ B1 ラウンドと合わせると、シリーズ B ラウンド全体での調達金額は約38億円、累積調達金額は約43億円となる。WiL(World Innovation Lab)がリードインベスターを務め、Greenoaks Capital が参加。また、シリーズ A ラウンドと シリーズ B1 ラウンドに参加していたグローバル・ブレインは、フォローオンで参加した。
出資・融資によらない資金調達手段を提供するYoii(ヨイ)、1億円超をシード調達——ICJ、農林中金のファンドなどから(10月12日)
- Yoii(ヨイ)は、シードラウンドで1億円を超える金額を調達したことを明らかにした。このラウンドはインクルージョン・ジャパンがリードインベスターを務め、農林中金イノベーションファンド(農林中金とグローバル・ブレインが運営)、個人投資家として横路隆氏(freee 共同創業者兼CTO)らが参加した。
融資と補助金を調達支援する事業計画SaaS「Scheeme」運営、プレシリーズAで1億円を調達(10月11日)
- Scheeme は、プレシリーズ A ラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ジェネシア・ベンチャーズとキャナルベンチャーズ。これは、昨年実施したシードラウンド(ジェネシア・ベンチャーズから約5,000万円)に続くものだ。Scheeme の累積調達金額は約1.5億円に達した。
アジアのニュース
今月のアジアのニュースをお届けします。

Photo credit: Kikitrade
韓国ファッションEC「BRANDI」、日本でβサービスをローンチ(10月15日)
- 2016年のローンチから、毎年200%超の急成長を続けてきた「BRANDI(브랜디)」が海外市場攻略に乗り出し、今月初め、日本向けの βサービスをローンチした。BRANDI は日本市場展開にあたり、すでに韓国のインフルエンサー100人、日本のインフルエンサー100人を確保しており、積極的な市場浸透とマーケティング展開を狙う。
シンガポールのIoTスタートアップUnaBiz(優納比)、シリーズBでスパークスGらから2,500万米ドル超を調達
- UnaBiz(優納比)は、東京を拠点とするスパークス・グループが7億米ドルの未来創生ファンド2号を通じてリードしたシリーズ B ラウンドで、2,500万米ドル超をオーバースクライブ調達した。このラウンドには、台湾の CDIB Capital Group(中華開発資本)が 運営するファンドである CDIB Capital Growth Partners、シンガポールの G K Goh Holdings(呉控股、シンガポール証取:G41)、Thaioil の投資部門である TOP Ventures も共同投資者として参加している。
P2P送金アプリ「Toss」運営、配車サービス「Tada」を買収など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(10月12日)
- 韓国を代表する配車アプリ「Tada(타다)」を運営する VCNC が、同じく韓国で決済アプリ「Toss(토스)」を運営する Viva Republica により買収された。Viva Republica は VCNC の株式60%を取得する。Tada は当初のサービスが現地タクシー運転手の組合からの圧力によりサービスが停止に追い込まれるなど波乱を呼んだ。先週には、韓国国内でドキュメンタリー映画「Tada:大韓民国スタートアップの肖像」が公開された。
JD(京東)とBaidu(百度)、エレベーター広告のXinchao Media(新潮伝媒)に4億米ドルを出資(10月9日)
- JD.com(京東)とBaidu(百度)は、成都を拠点とする Xinchao Media(新潮伝媒)への投資を再開した。China STAR Market(科創板)のレポートによると、この取引により JD は Xinchao の最大の株主となった。
韓国発AI活用の学習アプリ「Riiid Tutor」開発元、日本のアプリ配信会社Langooを買収(10月9日)
- 韓国の Edtech スタートアップ Riiid(뤼이드)は、日本のモバイルアプリ配信会社 Langoo を買収した。買収額は非開示。Langoo は、2019年から Riiid の有料の AI を使った学習アプリを独占的に提供してきた。Riiid は、2020年に26億米ドルの規模に達したと推定される日本の遠隔学習・教育市場を開拓するために、日本法人を設立すると述べている。
BRIDGE Members
BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。- 会員限定記事・毎月3本
- コミュニティDiscord招待