
本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載
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NFTのニュースを聞かない日はなくなりつつありますが、特にこの1週間はTwitterやMetaに大きな動きがありました。
1月21日、Twitterは同社が2021年6月から提供する有料サブスクリプション「Twitter Blue」に登録するiOSユーザー向けに、NFTデータをプロフィール画像として表示できる機能を発表したのです。MetaMaskやCoinbase WalletといったウォレットとTwitter連携をすることで表示可能になるものなのですが、残念ながらTwitter Blueは米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのみの展開であるため、サブスクリプションと併せてNFTプロフィール画像機能も日本には未上陸な形となります。
これまでTwitterのプロフィール画像にNFTアート作品を表示してきたユーザーは多くいます。NFT作品価値が高騰していく中、特定の作品を表示しているだけである意味「箔」が付くため、ユーザー自身のバーチャル・アイデンティティを示すための行動とも言えるでしょう。
さて、今回の動きで注目しなければいけない点はTwitter Blueとの紐付けです。NFTアート作品の最大の価値は投機的に売買する動きだけではありません。その作品を持つことで手にできるコミュニティへの参加権利にあると考えます。
たとえば著名なNFTアート「Bored Ape」を所有するユーザーはNFTコミュニティ「BAYC(Bored Ape Yacht Club)」への参加が許されます。参加者はVIPイベントへの招待や、同じBored Ape作品をもらえたりするので、コミュニティ内だけでもらえる作品は市場価値が非常に高くなり、作品価値が高評価であり続ける限り、コミュニティ参加者の保有資産額は担保され続ける、というわけです。
人気NFTアート・コミュニティは大抵Discordに立ち上げられています。活発に議論されているコミュニティほど、作品の注目度が高くなる傾向にあり、Bored Apeのような高い価値になる可能性が秘められていると言われています。
Twitterの今回のNFTプロフィール画像機能の長期的な目的として、まさにこうしたNFTコミュニティをTwitter Blueのコミュニティ機能で再現する考えが見え隠れします。サブスクリプション機能を持つTwitter Blueですが、特定のNFTを持つユーザーだけが入ることが許されるコミュニティ認証機能まで実装されれば、その用途は現在のDiscordのように広がります。
さらにその前日の1月20日には、Metaが同社FacebookやInstagramでNFTを作成・表示・販売するサービス開発を検討しているというニュースが飛び込んできました。また同日、Instagramが米国限定でクリエイター向けサブスクリプションサービスの実証実験を開始するとの報道もあります。Metaの動きはTwitter同様、NFTコミュニティをDiscordから引き剥がし、市場シェアを獲得したい意向があると考えられます。
Meta傘下のサービスには、Twitterのようなミーム文化はあまり根付いておらず、NFTコミュニティとの親和性はさほど高くありません。ただ、周知の通りMetaはこれからメタバース企業としてサービス開発をしていきます。NFTコミュニティをいかに取り込むかは避けては通れない議題です。TwitterもMetaも参入を始めたNFT市場。これからNFT作品はさらなる価格高騰で注目を集めるかもしれませんが、それ以上にNFTコミュニティ分野でより一層競争が熾烈になりそうです。
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