キャラクター制作のクオン、〝漫画版MCN〟のwwwaapと経営統合へ——アジアでクリエイターエコノミー事業を加速

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左から:wwwaap 代表取締役の高橋伸幸氏、クオンの代表取締役である水野和寛氏、wwwaap 代表取締役の中川元太氏
Image credit: Quan, wwwaap

ベタックマやビジネスフィッシュなど、メッセージングアプリなどで利用されるキャラクター制作で知られるクオンは、マンガやアニメ分野のマーケティング会社 wwwaap と経営統合することを明らかにした。経営統合は2022年1月をメドに実施され、新会社 Minto が設立される。新会社の代表取締役には、クオンの代表取締役である水野和寛氏が、また、新会社の取締役には、共に wwwaap 代表取締役の中川元太氏と高橋伸幸氏、クオン取締役の小川淳氏が就任する予定。

アメリカでは、YouTuber、Instagramer、Tiktoker などインフルエンサーの立場にあるクリエイターが全世界にファンを拡大しており、こうして作られたクリエイターエコノミーの規模は1,042億米ドルに上る。一方、日本のクリエイターエコノミーは漫画やアニメを中心とした2次元コンテンツが中心で、最近では、おとなり韓国を起源とする「ウェブトゥーン」の波が日本市場にも伝播し、この流れを掴んだ「ピッコマ」を運営するカカオジャパンの時価総額は8,000億円を超えた。

クオンについては、これまでに BRIDGE でも複数の記事で紹介してきたので詳細は省略するが、他方、wwwaap はインターネット広告代理店大手で漫画の編集チームやアプリのマーケティングチームを立ち上げた中川氏が、2016年に創業したスタートアップだ。漫画やアニメを中心に、SNS 発のクリエイターを250名以上擁し、彼らの創造したコンテンツを企業のプロモーションに利用してもらう形でマネタイズに成功。ツイッター広告に使われる漫画の8〜9割は、wwwaap の作品だという。言わば〝漫画版 MCN〟だ。

むちゃくちゃ才能があっても食っていけない業界。そこからスタートした。辞めていく人が多い中で、一定数のフォロワーがいれば、年間これくらいの収入は支払える、というのを提示できるようになった。wwwaap には、フォロワーが1万人いるような漫画家が250人以上いて、トップラインでは、年間1,000万円とかを稼ぐような主婦も現れてきている。(中川氏)

Quan と wwwaap のキャラクタや作品群(一部)
Image credit: Quan, wwwaap

今回、クオンと wwwaap が手を合わせることで、いくつかの補完関係が生まれることが期待できる。まず、クオンが持つアジアを中心としたネットワークを通じて、wwwaap のクリエイターが作った作品の流通が可能になるだろう。wwwaap は販路を拡大することができ、クオンはプロダクションとして自らが制作したキャラクタ以外にも、サードパーティーが制作したコンテンツの流通を助ける商社的役割を担えるようになる。

ウェブトゥーン然り、アニメ然り、エンタメ系の制作会社は小さな会社がすごくたくさんある。それで多様性が生まれていることも事実だが、戦略的にダイナミックにやっていくには、ある程度の規模感が必要になってくる。自分たちのキャラクタだけだと需要を網羅できなくなっているし、コロナ禍が明けたら世界が一気に動き始める中で差別化も難しくなるだろうし、やるなら今だと考えた。(水野氏)

水野氏と中川氏の得意分野の違いも、相互補完の関係として機能するだろう。クオンのビジネスモデルは複数存在するが、キャラクタのライセンスビジネス単体でのマネタイズが難しいアジアでは、無料のキャラクタースタンプで個性あるキャラクタの人気を獲得し、そのキャラクタのマーチャンダイズ販売や企業のプロモーションに利用してもらうことでマネタイズしてきた。日本で自らの事業を成功させた中川氏は、コンテンツのマネタイズ手法をアジアでさらに多様化させる点でも、経営統合後の事業の可能性に自信を見せた。

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