「カスタマーサクセス白書2021」重要ポイントイッキ読み/HiCustomer鈴木氏・ALL STAR SAAS FUND神前氏 #BRIDGE_Tokyo_Meetup

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本稿はベンチャーキャピタルが紹介する旬のトレンドやスタートアップを集めたセッション「BRIDGE Tokyo Meetup INTRO」で語られた話題をお届けします。11月実施のTokyo Meetup全セッションはこちらから。登壇希望のスタートアップはこちらからパートナーへご参加ください。

カスタマーサクセス  SaaS を提供する HiCustomer は、8月に「カスタマーサクセス白書2021」を公表されました。HiCustomer  の創業者で代表取締役の鈴木大貴さんに、HiCustomer の事業内容とカスタマーサクセスの概況について、また、HiCustomer に出資する ALL STAR SAAS FUND のベンチャーパートナー神前達哉さんにお話を伺いました。(本文の書き起こしは収録インタビュー動画の一部、文中敬称略)

HiCustomer の会社の紹介、サービスの紹介をお願いします

鈴木:HiCustomer の代表をしております鈴木と申します。前職は、SaaS のスタートアップに投資する会社で働いておりまして、シードアーリーの SaaS  系の起業家とコミュニケーションすることが多かったんですが、成長を考える上で解約とかカスタマーサクセスをどう進めていけばいいのか、多くの課題を持たれている会社さんが多いなと思っていたことと、世の中のビジネスモデルがモノ売りからサブスクリプション、コト売りに変革しているなという大きな流れがあるなと思ったので、この分野のプロダクトを立ち上げて、今4年目となっております。

SaaS の場合、自分たちのプロダクトを使ってくれてるお客さんがうまく使えていなかったり不満を持っていたりすると、当然売上が下がっていってしまうので、そうならないようにお客さんのコンディションを可視化したり、アラートを立てて、ちゃんとお客さんがプロダクトを使えるような条件に持っていったりするように支援できるプロダクトを提供しております。

8月に公表された「カスタマーサクセス白書 2021」ですが、どの辺りの数字がポイントになるでしょうか

鈴木:先日リリースしたレポートのうち、全部はご紹介できないのでピックアップして特徴的なデータをお伝えしていきたいと思っております。まず、このレポートは昨年が1回目、今年2回目とやってきた調査の内容になるんですけれども、国内の主に SaaS で働くカスタマーサクセスのご担当者の方、マネージャーの方、SaaS 企業を経営している経営者の方といった3属性の方にお話をお伺いして、それをまとめたものになってます。

まずお話をしたいなと思っているのが、メトリクスという SaaS の経営指標に関わるもの。ACV(Annual Contract Value)というのは、SaaS のプロダクトの年間契約金額の平均です。ボリュームゾーンとしては、一番多いのが年間13〜60万円とか、61〜120万とか。月でいうと5万円とか10万円といった金額でですが、昨年と比べるとより単価が高くなってきてるなという傾向が読み取れます。

そして、月次の解約率は月次2%以下が全体の60%を占めるという形になっているので、去年と比べると月次の解約率が下がってきていますが、だいたい各社2%ぐらいで推移しているというところかと思います。解約率は、経過年数が長くなればなるほど解約率は落ちていってるので、機能のブラッシュアップやカスタマーサクセスのプロセス自体が磨き上げられて組織も成熟化しているので、やればやるほど、努力すればちゃんと解約率が下がることが分かるデータだと思います。

国内では各社でカスタマーサクセスの部門が立ち上がりすごく投資をしている領域なんですが、カスタマーサクセスの部門に所属している人数はだいたい2名から5名ぐらいというのが全体のうちの半数なんですけれども、10人前後とか20人前後とかいった会社さんも18%、13%という形で、だんだんカスタマーサクセスのチーム規模が大きくなりつつあると理解をしています。カスタマーサクセスの人員、組織を強化している会社がすごく増えていることが読み取れます。

また、カスタマーサクセスのメンバー一人当たりどのぐらいの売上に責任を持ってるんだっけってところを表わしているのが ARR(年間収益率)という数字ですが、ボリュームゾーンとしては、PMF(プロダクトマーケットフィット)していない会社さんででは1,000万円ぐらいの売上が多いですが、一番多かったのは一人当たり1,000万〜5,000万円ぐらいの売上を自分で責任を持ってお客さんに対してサクセスを提供していくという事業者さんでした。

数字以外にも興味深い気づきは得られましたか?

鈴木:カスタマーサクセスの現場で働いているいらっしゃる方に、「直近一年間で一番 KPI の改善に寄与した施策は何ですか?」という問いに回答してもらいました。一番多かったのは「ハイタッチ」と呼ばれる、お客さん一社一社と向き合って丁寧にコミュニケーションし、サクセスに導いていくという活動を自分たちの KPI にしたというものでした。それに続いてはオンボーディングで第一印象を良くするとか、最初に成功体験を作っていくといった施策が30%。他にデータ分析とか効率化の施策といった回答をいただきました。

さらに、「今後6ヶ月から12ヶ月でどんなことを強化していきたいですか?」という質問に関しては60%ぐらいの方が「データ分析の可視化をしたい」ということでした。自分達のプロダクトを使ってくれてるお客さんがどこで詰まってるのかとか、コンディションはどうなっているのかとか、やっぱりそういったデータが分からないとサクセスの方がフォローアップするのはなかなか難しいので、ちゃんとデータが見えるようにしていこうということです。

また、面白いデータとしては、「あなたたちの会社は顧客中心文化が作れてますか?」という質問に54%ぐらいが「はい」と答えてもらってるんですけれども、では、なぜ顧客中心文化ができているのかという問いに対しては、「一緒に働いているメンバーのマインドがそもそもそうだから」とか、「お客さんの要望に基づいてちゃんとプロダクトの開発優先順位を決めることができているから」というように、会社の風土から感じる理由を回答としていただくことができました。

ちなみに禁断のですね、カスタマーサクセスの年収みたいなものも聞いておりまして、データが出ております。年々年収が上がってきてるなという感覚があって、マネージャークラスには結構1,000万円プレイヤーが出てきているので、「なるほど」って感じですね。経営陣がカスタマーサクセスをどの程度重要視してますかという設問に対しては、57%が一番重要な課題ですというと回答していただいています。なぜかというと当然 LTV を上げたいから。カスタマーサクセスは会社の重要なアジェンダであり、投資すべき重要な対象であることが読み取れるかなと思います。

神前さん、投資家の視点として、出資先やポテンシャルのあるスタートアップの方々に対して、カスタマーサクセスはどれぐらい重要だ見ておられますか?

神前:そうですね。シリーズ A 以降の会社、つまり PMF を達成してどんどん成長していくっていう風な会社に関してはカスタマーサクセスはたぶん一番重要だなと思っています。投資サイドとして見ているのは、その成長性かなと思っていまして、チャーンレートが低ければ低いほど成長スピードは上がっていくと思うので、バケツに穴が開いた状態でどんだけ水を入れたとしてもそこから抜けていくようでは、やっぱり高い成長率っていうのはキープできないかなと思うので、そこはかなり重要視しています。

たくさん数字が出てきますが、投資家サイドとして特にこの数字はベーシックなものでよく見ている、というものを教えてもらえますか?

神前:フェーズによってもたぶん違うと思うんですけれども、まず一番最初に見ている数字としてはネットレベニューのチャーンレートを見ています。どれだけレベニューで、収益ベースでチャーンが起こっているのか。あるいはカスタマーサクセスによってエクスパンションですね、そのお客さんからの売上が増えれば増えるほどネットレベニューチャーンはマイナスになっていくので、そこの数字は一番大事にして見ています。

ネットレベニューのチャーンレートはマンスリーで言うと当月の解約で失った MRR(月間経常収益)なので、今月失った金額から今月エクスパンションで増えた金額、つまり既存顧客から増えたお金を引きます。それを先月末の時点での  MRR で割るっていう形でレートを出すんですね。そうすると先月末で例えば1億円の MRR がありました、今月で失った MRR は500万円です。で、エクスパンションで MRR が1,000万円増えましたとなると、分子がマイナスになると思うんです。それはエクスパンションがどんどん起こってるっていうことなので、これはネガティブチャーンと言うんですけれども、既存のお客さんからの売上がどんどん増えてきているという状況なので、すごくいい傾向なんです。そこを結構評価しています。

鈴木さん、シード期のまだ体制とかもなかなか整ってないような方々が、カスタマーサクセスに取り組もうと思った時に、まず最初に見るべき数字、やるべきことを教えても荒れますか?

鈴木:シードだから、まだ PMF に至ってないっていう前提で、だいたいMRRが500万円まで行ってないくらい、そういうことを前提とすると、最初にやらなければいけないことは、まず解約の阻止をめっちゃ頑張るとかではなくて、お客さんの要件と自分達のプロダクトのギャップがどこにあるのかっていうことをちゃんと明確にし、組織の中で目線を合わせるっていうことを、お客さんに一番近いカスタマーサクセスの人が旗を振ってやるべきかなと思います。

そのギャップが、カスタマーサクセスが人的にフォローアップをするべきことなのか、プロダクトで解決をしなければいけないことなのか。重みを付けていくことを間違うと、これをバケツの穴と呼ぶのであれば、開いてる状態で他の機能をバシバシ作ったとしても結局お客さんっていなくなってしまいます。自分たちが今リソースを集中しなければいけないのは何か。これはギャップの大きさや強さでだいたい理解ができると思うので、一番最初にやらないといけないことがもしできてないとすると、そこをやらないとまずいというのは、一番はそこかなと思いました。

リソースが少ない中でまずこれはやらないといけないということを挙げるとすると、オンボーディングの強化をする。オンボーディングのプログラムというか、ちゃんと意思決定、導入決定してくれたお客さんが自分たちの定義する「ここまで行けばサクセスと言えるよね」というところ、そこまでは粘り強く、リソースをかけまくっても良いと思うので、オンボーディングをめちゃくちゃ頑張るっていうのは100%やった方が良いなと思います。

記事編集:池田将、インタビュー:平野武士、動画編集:佐々木峻

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